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千太郎は「どら春」を辞めた徳江の元を訪ね、徳江の過去、千太郎の過去が明らかになっていく。
あらすじを追えばそういった話だが、この映画の素晴らしさはあらすじではない。
無気力な日々を過ごす店長さんが、徳江さんと出会ったことで変わっていく。彼らがあんを黙々と炊く姿にこそ物語がある。
例えば春に花見客で賑わう公園で、淡々とどら焼きを売る人がいる。あの人にも人生があるのだなぁと、次の瞬間には忘れるのだとしても、その一瞬なぜか切なくなるような、そんな味わい深い映画である。
『あん』
河瀨直美監督
2015年 エレファントハウス
原作
ドリアン助川『あん』
ポプラ社