漆器の街和歌山県黒江、そこで生まれ育った岡本 万貴(まき)さんは、相愛大学音楽部フルート専攻卒業。和歌山音楽コンクール第1位入賞。すでに本紙でも何度か紹介されている。


       今回は万貴さんの音楽室の様子やスタッフにもスポットを当てて紹介したい。

   (中村 聖代)




 万貴さんの実家は老舗(明治9年創業)の漆器卸問屋「池庄漆器店だ。幼い時から音楽が大好きだった彼女は美しい音色のフルートに惹かれ、大阪の大学に進む。


 次第に「演奏しないでは生きていけない」身体になった。


 あちこちで演奏活動をするそんな岡本万貴さんをご存じの読者も多いだろう。 


   【金谷幸三氏との出会い】

 2013年に行われた黒江Jpan主催コンサートは、黒江町おこしを目的としたイベントの一環だ。彼女は、その一員として、旧漆器工場跡でのクラシックコンサートを企画し、自らも出演した。


  多方面からの演奏家によって3年の間毎年開かれたが、以前共演したことのあるギター奏者金谷幸三氏もそのうちの一人だった。万貴さんはその時、自分のフルートに合うのは彼の奏でるギターしかないと感じた。  





 これをきっかけに、金谷さんのギターと万貴さんのフルートは、ユニット「黒江万金堂」と名前を付け、2017年より本格的な活動に入る。



【会社の事務所を活用】

 夫の会社の事務所が自宅のすぐ近くに移転した。移転後特に使われる予定がなかったその場所を見て、  「自然あふれるここでこじんまりした音楽会を開きたい」と、万貴さんは思った。そして完成した。


   「黒江音楽室」のはじまりだ。大きな窓には四季折々の風景が現れ、すぐ傍では風や鳥のさえずりが聞こえる=写真下。音の響きを考えて自分で壁に座布団を貼りつけたりもした。


 


  【ネット配信を始める】

 金谷氏のギターと万貴さんのフルートは、周りの風景と一体となってまさに癒しの空間だ。会場に来られる人も徐々に増えていった。


 しかし、2020年、世界的なコロナ禍の中、時代が求める「演奏形式」が大きく変わった。これまでのライブ演奏会が開けなくなったのだ。  



  やむなくネット配信に変更―というのではなく、配信ならではのメリットを見出だしつつ、これまで届けることのできなかった人たちに黒江万金堂の音楽を届けようと、思った。






【タヌキの仕業】

 一から始めるネット配信、最初はWi-Fi設備がなかったので自宅から百メートルもケーブル線を引っ張ってきた。配信の前日から繋いていた線が切断されたこともあった。タヌキの仕業かもしれない。



     カメラやマイクやミキサーも揃えなければならない。最初から立派な機材は無理だ。チケットも自身で販売するため、その準備にも手間がかかった。試行錯誤の日々だった。 


【強力な助っ人】

 そんな苦労を重ねながら2017年から始まった黒江万金堂は、少しずつアップデートしていった。


 機材が増え、性能の良いものに変わったのはもちろん、万貴さんたちにとって素晴らしい贈り物を得たのだ。 


 それは、思いがけず現れた。長女が大学卒業後、音楽マネジメントの専門学校に通い、母親たちの協力を申し出てくれた。さらに大学生の甥ごさんも積極的に手伝ってくれるようになった。続いて高校1年生の二女も興味を覚え手伝わせてと言ってきてくれたのだ。



【これからも前進】


 そうして少しずつ進化を遂げる黒江万金堂と黒江音楽室。 


   YouTube配信も来年1月にはシーズン3を迎える。 


 若い人たちの感性を加えながら、素晴らしい演奏を生でもネットでも、映像をみながら、ハイブリットなコンサートを体験できるのは、とてもうれしい。


 万貴さんはギターだけでなく、ピアノや他の楽器とのコラボ、さらにアートや朗読など多角的なコラボをしたいと意欲を燃やしている。


     【わかやま新報女性面】