あまんきみこ・ぶん 二俣英五郎・え


    サンリード 1980円

 

 読み聞かせなら3歳から、一人で読むなら小学生初級向き。小学校の教科書にも掲載されているようです。

 

 ぜひ、大人の皆様にも読んで欲しい一冊です。


 皆さんは、「弱肉強食」「食物連鎖」という言葉を聞いたことがありますか?  


 野生の動物の世界では、自分よりも弱いものを食べて生きていくということは当たり前のことです。そのために、狩りをしたり罠をしかけたり動物なりに工夫して獲物をしとめます。


 このお話に出てくる森に住んでいるきつねも食べるために知恵を働かせて、今日も獲物が来るのを待っていました。むかしむかしあったとさーーという言葉から始まります。 

   



 (あらすじ〉

 はらぺこぎつねが歩いていると家を探しているやせたひよこに出会った。


 「よしよし俺の家にきなよ」と誘うと、「きつねお兄ちゃんて優しいね」生まれて始めて優しいなんて言われたきつねはぼうっとなった。きつねはひよこに、それは優しく食べさせた。 


 そしてひよこが「優しいお兄ちゃん」というと、またぼうっとなった。ひよこはまるまる太ってきた。春になり、ひよこが散歩に行きたいと言い出した。逃げる気かなと思ったきつねは、そうっとついていった。


 すると、やせたあひるがやってきた。あひるはひよこに「どこかいいすみかは無いかなあ」というと、とっても親切なきつねお兄ちゃんの話を始め

        「親切なきつね」という言葉にきつねはうっとりとした。そして、それは親切に二匹に食べさせた。 


  あひるもまるまる太った。夏のある日、二匹はまた散歩へ行きたいといった。


 そこへ、やせっぽちのうさぎがやってきた。二匹は神様みたいなきつねお兄ちゃんの話をした。きつねはまた三匹を神様みたいに育てた。


 うさぎもまるまると太ってきた。ある日、「うまそうなにおいだねぇ、ひよこにあひるにうさぎ?きつねもいるぞ」おおかみが山からおりてきた。 


 きつねの体に勇気がりんりんと湧いてきた!おお、闘ったとも闘ったとも。さあ、その結末は…⁉ 


 とっぴんぱらりのぷう。というおまじないのような言葉で絵本は終わります。


     きつねの表情がどんどん神様のようになり、見ているものの心を和らげます。三匹の「優しい」「親切」「神様」という言葉がきつねを変えていきます。



    浦田ひろみ


             わかやま新報女性面掲載