映画『FLEE フリー』 | 牧内直哉の「フリートークは人生の切り売り」Part2

映画『FLEE フリー』

『FLEE フリー』

(上映中~7/14:J-MAXシアターとやま)

公式サイト:https://transformer.co.jp/m/flee/

 

20年の時を経て祖国アフガニスタンからの脱出を語る

青年アミンの姿をとらえた実話のドキュメンタリー映画です。

主人公をはじめ、周辺の人々の安全を守るためにアニメーションで制作され、

最初のテロップで名前や土地名も変えてあると出ていましたが、

国や都市名はそのまま受け入れても良いのかなという気がしました。

おかげさまで、最近ちょっと多忙でして、あまり長くは書けませんが、

これは観に行って良かった。富山県内での上映は今日(7/14)までです。

 

タイトルは『FREE』ではなく『FLEE』、「逃げる」という意味です。

アミンは少年時代にアフガニスタンから逃げ、逃げた先のロシアから逃げ、

とにかく、逃げ続けて、今はデンマークに亡命しています。

当然ですが、逃げ続けるのは簡単なことじゃない。命がけです。

などと、文章にすると簡単な表現になってしまうのがもどかしいです。

国外脱出を手助けする組織にも格差がありまして、

でも、成功率の高い組織は、やはりそれなりに高額なんですね。

 

現在のアミンの立ち位置がちょっと私には分かりにくいのですが、

研究者として成功を収めているようで、何度も渡米しての仕事もしています。

しかし、コペンハーゲンには男性の恋人がいて、

近い将来は結婚して郊外の家で二人で暮らそうという話もしています。

そういう状況の中、アミンは自分の逃亡の記憶を監督に話し始めます。

何か自分の中で一区切りつけておきたいという思いがあるのかもしれません。

話を聞くヨナス・ポヘール・ラスムセン監督は、

自身も迫害から逃れるためにロシアを離れたユダヤ系移民です。

 

アミンがアフガニスタンを脱出したのは少年時代。

父親が当局に連行されたまま戻ることがなかったことがきっかけです。

ただ、少年だったので自身で事情を理解しきれていない面があります。

いや、私も詳しくは分かってない。もっと勉強しないとダメですね。

最初にロシアに逃げたのは入国ビザの関係。仕方なくロシアなんです。

どちらかというと、映画はロシア生活の苦しさに時間が割かれていました。

ホント酷いんですよ。特にロシアの警察官が。本当に酷いんですよ。

 

1980年代のアフガニスタンの街や空、政情のニュース映像など、

ところどころ実写が入りますが、基本的にはアニメーションです。

アミンたちの安全を守るためのアニメーションということですが、

それだけでなく、彼の体験をドラマ的に描く手法としても効果的でした。

実写の再現ドラマにするより、ある意味、リアルに描けて、

しかも、重い話ではあるのだけれど、最後まで観やすい。

また、アミンはヘッドホンステレオで音楽を聴いていて、

いきなり流れてきたのはa-haの「テイク・オン・ミー」でした。

1984年の曲なので本当に彼が聴いていたのかもしれませんが、

いずれにしても、いろいろ気を遣って演出されていたように思います。

 

アミンには難民として生き延びるという戦いの他に、

セクシャルマイノリティとしての葛藤がありました。

アフガニスタンでは受け入れられにくい性的指向でした。

いや、日本でもこの件に関してはまだまだな感じはありますけど。

まぁ、この件については、最終的にはなるようになります。

今はまだ、いろんな物語の題材になっていますし、

それはこの先もしばらく続くでしょうが、

性的指向を議論することは不毛の世に・・・、そう簡単にはならないか。

 

現在のアミンは逃げ続けていた時から比べれば安全なのでしょうが、

それでもまだ、永遠の安息が約束されているわけではないのでしょう。

日本には日本の生きづらさがありますが、

しかし、基本的には「平和」な上での生きづらさです。

世界にはただただ生き続けることも困難な人たちも大勢いるということです。

そして、祖国とか故郷とかって何なのかな?と考えました。

はい、またいろいろと考えさせられる機会を映画に与えてもらいました。