国際協力調査会で新しいPTを設置しました。国際保健から国益と国際益を考えるPT(益益PT)としてアカデミア含めて現場の知見をお持ちの有識者からのヒアリングを行っていきます。

感染症の蔓延を防ぐこと、治療・予防可能な疾病で命を落とす人を減らすこと、健康格差・貧富の格差を是正すること、健康への投資により経済成長を牽引していくこと、は低中所得国はじめ国際的な利益といえます。これは日本にとっても、国際的健康上の脅威から国民を守るという意味で国益ですが、のみならず、国際保健分野でのルール作りやイノベーションをリードする、グローバルサウスに同志国・パートナーを増やすという、という観点でも国益に通じるものです。外交の柱である「人間の安全保障」を具体化し、UHC(ユニバーサルヘルスカバレッジ)のリーダーとして今後も国際貢献を続けるべく、活動を重ねてまいります。今日が初回会合。


パンデミックが次また起こったらどうするか、100日以内にどのように臨床治験をするか、国際的な議論が進んでいます。

官民連携も重要であり、國井修GHIT Fund CEO兼専務理事からコロナの状況を振り返って頂きました。1980万人がワクチンによって直接的に回避された死亡者数ですが、さらに診断を急ぎ治療薬を届けることで救われる命があります。実は、日本の企業は100日以内に迅速検査を開発できていたのですが、中小企業であった為大量生産が難しいとなり、結局他国の商品がWHOによって大量に購入されることになった、というエピソードが紹介されました。


日本国内での育成では経験値の創出に限りがあるので、国外で経験を積み、データ、戦略・アプローチの能力構築をする必要があります。米国、中国、インドのみならず、韓国ではアフリカで技術供与をしながらデータ集積を進めていること、シンガポールではmRNAは7箇所で生産可能となっていること、インドネシアではオックスフォード大学との研究も進んでいること等をうかがうとパンデミックが起きた場合の初動の準備を着実に進めているアジア諸国の存在に気付かされます。日本が国内外の大学で研究しているものを商品化できるようにする、国際的なファンドと連携・協働することが課題になってきそうです。


塩野義製薬株式会社の澤田拓子取締役副会長からは、MPP(Medicines Patent Pool)とのパートナーシップ契約により、低中所得国へSHIONOGIが開発したコロナ治療薬を提供できるようにし、薬事承認取得後117カ国に供給ができるようになったお話を聞かせていただきました。既存の抗生物質が効かないAMR(薬剤耐性)により2019年には130万人が命を落としたと言われており、対策が進まなければ50年までに年1000万人以上が命を落とすと予測されています。


MPP、GARDP(Global Antibiotic Research and Development Partnership)いずれの組織との契約においても低所得国売り上げからのロイヤリティは徴収しませんが、中所得国における売り上げからのロイヤリティ収入は存在している、とのこと。

ワクチンを国内で廃棄するのではなく国際貢献に結びつけることができないか、開発初期段階から買い上げまでの政府の関与を各国と比較してどのように考えるか、議論をしながら、日本の製薬会社が海外に売りに出るという考え方が必要になってきていることに気付かされます。


コロナでは日本から医薬品提供で貢献をできませんでしたが、今後日本企業の収入にも繋がる国際貢献を戦略的に進めたいと考えています。