映画『リズと青い鳥』 | 牧内直哉の「フリートークは人生の切り売り」Part2

映画『リズと青い鳥』

リズと青い鳥

(上映中~:TOHOシネマズファボーレ富山)

 

高校の吹奏楽部でオーボエ担当の鎧塚みぞれとフルート担当の傘木希美。希美との時間を過ごすことが幸せなみぞれと、1年生の時に一度退部して戻ってきた希美の3年生最後のコンクールでの自由曲は「リズと青い鳥」という童話がもとになった曲でした。第3楽章では掛け合いのソロがあるのですが・・・。

 

「響け!ユーフォニアム」シリーズのスピンオフみたいな作品。だったということは最後になって知りました。知っていたら、シリーズを全く知らないので観なかったと思います。でも、知らなくて良かった。面白かったです。山田尚子監督ほか、京都アニメーション制作の聲の形(印象的)と同じスタッフさんの作品です。

 

言われてみればシリーズだな・・・ということは、後輩の子の言動や、OGの部長の名前が出てくることでも察しがつきます。でも、本作だけでも理解できたというか、もともと設定や台詞などの情報は少なく作られていて、観る側が能動的に理解しようと思いながら鑑賞するタイプの作品なのです。

 

根本的な世界観として「リズと青い鳥」という童話も水彩画調で描かれています。最初、「リズの声の人、あんまり上手くないな・・・」と思っていたんですが、勘違いでした。途中で「青い鳥と同じ人が演じているんだ。青い鳥は下手じゃない。リズは童話調に演出されているんだ」と理解しました。本田望結ちゃん、さすが!

 

童話がみぞれと希美の世界に重なっていきます。ソロパートがある以上、みぞれと希美のどちらかがリズで、もう一方が青い鳥です。まぁ、これは最初から分かる人は分かるのでしょうが、序盤は単純に考えれば逆でして、それだって間違いではなく、最終的には上手く結論付けているなと思いました。

 

吹奏楽部の映画ということもあるのか、全ての音を丁寧に作り上げています。演奏だけでなく、廊下を歩く靴の音、髪の小さな音、遠くから聞える何かまで・・・。そして、圧巻は最後の練習での演奏でした。私、そこまで音楽に造詣ないですが、そこまでとの違いは明らかで、この演奏の想いが伝わってきました。第3楽章だけなんだけど、本番じゃなくて練習なんだけど・・・、ウルッと来ました。

 

最初はゆったり時間が流れ過ぎて、「これで90分、なにを描くの?」と思ったのですが、実はテーマを一つに絞り込んだ短編的雰囲気で、逆に90分も不要な話ではありました。でも、ダレた感じは一切なかったです。

 

「好きだから・・・」の後に続く想いって難しいですね。でも、だからこそ物語にすると面白い。こういう、微妙な暗さと青春が混在した世界や、ちょっとした戯曲解釈が楽しめる作品が好きなんです!そして、先日のクレヨンしんちゃんの感想でも書きましたけど、本作も道徳の教科書代わりに鑑賞してはどうかと思いました。