映画『サイレントラブ』 | 牧内直哉の「フリートークは人生の切り売り」Part2

映画『サイレントラブ』

『サイレントラブ』

(上映中~:J-MAXシアターとやま、TOHOシネマズファボーレ富山、TOHOシネマズ高岡、イオンシネマとなみ)

公式サイト:https://gaga.ne.jp/silentlove/

 

喉に傷があり、声が出ないのか出さないのか分かりませんが、

音楽大学の用務員として働き、毎日をただ生きてるだけの青年・沢田蒼と、

視力を失ったピアノ科の音大生・甚内美夏が、

静かに想いを紡いでいく姿をつづったラブストーリーです。

ミッドナイトスワンの内田英治監督が原案・脚本も手がけました。

 

映画の感想は人それぞれなので、

本作が今年のNo.1という方がいても不思議ではありません。

が、私の中ではちょっとピンとこない、自分には合わない映画でした。

映画が悪いわけでも、私が悪いわけでもなく、

自分と相性の良くない映画って、たまに出くわしちゃいます。

 

面白いと思った点もありました。

古田新太さん演じる先輩用務員さんが、多分きっと若い頃からずっと、

小泉今日子さんと斉藤由貴さんのファンだったこと。

ピアノの演奏が素敵だったこと。

特にピアノ講師・北村悠真役の野村周平さんは、

実際に弾いていたかどうかは分からないのですが、

本当に上手いのではないか(真偽不明)と感じさせる演奏の演技でした。

そして、浜辺美波さんはやっぱり可愛かったということ。

 

(以下、“適度”にネタバレしています。ご了承ください)

 

その浜辺さん演じる美夏も含めて、

誰一人、私が感情移入する登場人物はいませんでした。

美夏は交通事故で目が不自由になってしまったのですが、

それを心配してくれた学友や、学科変更を提案した教授に悪態をつきます。

事故以降でそうなってしまったのか、もともとそういう人なのか分かりません。

でも、それって大事なポイントで、観客にゆだねるものではないと思うんです。

 

何でも言いすぎちゃう脚本や描きすぎちゃう演出も好きではないですが、

本作はちょっと描かなさすぎというか、人物を掘り下げてない感じがしました。

事故にあう前のシーンがあっても良かったように思います。

美夏は途中から良い子にはなるんですよ。愛の力ですね。

ただ、自分も愛しているのなら、その選択はアリなのか?とも思ったり・・・。

で、気になりだすと、気にしなくて良いことまで気になるもので、

そういったシーンや表現が次から次へと出てきて、

結局、最後まで話に入っていけませんでした。

 

蒼が言葉を発しないのは、実は「出さない」のではなく「出せない」のでした。

なぜそうなったのかは、かなり後になってから分かりました。

これがまた、具体的なことは書きませんが、

なんでそんなことしてるのか、なぜそこまでしたのか、

そういうことが分からないので、やはり感情移入できないんですね。

各シーン、好意的に解釈しようと思えば幾らでもそうできますが、

何だかそうしたくない自分がいまして・・・。

 

登場人物に“救い”になるような良い人がいなかったからかもしれません。

その方が現実的であるともいえますが、私が望んでいる形ではなかったです。

物語の設定や展開、テーマ(そもそもよく分かってない・・・汗)にも、

感情移入したり共感したりすることなく終わってしまいました。

ハッピーエンドなシーンも“とってつけた”感じがしました。

主要キャストの俳優さんは皆さんお上手だったんですけどね。

途中から「これって実は“いい話”ってわけじゃないのでは・・・?」

とか思ってるうちに、エンドロールになってしまったのでした。