映画『犬ヶ島』 | 牧内直哉の「フリートークは人生の切り売り」Part2

映画『犬ヶ島』

犬ヶ島

(上映中~:TOHOシネマズファボーレ富山)

 

今から20年後の日本のメガ崎市。ドッグ病(犬インフルエンザ)が蔓延し、人への感染を危惧した小林市長が全ての犬をゴミ島に追放処分にした数か月後、ゴミ島は「犬ヶ島」となり、怒りと悲しみと空腹を抱えた犬たちがさまよっていました。そこに一人でやってきたのは市長の養子で、父に親友だった飼い犬を捨てられた12歳のアタリ君でした。という展開のストップモーション・アニメ映画。

 

グランド・ブダペスト・ホテルムーンライズ・キングダムのウェス・アンダーソン監督がまたまた個性的な映画を!彼が敬愛する日本がふんだんに描かれています。特に黒澤明監督の影響を多分に受けているようで、黒沢作品の常連俳優を感じさせるキャラクターや『七人の侍』のスコアも流れていました。

 

そういえば、レディ・プレイヤー1も2045年が舞台なので時代的には近く、あの作品も日本文化てんこ盛りでしたね。いやぁ、日本て凄いんだなぁ♪と短絡的に喜ぶのは間違い。日本国自体や全ての日本人が凄いわけじゃない。名作や文化を生み出した人たちが凄いんです。

 

それは本作を観れば感じることができます。日本だけではないのかもしれませんが、日本が抱えている社会問題みたいなものが浮き彫りになっていました。ゴミ島に廃棄されているものは「犬」だけではないんですよ。そして、人間の傲慢さも描かれています。

 

悲しいのは、ゴミ島に捨てられた犬たちは、人間たちにあんな目に合わされているのに、「自分たちにはご主人様が必要だ」なんて考えているんですね。これ、犬が鑑賞したらどう感じるんだろう。犬は労働者階級の比喩なのか、そうではないのか・・・。ご主人、政治家、経営者などのあり方についても考えてしまいます。

 

素晴らしいのは、それを全体的にはコメディに仕上げていることです。もちろん、ブラックユーモア率は高いです。僕は素直に笑いました。アニメの動きもコミカルで、細かい映像やテロップの遊びも多く、何回かしばらく映像を止めて、すみずみに何が書いてあり描いてあるのか、一つ一つじっくり楽しみたかったです。

 

そして、声のキャストがあいかわらず(?)の超豪華。本作では日本人俳優も多数出演しています。この人たちで実写を撮ったらギャラはどうなるんだろうか・・・と、ゲスなことまで考えてしまいました。その豪華さはここではもう書きませんが、いろいろ確かめたかったので、鑑賞後にパンフレット買っちゃいました!

 

犬も人もキャラクターは母国語を話すという設定なので、字幕版で観た方が日本語と英語の違いが分かって面白いと思います。エンドロールも英語と日本語の両方で表記されてまして、細かいところまで演出が行き届いています。そんあこんなで、ウェス・アンダーソン監督の才能に嫉妬してしまう面白さでした。