映画『アイアンクロー』
『アイアンクロー』
(富山県内での劇場上映は終了しています)
公式サイト:http://ironclaw.jp/
日本でもジャイアント馬場さんらと何度も激闘を繰り広げ、
鉄の爪=アイアンクローを得意技としたアメリカの伝説的なプロレスラー、
フリッツ・フォン・エリックを父に持ち、
プロレスの道を歩むことになった兄弟の実話をベースに描いた作品です。
『アイアンクロー』は一家のレスラーの代名詞ともいえる得意技。
ですが、本作においては別の意味も持たせていたように思います。
一部で「呪われた一家」とも囁かれたのはまさに!といった内容でした。
息子たちの中で一番プロレスの才能があるとフリッツが認めていた、
デビッド・フォン・エリックが日本で急死したのが1984年。
1980年代、あの頃の私はプロレスに“ドはまり”していた時期でした。
天龍源一郎選手が挑戦する予定だったUNヘビー級王座のタイトル戦、
楽しみだったんですが、とてもショックだったのを覚えています。
それからしばらくして、
テレビ大阪(テレ東系列)で『世界のプロレス』という番組が始まって、
『世界の・・・』ですが、アメリカのプロレスが放送されてました。
向こうの中継映像にあとから日本の実況解説を付けた番組。
日本ではヒールなのに、アメリカではベビーフェイスだったりする。
そういうところも面白く、自身の価値観の形成にも繋がりました。
あの番組で紹介されていたザ・ロード・ウォリアーズが、
その後に日本に来て大フィーバーになったりとかで、
とにかく、あの頃はしょっちゅうプロレスを観ておりました。
なので、本作にもブロディ、レイス、ゴディ、フレアーらが登場して、
もうなんかそれだけで観ていて興奮しちゃいました。
演じている俳優さんが、ブロディはちょっと小さめでしたが、
ハーリー・レイス役の人がめちゃめちゃレイスっぽくて良かったです。
ミスター・プロレスです。NWAヘビー級チャンピオンです。
本作では、このNWAヘビー級チャンピオンの意味合いが大きくて、
自身はこのベルトに挑戦するチャンスすら得られなかったけれど、
それでも成功は収めたフリッツが、自分の夢を息子たちに託し、
父の圧で託されすぎたために壊れていく息子たちを描くことで、
家族の在り方、自分が本当に望む生き方、人は誰と家族でいたいのか。
本来は、そういったことを描き、感じさせる映画なのでしょう。
(以下、“適度”以上にネタバレしています。ご了承ください)
「呪われた一家」・・・否、各人の判断が賢明ではなかっただけ。
とはいえ、判断できないほど父からの圧が強かったのです。
デビッドは早く病院に行っていたら、もっと長生きできたかもしれない。
マイクは最初からレスラーには向かず、ミュージシャンになれば良かった。
ケリーはモスクワ五輪ボイコットがなければどうなっていただろう。
ケビンだけが生き残り大家族を築いた。が、全体的にむなしい世界観でした。
序盤のシーン、ケビンの彼女(後の妻)が、
「プロレスはやらせなのか?」と尋ねました。聞いちゃったか・・・。
その答えは、ショウビズの世界でのし上がっていくのと同じものでした。
でも、プロレスは身体を痛めつけています。
場合によっては死ぬこともあります。そういう世界なのです。
しかも、フォン・エリック家の息子たちは心の中まで傷ついて・・・。
もちろん、ショウビスの世界の人たちも心が傷つくことは多いですが、
この一家はホント、半端なかったなという印象です。