8月7日(土曜)仙台は晴れ

本日でクランクアップする予定の日。

昨日撮りこぼした糖度の高いシーンが朝一からある。「糖度」とは泣けるような感動的なシーンと考えられたい。

千葉雄大とは事前に「どうする?こうする?」という話し合いをすることなく、芝居のみで対話出来た。ま、普通そうだと思うが。撮影の場合、しかも感動的なシーンで「俺はこうやるから、君ははこうしてくれ。」ということはまずない。そんなことをする奴はバカだと思われてしまう。
今回の高糖度のこのシーンは、はっきり言って千葉くんに引っ張ってもらった。彼は段取りの時からしっかり気持ちを作っていた。




感動と言えば…
その昔、ある旅系の感動番組に出たその人は、丸一週間の撮影行程を最悪の気持ちのまま終えたという。自ら志願して番組に出演、半端じゃない僻地へ行かせてほしいというリクエストも叶えられ、念願の非文明圏に行けた。
初日に風邪を引き、身体中ダニに食われ、当然風呂にも入れず、足下はなんの糞だかわからない糞だらけ、目の前で撲殺された家畜の金玉を食べさせられる。そんな生活も終わりの日、正直「もう帰れる。」と思ってたところにディレクターから「お世話になった方々を泣かせてほしい。」と言われたそう。仕方ないので、本当にイヤだった気持ちを素直に出して泣いてお別れしてみたら、先方がうっかり泣いてくれた。

その人は言う。

「私が持っていったノートとかボールペンとかみんなあげてきた、しかし、本当にあれで良かったんだろうか…。」と。
文明にまったく接したことのない人々の生活に踏み入り、文明品を見せつけ、土地や人心を乱すだけ乱す。本当はイヤで泣いたのに、日本語のわからないからうっかり泣かされてしまった現地の人の気持ちはいかばかりか。すべては文明人の消費する「感動」のために。

大昔は現地の生産品をせしめ、本国へ売るという貿易をやっていた時代があった。今の時代は「感動貿易」時代か。取引されるのは「現地のピュア」。




今回はあるお宅をロケ場所としてお貸しいただいて撮影している。「感動」のために荒らしてお返ししたらどうしようもない。立つ鳥跡を濁さずをスタッフらにも促す。我々は感動を売る卑しい人々だと謙虚に思っていた方が良い。





19時、無事クランクアップ。

スタッフの呼んでくれたタクシーが迷子になるという珍プレーもあり、予定より遅めの新幹線で帰京することに。

共演者ら、監督はじめスタッフと再会を誓い、散開。



23時半帰宅。
起きていた長女、起こした妻としばし話しながら一杯。