映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』 | 牧内直哉の「フリートークは人生の切り売り」Part2

映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』

『宇宙でいちばんあかるい屋根』

(上映中~:TOHOシネマズ高岡)

公式サイト:https://uchu-ichi.jp/

 

14歳の女の子つばめは、両親と3人でごく普通に暮らしているようでしたが、

実の父と血の繋がらない母との間に赤ちゃんが生まれることを知り、

自分は家族になれるだろうかという不安や疎外感を抱えていました。

そんなある日、通っている書道教室があるマンションの屋上で、

それまで見たことのない、ド派手だけどどこか薄汚れた老婆と出会います。

その老婆「星ばあ」がキックボードに乗って空を飛ぶ姿に驚きながらも、

不思議な雰囲気を漂わせる彼女に次第に心を開き、

恋や家族の悩みを相談するつばめでしたが、実は星ばあにも悩みがあり・・・。

 

先日のごりやく寄席の帰り、TOHOシネマズ高岡で鑑賞しました。

何か時間の合うものを・・・と劇場に行くまで存在を知らない作品でしたが、

いや~、ほんわかと心地良くなれる映画でございました。

野中ともそさんの同名人気小説(例によって原作未読です)を、

新聞記者の藤井道人監督が清原果耶さん主演で映画化したものです。

 

藤井監督、こういう作品も撮られるのですね。

演出が上手いなと思うのは(原作もこうなのか不明ですが・・・)、

星ばあが空を飛んでるシーンは水たまりに映ってるだけなんです。

それを見たつばめが「飛んでる!」って。

つまり、本当に飛んでるのかどうかは分からないんですね。

 

星ばあは「歳くったらな何だってできるようになるんだよ」なんて言ってます。

つばめが片想いしているお向かいに住む大学生の亨くんに手紙を出したけど、

恥ずかしいので読まれる前に取り返したいという願いまで叶えます。

あれ?このお婆さんは魔法使い?

「いつも空を飛んでるから、たくさんの屋根を見ている」とは?

でも、その後の話が進むにつれて、ん?普通の人?とも思えちゃう。

桃井かおりさんが例の(?)調子で飄々と演じておられます。

たまたま本作を鑑賞する前日のBSテレ東での『男はつらいよ』が、

桃井さんがマドンナの回でして、面白いタイミングで鑑賞できました。

 

その桃井さんとやり取りしている、つばめ役の清原果耶さんが素晴らしい。

彼女を観るのは初めてではないですが、全出演作を観たわけでもない。

その上で申し上げるなら、普段の役より笑顔が多かったです。

でも、やっぱり悩み多き少女役なので憂いの表情も見せている。

その振り幅が絶妙な感じがしました。そもそもが可愛いし!

映画自体、清原さんの魅力を前面に出すべく撮られていたように思います。

 

印象的だったシーンは、つばめが両親に悪態をついたところ。

お父さんはつばめをしからず、「お母さんに謝りなさい」と優しい口調で、

むしろ、お父さんの方が謝っている体で言いました。

演じている吉岡秀隆さんも、葛藤する少年・青年役が多かったですね。

周りの俳優さんも皆さん素敵で、お母さん役の坂井真紀さんもですが、

亨くんを演じた伊藤健太郎さんが、いかにも幼い頃からの付き合いで、

つばめちゃんが憧れちゃいそうな好青年って感じを上手く出してました。

 

もう一人、山中崇さん演じる書道教室の先生も印象的でした。

つばめに限らず、どの生徒が書いている文字も褒めるんです。

「お~、力強さが良いですね。『後悔』という文字とは思えない力強さ」

僕が言うと嫌味っぽくなりそうですが、この先生には素直に褒めてる。

先生、ぽちゃかわの生徒さんとお幸せに(^^♪

 

さて、星ばあの、

「後悔は行動してからしろ」「時間はもっと気持ち良く使え」など、

数々の名言に後押しされて、少し成長したつばめちゃん。

今までは自分のことだけで悩んでいましたが、

徐々に他人のために、そして、星ばあのために行動するようになります。

そう、彼女は気持ち良く行動するようになったんです。

 

そして、つばめと星ばあの別れも必然的に訪れます。

最後のやり取りは、最初は星ばあが馬鹿にしていた糸電話。

でも、我々はつばめの声しか聴くことができません。

こういうところも、星ばあって結局・・・となるファンタジーなんですね。

「宇宙でいちばんあかるい屋根」って、いろんな意味が考えられそうです。

ラストシーンの水墨画、もう少し長く眺めていたいと思いました。