酒の失敗(2) | マキオカのネイチャーな日々

マキオカのネイチャーな日々

山梨県の牧丘に手作りの2区画だけのキャンプ場を作りました。

広い空には満天の星。
ティピィの煙突からはバーベキューのけむりと笑い声。
ハイジのブランコは空まで届きそう。

いるだけで気持ちが和んでいく。そんな不思議なキャンプ場から贈ります。

こんにちは。今日も楽しいマキオカです。

酒を過ごした時の症状にはいろいろなパターンがある。
やたらと愚痴っぽくなる人や、感情の起伏が激しくなり大声を張り上げたり泣き出したりする人、トイレで便器を抱え込む人など、傍で見ていると面白いことこの上ない。

が、お酒の席でのそういった症状を聞かされるのは、醜態をさらした本人としては臍を噛んで死にたくなるほどイヤなもの。
情けを持った大人として、嗤いモノにするのは止めましょう。
・・・ホント、止めてくださいねっ!!(涙目)

最近のわたしの症状は「声が大きくなり(自分の話を聞いて欲しくなる)」「同じ話を繰り返すようになり(何を話したか忘れてしまう)」「やたらゲラゲラ笑い、言いたいことをいい散らし(頭のネジがゆるくなると思われる)」「酒量がある一線を越えるとバタッと寝てしまう」というパターンらしい。

態度がデカくなって、腹を突き出し始めたら要注意。
今後、わたしと一緒にお酒を飲む機会ができてしまった方、ご注意くださいね。
そして広い心でのご対応、よろしくお願いします。

それはそうと。

酒の席での失態は多々あるわたしだが、幸いなことに加齢とともに忘却の彼方へと消え去ってくれている。
ある意味、年を取るってありがたいとしみじみ思う。

が、去年のあの失態だけはまだ生々しく記憶に残っている。

わたしは去年の夏、甲府市で行われたある勉強会に参加した。
会場となったのは、以前お寺として使われていたものに手を入れた趣のある建物。
当然クーラーなどなく、扇風機で涼を取っていた。

勉強会が終わり、そのまま懇親会となった。
その夜はその会場に泊まることにしてあったので安心してお酒を飲むことができる。

美味しいお酒とお食事、そして楽しい仲間。
当然のことながらお酒が進む。

夜も更け、宴会に参加している者は3人の男性とわたしだけになっていた。

この3人の男性、それぞれにとっても魅力的だ。
綾野剛似のAさん、西城秀樹似のBさん、伊勢正三似のCさんだ。
あ、若い頃ね。

3人ともそれぞれ独自の世界でご活躍されている。
(以下、剛・秀樹・正三【敬称略】)

若かりし頃は皆さんさぞかしオモテになっただろうという風貌。
そしてその外見以上に「ここに至るまで人生のしょっぱい水をたくさん味わってこられたのだろうなあ」と思わせる含蓄のある言葉や引き出しが、さらにそれぞれの魅力に磨きをかけている。

この3人を相手に、ゲラゲラ腹を突き出して笑っていた所までは覚えている。
氣が付くと、朝になっていた。

ここってどこだっけ?

一瞬状況が分からず辺りを見回す。
わたしは座布団の上に寝ており、誰かがかけてくれたらしい毛布がかけられている。
扇風機が回り、周囲からは静かな寝息が聞こえてくる。

あれ?足元がスースーする。

不審に思い下半身に手をやると。
・・・履いていない。

わたしはその日、白いズボンを履いていたはず。
なのに下着の感触しか、ない。

慌てて周りを見回すと、脱ぎ散らしたズボンが足元にあった。

額から脂汗が出る。
かすかな記憶の糸を手繰り寄せてみる。

そういえば。
連日暑い日が続いていたが、我が家では扇風機を駆使し、できるだけクーラーを使わないでいた。
熱帯夜の時はベッドも熱いのでコルクの床に下りて横になり、それでも暑い場合は足をベッドの上に持ち上げてできるだけ身体を床に接しないようにして、扇風機にあたって寝ることが多かった。

昨夜も夢うつつの中で、寝室で「暑いんじゃ!」と叫び、汗で肌に張り付いたズボンを脱ぎ棄て、足をベッドに乗せて寝たような・・・。

実際は自宅寝室ではなく、懇親会会場で。
ベッドではなくテーブルに足を乗せ。
3人の素敵な殿方の前で。
しかもパンツ姿になって。

心の底からぞっとした。
わたしはいわゆる「怖い話」は大好きだが、そこら辺にある怖い話よりよっぽどコワい。

いったいどうしたもんか。
誰か、夢だと言ってくれ。
悪寒が走るのは二日酔いのせいなんかでは、ない。

一瞬、口封じのために3人をねらった完全犯罪を目論み、その場で自害して果てる自分を妄想する。

殺気を感じたのか、秀樹が起きたようだ。
ここは酔っぱらい仲間の秀樹にそっと様子を聞くしかあるまい。

絶望を氣取られぬよう、できるだけ明るい声で昨夜の様子を聞いてみる。

秀樹によると、お酒を飲みながら機嫌よく話をしていたわたしは、突然ごろっと横になったと思うと、やにわにズボンを脱ぎ出したらしい。
そしてテーブルの上に足を載せ、グーグーと寝てしまったんだとか。

「オレ、目のやり場に困ってドキドキしちゃったよ」と、心優しい秀樹は言う。

目の前が暗くなり、絶望感に襲われるわたし。
その「ドキドキ」は、コワいものを見た時のドキドキだよね?

妙齢のそそとした女性の寝乱れた姿ならともかく、酔っぱらったおばさんのトドのような寝姿を見たら確かにドキドキしちゃうかも。

しばらくして剛と正三も起きてきた。
剛はわたしに慈悲深いマナザシを向けると「昨夜のことはなかったことにしましょう」と、優しくおっしゃった。

そう。
なかったことにしなくちゃいけないほど、醜態をお見せしちゃったのね。
うな垂れるわたし。

正三はイエスのような哀れみと悲しみに満ちた微笑みを浮かべている。
わたしとはほぼ初対面の彼は、おばさんの所業にさぞかし驚いたに違いない。

うっうっう。
自分が情けないよう。
久し振りに死にたくなったよう。

わたしの心の傷を癒すためか、自分たちのPTSDを癒すためか、ダンディ3人組はわたしを温泉に誘ってくれた。

「いいもんね。こうなったらもうコワいモノなんかないもんねっ。温泉のお湯で記憶と涙を洗い流すもんねっ!!」と、剛の言葉に従い昨夜のことはなかったことにして、皆で温泉に向かったのだった。

その後。
温泉効果か、心の傷も癒え、すっかり開き直ったわたし。

時間が経つにつれ「このオモシロイ話を誰かに聞かせたいっ。そして一緒に笑い合いたいっ!!」という欲望がムクムクと湧きあがり、手近なふんどし息子に話したところ、意に反して、笑い合うどころかしこたま怒られましたとさ。

めでたしめでたし(?)

つづく