3月8日は国際女性デーです。「ジェンダード・イノベーション」という言葉があります。研究や開発の多くは男性研究者が男性のデータを分析して行われてきたと指摘するのは、お茶の水女子大学の石井クンツ昌子先生です。動物でもオスだけで研究していたら見落としていた事実に、メスのマウスの研究で気づいた。発症率や症状は男女によって違うことがある、治療方法や薬の効き目に男女差がある、というのは感覚的には分かるものの、性差の視点がこれまで研究に充分に活かされてはきませんでした。

例えば、骨粗鬆症は女性が経験するというバイアスが存在するため、骨折後の死亡率は男性の方が高いにも関わらず男性におけるリスク評価を見落としがちでした。また睡眠導入剤も服用から8時間後に男性は 3%、女性は15%の居眠り運転を経験したという結果が出るまで同じ量使っていましたが、今は女性は男性の半量にして販売している例もあります。医学療法や薬品の改良に性差解析は必要だと痛感します。こうした解析結果を取り入れてイノベーションを創出することを意識して「ジェンダード・イノベーション」と表現されています。

有名な事例としてシートベルトの衝突実験が挙げられます。男性サイズのダミー人形が使われ、男性にフィットしたシートベルトが開発されてきたため、事故が起きた時に女性の方が重症を負う確率が高いと言われてきました。男性も女性も、高齢者も子供も製品やサービスの受け手であることを意識した研究や開発を進めることで、誰にとっても快適なコミュニティを作れると考えています。