映画『風の色』 | 牧内直哉の「フリートークは人生の切り売り」Part2

映画『風の色』

風の色

(上映中~:TOHOシネマズファボーレ富山)

 

 東京で一人暮らしをしている青年・涼は、恋人ゆりが亡くなって100日間引きこもっていましたが、思い出の品々を整理していく中でマジシャンになることを決意し、実際にプロになります。そんなある日、自分と生き写しの人間がいて、しかも伝説のマジシャン隆(りゅう)であることを知った涼は、生前のゆりの言葉に導かれるように北海道へ向かうと、その旅の途中でゆりと瓜二つの女性・亜矢と出会う。・・・という展開です。

 

 日本が舞台でキャストも日本人ですが、監督は『猟奇的な彼女』のクァク・ジェヨン監督です。確かに物語そのものは韓流ドラマっぽかったです。って、あんまり観てませんけど。韓流ドラマって昔の大映ドラマっぽいところもありますよね。あれが今風になったような感じです。思いのほか面白かったです。

 

 主役の古川雄輝さん。最近、アジア圏でも活躍しておられるそうです。色白なイケメンくんで冬の北海道に似合っていたような。ヒロインの藤井武美さんは、失礼ながらとび抜けて美女とは思わないのですが、ゆりと亜矢とで同じ顔なのにメイクなどで雰囲気の違う同じ人(変な表現ですね・・・)になっていて、やっぱり女優さんは凄いな・・・と。竹中直人さんは、すごく“らしい”感じの役でした。

 

 隆は大脱出マジックに失敗して海の底なら、ダイバーが潜って発見してるのでは?これ時間軸合ってます?特急オホーツクがいつも北見駅で長時間停車する理由が・・・。など、ツッコミどころは挙げていくとキリがない(僕の理解不足もあるかもしれませんが・・・)です。「今度会った時はレオンとマチルダだよ!」って、レオンだったら死んじゃうけど良いの?

 

 でも、なんだかとても面白かったです。涼と瓜二つの隆。ゆりと瓜二つの亜矢。ドッペルゲンガーか否か、ドッペルゲンガーだとしたら・・・の解釈が僕には斬新で新鮮でした。展開に都合の良さも感じましたが、大映ドラマもそんなところを含めて面白かったもんな~!新鮮だけど懐かしい、そんな映画でした。

 

 映画の“遊び”も効いていたように思います。クァク・ジェヨン監督の過去作のポスターがこれ見よがしに貼ってあったり、『レオン』のシーンも楽しく演出しています。ヒロインの兄が綾瀬はるかさん主演映画のエキストラって、僕の彼女はサイボーグがらみですよね。あの作品がらみで、今は謹慎中の俳優さんもチラッと映っていたような気がするんですが、見間違いかなぁ・・・。

 

 北海道の映像って魅力的ですよね。今作は冬の景色ばかりなので寒そうでしたが、だからこそ撮れる砕氷船のシーンが目に焼き付きました。でも、北海道は夏も良いんですよね。小学生の時の家族旅行で列車から観た広い広い大地の眺めを思い出したりもしました。

 

 涼も隆もマジシャンです。どんない凄いマジックでも、マジックである以上、そこにタネも仕掛けもあります。でも、僕はそれを見破ってやろうとか、タネがあるんだからとか、そんなことは考えずに、目の前に起きた不思議な世界を素直に楽しむのが良いと思っています。そんな中で、小市慢太郎さん演じるマジシャンの講釈が興味深かったです。ふ~む、この世の全ての存在はマジックなのかもしれません。