映画『違国日記』 | 牧内直哉の「フリートークは人生の切り売り」Part2

映画『違国日記』

『違国日記』

(上映中~7/11:イオンシネマとなみ)

公式サイト:https://ikoku-movie.com/

 

大嫌いだった姉を亡くした35歳の女性小説家・高代槙生は、

姉の娘である15歳の田汲朝を勢いで引き取ることにしました。

他人と一緒に暮らすことに戸惑う不器用な槙生を、

親友の醍醐奈々や元恋人の笠町信吾が支えてくれます。

という、叔母と姪の奇妙な共同生活を描いた物語です。

ヤマシタトモコさんの同名漫画が原作。例によって未読です。

最初は他の劇場でも上映してましたが、

今は富山県ではイオンシネマとなみのみ。しかも、もうすぐ終了です。

 

新垣結衣さんが35歳の役!?と思ったら、実際にそんな年齢なのですね。

親友役の夏帆さんも現在33歳。そりゃ私も年をとるわけだ。

朝役の早瀬憩さんは過去に観たドラマや映画に出演されてましたが、

意識して拝見するのはこれが初めてで、初々しい演技かというと、

瑞々しいけど初々しくはなくて、最近の若い女優さんは皆さんお上手です。

 

異国じゃなくて違国。辞書にはない言葉でした。造語かな?

確かに槙生と朝は全く接点なくここまで暮らしてきました。

なんせ槙生にとっては大嫌いだった姉の娘です。

でも、葬式の席での親類たちの無神経さには腹が立ち、

こんな人たちに預けるくらいなら…と思っちゃったんですね。

槙生は作品がアニメ化されるくらいの結構な売れっ子作家でして、

人見知りで部屋も汚いですが、金の心配はなさそうでした。

といっても、後で後見人として金の話も少し出てきます。

 

ポイントはそこではなく、違国の人が家族になるということ。

大嫌いだった姉の娘を槙生は好きになれるのか。

また、それを正直に言われた朝はどんな思いで槙生と暮らすのか。

人を好きになる、嫌いになるというのはどういうことなのか?

そもそも、好きになったり嫌いになったりする必要はあるのか?

 

人って他人の側面しか見ていないのに、

好きになったり嫌いになったり、酷い時には憎んだりまでします。

でも、知らなかった面を知ったら、大好きになったりもします。

好きになる理由、嫌いになる理由もいろいろです。

自分の生き方や好きなものを否定されるのはつらいですよね。

でも、その人はなぜ否定するのか…が、言われた方は分からない。

では、それを知ったら変わるのか、やっぱり変わらないのか。

 

(以下、“適度”にネタバレしています。ご了承ください)

 

「人の気持ちは解らない。その人じゃないから」

槙生は最初から朝にそう言ってました。

朝はそう言われていましたが、なかなか大事なことは言いません。

槙生と違って朝は人見知りじゃないけど、でも、大事なことは言わない。

朝は高校1年生ですからね。適度な青さは仕方ないです。

ただ、槙生も初めてのことに挑戦してるわけで、

分からないことがあっても仕方がない。35歳なんてまだまだ青くてOK。

いや、そういうわけにもいかんやろと思うのが大人なんでしょうが、

そもそも、生き方に何が正解とかないですからね。

 

槙生にとって大きいのは、頼りになる人が身近に二人いたこと。

一人は親友の菜々。もう一人が元彼の信吾さん。

元恋人でも友達になれる人、今も繋がっている人、存在を消したい人、

いろいろいますけど、信吾さんは今でも優しく頼りになる人でした。

瀬戸康史さん、違う役もあるけど、こういう役が似合いますね~。

朝はこの二人の存在が羨ましい。槙生を一番好きでいる人が二人もいる。

自分にはいない。槙生ちゃんはそうじゃないし…ってなってる。

 

とはいえ、35歳はまだ若いけど、朝にとっては倍以上の年齢です。

朝は亡き母の言葉に縛られていますが、槙生の言葉も響いてくる。

「やりたいことは死ぬ気で、殺す気でやる“べし”」と言われちゃいました。

“死ぬ気”はともかく“殺す気”って誰を殺すねん?とも思いましたが、

これについては終盤で、なぜその境地になったが分かります。

 

そんなことを、感じたり分ったりしながら観てました。

テンポが悪いというのとは違うけど、ちょっと長さは感じました。

139分。監督自身が編集すると長くなることが結構あるのは確かです。

まぁ、ガッキーを眺めていられるので、それもOKなんですけどね(^_-)-☆