映画『ゴールド・ボーイ』 | 牧内直哉の「フリートークは人生の切り売り」Part2

映画『ゴールド・ボーイ』

『ゴールド・ボーイ』

(富山県内劇場上映終了)

公式サイト:https://gold-boy.com/

 

実業家の婿養子である東昇は、ある目的のため、

義理の両親を崖の上から突き落として殺害しました。

誰にも見られていない完全犯罪のはずでしたが、

3人の少年少女がその現場を偶然にも動画撮影でとらえてしまいました。

子供たちもそれぞれに複雑な家庭環境や家族の問題を抱えていて、

東を脅迫して大金を手に入れようと画策する・・・というサスペンス映画です。

 

オープニングタイトルに『黄金少年 GOLDBOY』と出てきました。

私、予告編以外の情報は仕入れてなかったので何も知らなかったのですが、

中国の人気作家ズー・ジンチェンの小説「悪童たち」が原作で、

それを舞台を沖縄に変えて、金子修介監督で映画化したものでした。

どうりで、日本映画ですが、エンドロールには中国人の名も多かったです。

で、エンドロール明けに「2」の文字が!?え?この話は終わってるよね?

 

特に誰に感情移入するでもなく、共感点も少ない物語でしたが、

事実が明らかになっていく流れが単純にサスペンスとして楽しめました。

これ、子供たちがすぐに東昇の犯行映像を警察に提出していたら、

それで事件は解決していた案件なのではないかと思うのですが、

子供たちは正義感で自分たちの株を上げようという発想にはならなかった。

そうならなかった理由はいくつかありました。

 

(以下、“適度”にネタバレしています。ご了承ください)

 

まずは単純に少年たちは金とそれで手に入る自由が欲しかった。

朝陽は母子家庭で貧しく、進学のための金が必要でした。

朝陽の幼馴染、上間浩と夏月は血の繋がらない兄妹。

夏月は義父のDVに耐えかねて包丁で刺してしまい、

生死は不明の中、浩は夏月を連れて朝陽のもとに逃げてきました。

世の中がクズだからといって犯罪OKではないのは当然ですが、

この辺りは子供たちに同情の余地があるといえばあるのです。

 

世の中がクズという点に関しては、

東昇が婿入りした実業家の会社はこの地域を牛耳るほどの大企業で、

管轄警察署OBの天下り先も世話しているという現実がありました。

なので、昇の義父母の死もあまり入念に捜査はしていません。

ただ、これは子供たちが分かっていることではなく、

昇が認識していることです。岡田将生さんが演じています。

 

少年たちの中で主犯格となるのは安室朝陽。

この子は成績優秀で頭が良いんです。でも、それが仇になってしまった。

彼は「何をしたとしても少年法で14歳までは捕まらない」

そういうことを理解している子なんです。そして、現在13歳でした。

 

なぜ彼は少年法を理解していたか最後に腑に落ちる事実が明らかに。

実はこの計画の前から、朝陽は既に殺人犯だったのでした。

これはありがちなパターンなんだけど、それでも「おぉ!」ってなります。

本作で私が一番面白いと思ったのがここです。

 

朝陽の計画は綿密に練られて隙がないようでした。

ただ、上間兄妹は普通に子供なので・・・。そこは本作の切ないところです。

特に夏月ちゃんは・・・。彼女は最初から最後まで不憫だったなぁ。

にしても、最近の子役さんは皆さん本当にお上手ですね。

 

そして、朝陽自身も、やはり彼も実際には中学1年の少年でした。

昇から大金を手に入れようとしたのも、

自分のために頑張って働き続ける母親のためでした。

ただ、最後の最後に母親は冷静でした。

母親役は黒木華さん。もう中学生の子供がいる母親役だとは!