先日デジタル本部デジタルセキュリティPTでオリパラのレガシーについてヒアリングを行いましたが、電子情報通信学会でも別冊特集を組んで、その分析を行なっています。

成功要因はやはり、早期に情報セキュリティマネジメントを確立したことや実践演習を行なったこと、と言えます。また、視覚障がいをもつ筑波技術大学の学生の協力も得てWebアクセシビリティの改善をしたことや、ロボット実況・字幕や手話CG実況を実施したことも東京大会の特徴として挙げられます。ユニバーサルデザインという観点からは、顔認証専用装置にも工夫がされていました。2mを超える長身のオリンピアンから車椅子に乗ったパラリンピアンまで顔画像を同一の装置で即座に高品質に撮像するため、カメラの高さと仰角が計算されていました。また、パワーリフティングや砲丸投げの競技補助にパワーアシストスーツが採用されていましたが、これは輸送部門や、選手村でお水など重たいものを運ぶ時や清掃時にも活用されていたそうです。

競技会場ではワイヤレスマイクのレフリーラジオの干渉(周波数の変更により解決)などはあったものの、1824機のドローンライトショーを成功させたのは安全性とセキュリティのチェックが万全になされていた証だと思います。

また組織委員会基準として、攻撃者が想起しやすい東京2020大会に関するワードを含めたパスワードを使わないこと、パスワードも10文字以上かつ3種混合以上という強固なパスワードポリシーを設定し、大会直前には全職員のパスワードもリセットしていたことも、今後の参考になると考えています。

さらに、テクノロジーオペレーションセンターでは、過去の大会の課題からユーザーからの電話が非常に強いなまりのある英語であったり、馴染みのない名称での問い合わせであったりすることを想定し、最初の受付でユーザーの氏名や所属団体を記録し、その後は発信番号でユーザーの過去問い合わせ履歴候補を表示させるなど業務の効率化を図っていたことも知りました。

東京大会をテクノロジーの側面から振り返るに、全体のアーキテクチャーが構築されていたこと、事前の準備を幾重にも行なったこと、部門毎のチェックと各部門の連携の両方がしっかりとなされていたことが、成功を引き寄せる要素であったと思われます。今後に活かしていきたいです。