実家である和歌山県海草郡紀美野町にアトリエを持ち短歌、物語、企画展などを発表する香月(かづき)にいなさん。とりとめないというか、謎と言うか、独特な世界に誘い込んでくれる彼女に会って、話を聞いた(中村 聖代)。
【14歳でペンネーム】
香月にいなさんは、本名を「きむらともこ」という。小学生時代から詩・作文など文章を書くのが大好き。全国作文コンクールにも入賞の経験がある。中学・高校時代には演劇の台本も担当した。
「もし結婚して苗字が変わってしまうならその前にペンネームを」と、14歳のころから「香月にいな」と名のり始めた。グローバルで呼んでもらいやすい名前―をその時自分で考えた。
【祖母のおどけ話の影響】
にいなさんのルーツは祖母の「おどけ話」だという。小さいころから祖母がアドリブで作ったおどけ話を聞いて育った。人をおもしろがらせることの喜びを知ったのだ。
2007年から祖母に本格的に短歌を学んだ。以前は同人誌「竹垣」(代表:津田美智)にも所属していた。今も継続して短歌を学び続けている。
紹介の冊子によると、「作品の中心に『恋愛』を描くのが特徴で、絵画・写真などを空間で融合させ、全体として作品を表現することを追及している」のだそうだ。
【大学生活と就職】
にいなさんは、世界平和のためには国連で働くのが一番と考え、愛媛大学総合政策学科に進んだ。しかし大学デビューを果たしたものの、自由な学生生活の中で挫折も味わい、ついに大学3年で引きこもることになるーそのとき読んだ膨大な量の書物や観た映画は今となっては大きな糧である。
恋愛をきっかけに、引きこもりの生活から抜けた後、大学を辞めて、仕事をしながら放送大学を卒業。住宅関連会社を始めとし、コンビ二のアルバイトや建設コンサルタント会社に勤めた。
【絵本作家との出会い】
会社に勤めながら創作活動を続けていたにいなさんは、2017年7月「絵本作家のぶみ先生講演in和歌山!」を主宰した。のぶみ氏は、まだ出版されていない原稿をそのまま自身で読み聞かせする独特のスタイルで皆を魅了した。
そのことをきっかけに、身体や時間を削る生活に見切りをつけ、文章で生計をたてる決心をする。
【次々と企画】
2016年7月から読み終えたあとは折り紙を楽しめるフリーペーパーを開発。地元の印刷屋に依頼し、100部ずつ作っている。テスト版0号から今は9号まで発行。100号を目指す。
各地で企画展を開催。その時その場所に行かなければ得られないモノを提供する。
企画は多種多様で、書家やアクセサリー作家・演劇などとのコラボし、そのたびに不思議な空間を創造している。
来年2月中旬にも、じゃんじゃん横丁の珈琲もくれんでBAR0214を予定している。詳細は「香月にいな」ブログで順次配信する。
和歌山で新しいものを生み出し、和歌山で発信し、和歌山で活動を続けるにいなさんのファンは今後も増え続けていくと確信する。
「あの時のあの子が遂に出版したのか!と、言っていただけるように、たくさんの出逢いを大切に精進していきたいですねーーと最後に語ってくれた。
【わかやま新報女性面掲載】