英子:最近テレビの再放送で山田太一の「友だち」を見たのよ。何年くらい前の作品かしら、倍賞千恵子主演で既婚者の熟年男女に友情は成立するのかっていうー配偶者以外の異性の友人を持つことの是非―ドラマはむろん正しい結論などだしていなかったけど。




     微美:おもしろいテーマね。


     英子:壮司の妻麻子つまり倍賞千恵子が言うの『私、友だちが欲しかったの。そりゃ、団地の奥さんたちとのつき合いはあるけど、そういうんじゃなく、他の世界が欲しかったの。女房でも、母親でも、嫁でもないつき合いが欲しかったの』。


      微美:そういう世界は今ならたくさんあるんじゃない?



           英子:『でも、絶対にそういう風(男女関係)にはならないの。意地でもならないの。そして、ずっと友だちでいるの』


     微美:子供みたいなこと言ってるわね。


     英子:麻子の旦那も同じことを言ってたわ。麻子は続ける『そうかなあ。子供なら我慢できないことも、中年なら出来るってとこあると思うし、そうやって友だちが出来ていったら、いまより少し、淋しくないんじゃないかなって思ったの』。


        知り合って気が合って仲良くなると、もう寝るしかないっていうのはあまりに通俗的よね。テレビの中で内海桂子さんが言ってるわ『寝ちゃえばお互い獣だものね。寝たいのに寝ないってのはいいものよ。それがおつってもんで思い出にも残るんだよ』 




     微美:たしかにそういう関係の異性がいるっていうのはいいわね。



 



      微美:互いのパートナーがどう思うかも考えちゃうわ。


      英子:このあたりは喜びと哀しさと豊かさと喪失をないまぜにした複雑な世界のような気がするわね。

              




         (中村 聖代)


                     わかやま新報女性面掲載