UNRWAの清田明宏保健局長からガザの状況について、私が会長を務める国際協力調査会としてヒアリングしました。避難所で「水をくれ」「お腹がすいた」と言われることは今までなかった、と言います。2000人規模の避難所に6000人いる状態になっているので、状況が悪化しています。呼吸器の感染症など病気も蔓延しています。

今回の混乱に至る前から、大人の失業率4割、若い人の失業率7割、大卒でも8割、社会インフラはなく電気は6時間しか動かないような状態が続いていましたが、現在燃料が入って来ないことで海水から水を作る機械、屋上の水タンクのポンプ、診療所が動かなくなる可能性があり、燃料が後1週間もつかどうか、という危機感が共有されました。国際社会にして欲しい事として、停戦、北への支援物資、600台のトラックでは足りないので増やすこと、という指摘がされました。

必要なものを必要としている人に届くのか、という点については、UNRWAとして機能させている、モニタリングによってハマス側に取られるということはない、というお話でした。現状12時間並んでパンを買ったというエピソードもあり、食糧難、生活の困窮による法秩序が崩れることの懸念もあります。既に日本としては毛布、テントなど物資をUNRWAに届けています。

UNRWAへの支援は日本は今年で70周年目になります。上川大臣がUNRWA本部を訪問した時に中学生からかけられた言葉は「14歳の子供から虐殺をやめてくれ、と言われたことは大臣ありますか」これは大臣を通じて私達へのメッセージとも言えます。


つづいて、慶應義塾大学の田中浩一郎教授から人道支援、平和構築の観点からご講義をいただきました。「この戦闘は出口戦略が用意されていない」という指摘もあり、ガザ地区を巡る戦後構想が明確でありません。

116日にはネタニヤフ首相が「イスラエルが全般的な治安責任を恒久的に担う」と発言しているものの、117日はレジブ首相上級顧問が「イスラエルは継続的な占領も統治もしない」と言うなど揺らいでいます。

平和維持軍が駐留する形で国際管理下に置くのか、パレスチナの人による統治にするのか、様々な可能性が考えられています。一方でパレスチナ暫定自治政府へのガザの人々からの信頼はあるとは言えず、ガザ独自の事情も考えねばなりませんし、イスラエル国内の世論動向も注視しなければなりません。

今次紛争で多発し問題になっている事にWCNSF (Wounded Child No Surviving Familyケガをしたり障害を負ったりした孤児が増えてしまっていることがあります。PTSD医療も必要、孤児院の建設、里親の支援、就労支援と将来的には考えて行くことになります。人質解放による停戦が見通しにくく、混沌とした状態が長引いている現状を多面的にヒアリングし、外務省とも共有できたと思っています。