#  古い新聞記事(日経MJ流通)なので、現状と異なる部分あります。




  ゴッホの「ひまわり」が絵画市場に火を付けた。58億円をめぐる高値論議もからんで市場はにわかに忙しくなっている。15年前に続く第二次ブームになりそう。

  投機的な資金も絵画に矛先を向けている。
「美の商人」の動きを追ってみる。      

      (岩田  誠 )

        
    
        近代化へ脱皮急ぐ
 
 ▼店の表に飾ってあるピカソの50号(8千万円相当)を、通りかかった人が「あれをくれないか」と言いながら入ってきた(東京銀座のある画廊)

 ▼ゴルフ場・サウナなどのオーナーが数1000万円の絵をポンと買っていく。  ロビーなどに飾って、自分の店のプレステージを高めようとしている(大阪のある画廊)



       株価市場と連動性

 金余り現象ーー株、土地、ゴルフ会員権に向かっていく金が絵画市線にも流れこんできた。美術評論家の瀬木慎一氏によると「株価が高騰しているときは絵画市場が活発になる法則がある」。

 ゴッホの「ひまわり」に見られるように、現在異常に高騰しているのは海外の印象派を中心にした作品。株や不動産と同じように財テクの対象として購入するケースも目立つ。海外のオークション会社や画商たちが日本人の 印象派好きをねらって「高値に〝はめる〟動き」(瀬木氏)も多いようだ。

   インテリア用の版画なども


 ▼最近ニューヨークのサザビーのオークシヨンに出たら、画商仲間としては会ったことのない日本人が盛んに値を上げていた=梅田画廊(大阪市)の土井洋三専務。





 国内で物故した大家、例えば梅原龍三郎、林武などの作品は5年前に比べ、3倍以上の値上がりと言う。こうした市場の活況を478年当時の絵画ブームに対し、第二次ブームと呼ぶ人もいる。

   百貨店の美術品売り場でも「前年に比べ30%売り上げが伸びている」「高額な絵に買い替える人が増えてきた」といった景気のいい話が聞かれる。

 ただ当時とは様相が違う。「主婦が目の色を変えて買いに来ていた」(大手百貨店)といったことはない。高額の一級品を求める客と手ごろなインテリア用の版画などを買う層への二極分化が進んでいるようだ。


わかりにくい絵画の価格


絵画など美術品の価格は、わかりにくいです。そのため、「何でこの絵がそんなに高額なの?」と感じることも多々あります。それだけに、絵画など美術品で投資を検討するなら、価格の決まる方や高値になりやすいポイントについて知っておくべきです。


【閑話休題】

絵画など美術品の価値が決まる3つの要素


    絵画を含む美術品の価値は、基本的に『美的な価値』『希少性』『需要と供給』の3つの要素で決まります。そのため、「高額な絵画」=「優れた絵画」というわけではありません。一見するとチープに見える絵画であっても、希少性や需要と供給次第では高額で取引されるのです。

     例えば、世界的に有名な作家が描いた作品であれば、どんな絵であっても需要が高くなるため高額で取引されます。また、有名な作家に加え、市場に出回っている作品が少なければ希少性が高くなり、高値がつきやすいのです。

    いずれにしても、絵画を含む美術品は高額だから優れた作品とはならないのです。その点を踏まえて、絵画などの美術品は手に入れるべきでしょう




   ▼商社は前のブームの時に″大やけど″を負つたから、 そう心配していないが、融資先に困っている金融機関が色気を出すとこわい=ある大手画商。

 投機的な動きの火種はくすぶっているというわけだ。前のブームの時は石油ショツクとともに大暴落、結局損をしたのは一般の人々だった。

    2部の仕手株持つ気持ちで

 そこで、これから物故作家の作品は無理としても、現存画家の絵を買おうとしてる消費者に、日本有数のコレクターとして有名な大川栄二氏はいくつかアドバイスする。





①甘い鑑賞画は避け、個性的な絵を選ぶようにしよう。

②投資とは極力考えるな。あえて投資対象と割り切るなら、二部上場の仕手株を気長に持つようなリスクを覚悟すること。

③一流の画商から買うこと。  そうでないと、売り放っしが多く、後てトラブルが起こる心配がある。
  
   画商、新旧交代の波
   

 画商界にも新旧交代の波が押し寄せ始めた。老舗の「大阪フォルム画廊」が店を閉じたり、東京・銀座の中小画商が何軒か商売替えをしたといつたことのほか、地方の有力画面の中にも経営危機に陥ったところが出ている。

 欧米はもとより、日本も物作家の名品の流通点数は年々少なくなっているため、しっかりした仕入れルートを持つ画商でないと、商売ができなくなりつつあるわけだ。

    大衆的な「一枚の絵」好調





 10-50万円ぐらいの大衆.的な絵を売る「一枚の絵」(本社東京、会長竹田厳道氏)も順調に伸びている。  

   百貨店などへの卸業務が7割、雑誌と一体になった通信販売と画廊での即売が3割。年商42億円でここ数年15%の伸びを示している。平均単価は18万円。36回払いのクレジットもOKだ。

  「高橋義孝氏(独文学者)から〚日本の家屋が洋式になり壁が増えたから、君のところは伸びたんだね〛と言われた。私は大家の作品よりも、一般の人が気軽に買える絵を普及させたい」(同会長)と言う。

 芸術性にやや欠ける作品が目につくと批判する人もいるが、芸術至上主義的な閉鎖市場の隙間をついた商法と言える。


      

 世界1は  ⬇️

ボッティチェッリ≪ラウンデルを持った青年≫1480年頃

2021年1月29日にサザビーズのオークションに出品された、イタリア・ルネサンスの画家サンドロ・ボッティチェッリ≪ラウンデルを持った青年≫は、手数料込み9200万ドルで落札されました。





     

 4月中旬、東京・銀座で開かれた洋画、日本画、諸道具のオークションには一般の人も大勢詰めかけ会場は汗ばむほどの熱気。 日本美術品競売(略称JAA、本社東京、  社長植松竹二郎氏)が主催、年に6回開いている。

 この日の取引は活発で、435点落札、出来高は約1億円。主催者が目安につける公示価格を5割も上回った。

 「昨年あたりからセリ値が高くなってきて15年前のブームの水準を上回っている」(同社長)。

 JAAは有力画商が中心になって46年に設立、日本で唯一の公開オークションを行っている。規模は小さいが、会員数は年々増えて、現在は約5千人。

 従来のセリ市は一般の人の入れない″ブラインドマーケット″で、業者間の交換会の域を出なかった。これでは真の市場として発展する余地は小さい。 

 「JAAの活動は欧米並みの公開市場への第一歩」と期待する専門家は多い。
 
 画商の地位を高めよう――と27の画商で組織している「日本美術交流会」の活動も注目される。






 毎月一回、勉強会を開きプロとしての目をみがいている。年に一回、各店がよりすぐった名品を公開して展示即売する「日本アートフェア」も好評だ。

   「″虚価″を売るのが画商なら、せめて″虚の実″を売るように努力したい」とは一人の会員の弁。画商の内部からも近代化への脱皮の動きが始まっている。


 JAAの活動は欧米並みの公開市場。表に出ないアングラマネーを含めると3000億円近くになる。米国は3兆円、欧州は1兆円市場と言われるが、正確な統計はない。

 欧米の画商の8割はユダヤ人で、大きな影響力を持つ。画廊を持たないで商売するブローカーは″ふろしき画商″と呼ばれる。

 海外の名品を輸入して、サヤを稼ぐ一匹オオカミ的な仲介人に最近は女性も増えているという。