映画『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』 | 牧内直哉の「フリートークは人生の切り売り」Part2

映画『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』

『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』

(富山県内上映終了)

公式サイト:https://www.flymetothemoon.jp/

 

1969年、アメリカ。

人類初の月面着陸を目指す国家的プロジェクト「アポロ計画」は、

開始から8年が過ぎ、失敗続きのNASAに対して国民の関心は薄れていました。

ニクソン大統領の側近モーは悲惨な状況を打開するべく、

PRマーケティングで実績のある女性ケリーをNASAに雇用させますが・・・。

 

これ、富山では意外にあっさり上映終了となりました。

私も仕事の関係でなかなか観られず、最終週になんとか鑑賞できました。

「アポロ計画」は実際にあった。月に実際に行った・・・はず。

それは史実ですが、この物語はそれを活かしたフィクション・・・のはず。

なんか、観てるうちに分からなくなっちゃったんですよ。

アポロ11号の月面着陸フェイク説は今でも支持者がいますからね。

 

フィクションだからこそリアリズムは必要です。

ケリーはやり手の広告ウーマンですが、

いかにもイケイケのハッタリが効いたビジネスの進め方は、

私も広告関係の世界にいるので、理解できるリアルさです。

それと、ニクソン政権がフェイク映像を作るように指示した背景には、

米ソ冷戦における宇宙開発競争がありました。この感覚がかなりリアル。

嘘でも「成功した」と世界にアピールしたかったわけです。

ハリウッド映画はニクソン政権をギャグにするのが好きですねぇ。

 

そういった土台を上手く活かして、

序盤で何気なく描いた、キューブリックや黒猫、ニクソン嫌いを、

中盤以降で見事に回収して、ちゃんと笑えるというのは、

なにこれ?三谷幸喜さん脚本(当然ですが違います)?

と思ってしまう世界観です。ようするに面白かったということ。

 

ケリー役はスカーレット・ヨハンソン。

いつまでもイイ女感に溢れてますが、39歳になったということで、

自分の年齢を卑下したギャグを言う役もするようになったのですね。

あと、モー役がウディ・ハレルソンでして、

今はいろんな役をやられてますが、

あの強面がコメディでこそ活きる俳優さんという気がします。

 

(以下、“適度”にネタバレしています。ご了承ください)

 

ケリーと序盤は対立するNASAの発射責任者コールは生真面目人間。

しかし、二人とも過去につらい経験をしています。

ケリーは「つらい経験から“生きる術”を得た」と言い、

コールは「つらい経験は“世界を変える原動力”になる」と言いました。

また、ケリーは嘘だらけのプレゼンで成功しようとしますが、

コールは本音だけで訴えることで逆に説得力を生み出しました。

現実の世の中ではケリーのような成功者は多いのかもしれませんが、

コールのようでありたいと、実はケリーも思ったりするわけで・・・。

 

もう一つ印象的だったのは、

「誰も信じなくても真実は真実。みんなが信じても嘘は嘘」という台詞。

私はアポロは月に行ったと信じてますよ。

NASAのアーカイブ映像が使われた月面着陸のシーンは、

何度か観た記憶がありますが、それでもテンションが上がりました。

まぁ、月面着陸フェイク説を唱えている人に言わせれば、

そのアーカイブ映像こそがフェイクなんでしょうが・・・。