「面談型こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)の設置を目指して_e0171960_09492718.jpg



熊本県の慈恵病院に日本で初めて、親が育てられない赤ちゃんを匿名で預け入れるシステム「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)の運用から10年。これまで125人の赤ちゃんを救い、大きな反響を呼んた。安易な棄子や育児放棄の助長につながり、匿名で預け入れることに子の出自を知る権利が損なわれるなど批判もある。


今回は関西で初めて「面談型こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)の設置を目指して活動されている神戸市のマナ助産院院長の永原郁子さん(写真、著書も)にお話を伺った。




 きっかけは、関西でこうのとりのゆりかごを設置するために「特定非営利活動法人こうのとりのゆりかごin関西」(理事長:人見滋樹京都大学名誉教授)が立ち上げられ、その理事に就任したことだった。



「何とかして命を守れないかと思いました。赤ちゃんはけなげに生まれてきます。生まれたばかりの赤ちゃんは、ここはどこ?というふうに周りをきょろきょろ見回しています。お母さんを信頼しきっています。泣いてもお母さんが抱っこしたら泣き止みます。信頼していたお母さんに殺されてしまうんです。そのような女性は、極悪非道ではない普通の女性です」。


「病院で産んだり、育てられない命を産むとこまで守り、後は託すという形にしたいと思っています。中絶される命も確実に人格がある命です。5か月くらいから記憶があります。計り知れない可能性のある命を、自分で生み出せないなら、託せば良いというふうにしていきたいと思います」。



保育器につながるドア(赤ちゃんポスト)の設置には、24時間医師の常駐が必要と神戸市の指導があったため、面談型に切り替えた。面談で話し合うことでお母さんが困っていることに焦点を当てて、問題を解決できると考えている。


お母さんの考えを整理して、一人でいるお母さんと一緒に考えられる。顔を見せたくない人や、夜来る人、誰にも言えない人もいる。助産師の仕事は女性に寄り添って母子の必要に応えることだ。母である女性の痛みにもふれることが出来ると考えている。


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小さないのちのドアは、思いがけない妊娠や、出産や育児で追い詰められている女性のための24時間開いている相談窓口です。どなたでも相談することができます。
 
「I will be with you.
 I will never leave you nor forsake you.」
 
わたしはあなたとともにいる。
わたしはあなたを見放さず、あなたを見捨てない。
 
そんな思いを込めて、活動しています。




永原 郁子さん=1980年大阪大学医学部付属助産婦学校卒業後、病院勤務を経て1993年神戸市北区ひよどり台にてマナ助産院を開業。自然出産/母乳育児の推進/子育て支援/環境問題/戦争を語り継ぐ活動などを通して地域母子保健に携わる。


 

今までわが子が妊娠して困っているという相談をたくさん受けてきた。普通に育てられた子供が性交後に妊娠する。自分の子育てが間違っていたのではないかと悲しんだり、怒ったりする母親に、「大変な時期に、どう乗り越えるかでその後の親子関係が変わっていく。乗り越え方が大切です」と話している。



助産院に隣接した土地に、思いがけず妊娠した女の子たちが暮らす「マタニティーホーム」を建てたいと考えている。かつては結婚する前に妊娠することは社会的に認められないことだったが、ここ10年ほどで「できちゃった婚」は隠すことでなくなった。しかし今なお、結婚にいたらない妊娠は認められず、人工妊娠中絶する人がほとんどだ。



事情抱えて妊娠し、職場にも言えない人もしばらくの間「マタニティホーム」で過ごすことで出産できるようにしたいと考えている。


日本では、養子縁組には否定的な人が多い。夫婦の選択肢として、自分の赤ちゃんも生んで、養子も育てるように、養子縁組が一般化するような社会になればよいと考えている。実親も生まれた子供とコンタクトを取り、生まれた子供も私には2人のお母さんがいると、胸を張って生きていけるような社会にしていきたいと考えている。



(中山まり)


わかやま新報女性面掲載