映画『サイレント・トーキョー』 | 牧内直哉の「フリートークは人生の切り売り」Part2

映画『サイレント・トーキョー』

『サイレント・トーキョー』

(上映中~:TOHOシネマズファボーレ富山、J-MAXシアターとやま、TOHOシネマズ高岡)

公式サイト:https://silent-tokyo.com/

 

秦建日子さん原作のクライムサスペンスの映画化です。

予告編を観たときは東宝かと勘違いしてましたが、東映配給作品でした。

恵比寿に始まり、渋谷・・・と、犯人は東京各所での爆破事件を予告し、

「爆破を止めたければ総理大臣と面談させろ」と要求する中で・・・という展開。

上映時間99分。素直な感想を一言で申し上げれば「薄味」な映画でした。

 

まず、爆弾が出てくるんだから、もっとハラハラさせて欲しかったです。

最初の恵比寿の時点で緊迫感が足りないので、ツカミに失敗してます。

実際、そこでは爆弾は爆発しないので、余計に物足りなさを感じました。

次の渋谷は大爆発。爆破させる時間も場所も公にしてるのに、

なんでこんなにアホな若者が集まるんだろう・・・。でも、そこはリアルかも。

ちなみに、テレビ局のレベルも低く低く描かれています。

 

で、渋谷の爆破シーンは大爆発自体は迫力があって良いのですが、

その後、スローになって、炎や飛び散る破片が人を襲う襲う・・・。

スローにするとギャグっぽいんです。もっと悲惨な感じで描いて欲しかった。

なぜなら、犯人は犯行予告で「これは戦争だ」と訴えていたからです。

結局、爆弾の存在に僕の心拍数が上がることは最後までなかったです。

 

次に、オープニングから石田ゆり子さんが登場して私は嬉しいですが、

彼女が演じるアイコが恵比寿で何をしてるのかがよく分かりません。

あとで事件に巻き込まれたテレビ局員が「彼女も巻き込まれた」と言うので、

そこでやっと「あぁそうだったんだ・・・」と思ったぐらいです。

何でもいいから、初めてテレビ局員にあった時点で自分の設定を、

敢えて申し上げますが、嘘でもいいから説明して欲しかったです。

まぁ、あれだけ謎めいていたら、「この人、何かあるな」とは思いますけどね。

 

そんな感じで、よく分からないまま描かれる登場人物が多いんです。

野間口徹さんは探偵役だったんだ!と、帰宅後に調べて初めて分かりました。

これは、僕の鑑賞能力が低いということなのかしら?

渋谷の大爆破で重傷を負った若手刑事がこれからトラウマに苦しむ・・・と、

西島秀俊さん演じる世田刑事が説明してまして、同期のキャリア官僚が、

「お前はもう大丈夫なのか?」と聞くと、世田刑事の首筋に大きな傷跡。

ですが、結局、その世田の過去は分からずじまい。

ついでに言えば、若手刑事が立ち直れたのかどうかも分からずじまい・・・。

 

事件に大きく関与しているであろう青年、須永役は中村倫也さん。

合コンで少し親しくなった女性、綾乃ちゃんが凄いね~と言ってまして、

どうやらアプリで成功して雑誌で取り上げられている時代の寵児らしい。

まぁ、そこは他のキャラクターに比べると構わないところですが、

綾乃の友達が須永の事件への関与を知った時に、

すんなり彼女に重要な証拠を握らせて警察にかけ込ませているんです。

最後の真実を知れば、そうさせていたのかな・・・と、想像もできますが、

結局どうだったのかは分からないし、爆破のドキドキ感同様に、

彼女が須永の家を抜け出していくシーンがなく、緊迫感ゼロなのですよ。

 

ちなみに、綾乃ちゃんは良い子でした。彼女には幸せになって欲しい。

加弥乃さんという女優さんが演じてまして、ん?どこかで観たぞ・・・、

あ~!朝ドラ『エール』でコロンブスレコードの杉山さんを演じてた人だ!

俳優さんてマジ素晴らしい!杉山さんのツンデレぶりも魅力的でしたが、

全く別キャラの綾乃ちゃんの素朴な可愛らしさにも魅力を感じました。

本作では綾乃は数少ない“謎めいてない”キャラクターでして、

つまり、そういう人もいないと感情移入ができないのですよ。

 

そして、佐藤浩市さん演じる朝比奈は・・・。

ここまで謎めいた人物が多いと、最初から容疑者の雰囲気プンプンなので、

この人、本当は違うんじゃないかなと、逆に分かりやすくなる残念な描き方。

で、本当の主犯が判明したら、今度は犯人がイデオロギーを語りまして、

本作の真のテーマはそこだったのかぁ・・・と思えなくもないのですが、

その前のミステリーが、せっかくのイデオロギーの訴えを薄めてしまってる。

爆破の緊迫感、ミステリー、イデオロギー、全て中途半端な印象です。

 

一つ一つのシーンの行動にも「あれ?」と思う点が幾つかあり、

本当はそれはそれでアリともいえる行動なのかもしれませんが、

「エレベーターがすぐに来ないのはよくあることじゃないですか?」とか、

「私は刑事じゃないけど、そんな銃の使い方は変じゃない?」とか、

「もう一度チャンスを!と言うのなら見届けなくていいの?」とか、

「これでは総理は何も変わらないですよね」とか、

もういちいちツッコミを入れたくなってしまって仕方がなかったです。

正義云々の件は、もう私にとっては今さらのテーマですし・・・。