『夏からの長い旅』

   大沢 在昌著

          

                          角川文庫

                       1991


 新宿鮫シリーズで知られるハードボイルド作家の初期作品。 テーマは、男は愛する女のためにどこまで出来るのか?





  私と恋人の久邇子に忍び寄る魔の手。正体は?私は見えない敵を探す。


   久邇子が初めて私の家で夜を過ごした晩、それは起こった。


  時限発火装置を使った放火であった。警察からは、周到な手口により愉快犯などではないと告げられた。


    工業デザイナーである私は多少妬まれることはあっても命を狙われてことはない。


      久邇子も同様のことのはずだ。


 そして数日後、第ニの事件が起きた。その時、私は忘れようとしていたあの夏の出来事が脳裏に蘇った。あの時の一枚の写真がその答えだつた。




  私はかつて戦場カメラマンだったのだ。ベトナム、カンボジアで会った平松 と言う男と激戦地に行く。


  そこで平松は最前列に飛び出し、命を落としてしまう。シャツターを切りながらも私は奇跡的に助かる。


    平松の遺族は何故助けようとしなかったのかと、憤る。日本に残した恋人と弟がいた。


    その恋人だった女と、そして弟はーー。


   不思議な関係と驚愕の結末。


  女性を描くのが上手く、都会的な作風の大沢在昌に幅広いファンが多い。初期の良い作品も多く、発掘しがいがあると思う。




       早川法律事務所に所属する失踪人調査のプロ佐久間公がボトル一本の報酬で引き受けた仕事は、かつて横浜で遊んでいた”元少女”を捜すことだった。著者23歳のデビューを飾った、青春ハードボイルド。



【標的はひとり】


    ある日、私(加瀬)に電話がかかってきた。かつて関係を持った女、三津子からだった。その電話が、私の心の傷を蘇えらせる。 


     「成毛泰男を殺せ」 突然の大企業社長・出雲からの依頼。報酬は5000万円、そして「監視者」の除去。殺しを請け負うのは、政府の秘密暗殺機関「研修所」に所属していたとき以来であった。 断れなかった私は、姿なきテロリスト・成毛を追う。