国際協力調査会益益PTは0750から。健康・医療戦略について、UHCナレッジハブについて「科学技術振興と国際協力:ミッションアプローチを通じた科学技術振興の可能性(パンデミック対応を事例に)と日ASEANの新たなSTI連携」をテーマに政策研究大学院大学の有本建男客員教授と、東京大学の城山英明教授からお話をうかがいました。

WHOの推計ではSDGsの保健分野での目標を達成するためには、年間371億ドルの資金が不足しています。医療機器市場規模はアジアで2030年に2173億ドル、アフリカで231億ドルにまで大きくなっていくことが見込まれていますが、国際公共調達国別シェアを見ると米国13%、フランス6%、ドイツ4%、イギリス2%、韓国3%、中国13%に比べて、日本は0.5%でしかありません。アフリカにおける日本の市場シェアは平均2.2%という状況です。

アジア健康構想、アフリカ健康構想、グローバルヘルス戦略を一体的に推進する中でODAや公的枠組みでの国際協力に加え、日本企業の海外展開や国際公共調達の拡大を通じて、アジア、アフリカ等の保健課題解決に貢献することを目指しています。民間ベースの連携プラットフォームの構築、海外の投資家・企業との連携も重要だと考えます。国際機関への資金貢献に比して、調達先として日本企業・製品が少ないため、現地ニーズに合わせた製品の供給、販路、アフターサービス等を十分に実施できる企業を増やしていく必要があります。

各有識者からは、パンデミックを経験し、ヨーロッパでは科学的好奇心や学術的評価に加えて、政策的効果も考えることができる新しいタイプの科学者の必要性が上がってきている、とのご指摘もありました。マルチセクターでマルチアクターとして複雑な社会技術システムを対象に具体的な社会課題への取り組みを進める、グローバルヘルス分野におけるミッション志向型アプローチの可能性として、開発途上国の臨床試験能力、規制能力強化のために、相手国や国際組織等を巻き込むことが挙げられています。議論の中で出てきた一例が結核。海外から日本で仕事をされる方が結核に罹患されていることがあり、その対応に各地域の医療機関等があたらなければならないそうで、日本の高い知見を持ってグローバルに貢献していくことで、国際益にも国益にも叶うとイメージが共有されました。

人材については、世界的な人材獲得競争激化の中、ASEANは人材の宝庫と言われています。優秀な研究技術人材をどのように日本と繋いでいくのか、アカデミアと産業界との連携協力を通じて、日本で就職できるようにすることも重要との指摘もありました。

また、UHCナレッジハブは途上国の財務・保健当局者の人材育成等を目指しています。設置は来年になる予定ですが、UHCハイレベルフォーラムで関係機関の代表を集めることにも期待しています。UHCという基盤のプラットフォームがないと開発途上国に日本企業がサービスや機器を提供しようとしても、富裕層にしかアプローチできないもの、小さなマーケットになってしまいます。

今日の議論の各論点は面として繋がっているものとして、今後も検証を進めます。