前回の【出版ロードマップ#18】では、
読者像が鮮明になると企画の軸がブレなくなるとお伝えしました。
多くの方が「読者設定=完成」と思いがちですが、
その先にもう一つ大切な工程があります。
それが今回のテーマである
“読者の悩みを一文で言い切ること” です。
「読者設定はできたけれど、悩みをどう表現すればいいの?」
「この読者は、結局、何に苦しんでいるのか?」
「編集者に悩みは何ですか?と聞かれ、うまく答えられなかった」
読者の悩みは、表面に見えている症状ではありません。
読者自身も気づいていない深い本音にこそ、
その人を動かす核心があります。
多くの人が企画書のこのステップで止まってしまいます。
企画の強さは、
読者の悩みをたった一文で言い切れるかどうかで決まります。
今回はその核心に触れるための視点と技術をお話します。
✅ 理由
なぜ“悩みの核心”を言い切る
必要があるのか
編集者は、企画書でまず「悩みの核心」を探している
出版の現場で編集者が企画書を読むとき、
最初に探すのは
「結局、この読者は何に苦しんでいるのか?」という核心です。
どれだけ構成が整っていても、
どれだけ文章が上手でも、
この“核心”が曖昧な企画は前に進みません。
理由は3つあります。
理由①:
読者にとって"この本が必要な理由"が伝わらない
悩みが曖昧だと、
「なぜこの本が必要なのか」が見えません。
読者の痛みが不明確な企画にはGOサインが出ません。
理由②:
著者がどこを深掘るのか、編集者に見えない
悩みの核心が定まっていないと、
この本がどこに焦点を当てるのか、
編集者には判断できません。
企画書は「どこを掘るか」の地図。
核心がなければ描けません。
理由③:
企画の強さ="悩みを刺す一文"で決まる
出版企画の強さは、
「悩みを一文で刺せるか」で決まります。
その一文が、企画のすべてを支えます。
【症状(表層)だけでは、企画は弱い】
例えば「朝がつらい」。
これは症状で、
これだけでは本の方向性が定まりません。
なぜ朝がつらいのか。
その奥に何があるのか。
核心とは、"読者自身がまだ気づけていない部分"です。
この「深層の1行」を言語化できると企画は一気に強くなります。
✅ 手順
悩みの核心をつかむための
3ステップ
核心とは、
読者が一番痛いと感じている“隠れた本音”です。
次の3ステップで核心は必ず浮かび上がります。
STEP1:症状(表層)を箇条書きにする
-
朝がつらい
-
起きるのが怖い
-
疲れが抜けない
-
胸がざわつく
-
布団から出られない
これはまだ“症状”。
企画書の核にはなりません。
STEP2:症状の裏にある“感情”(中層)を書く
-
迷惑をかけたくない
-
弱い自分を見せたくない
-
誰にも甘えられない
-
こんな自分ではダメだと思う
-
本音を言うと嫌われそう
ようやく、
その人らしい“心の揺れ”が見えてきます。
STEP3:その奥の“思い込み”(深層)を探す
-
私は完璧でいなければならない
-
弱さを見せると価値が下がる
-
役割を果たせない私はダメだ
-
頑張り続けないと居場所がなくなる
ここが読者の悩みを動かす“核心”です。
【3ステップが生むもの】
この3つのステップを行うと、
企画書に書くべき“たった一文”が必ず見えます。
企画はこの一文から始まります。
この深層にテーマが宿るのです。
✅ 例文
実例:悩みを深めて企画を
強くする2つのプロセス
テーマ:「朝の不安で動き出せない40代女性」
ここでは、読者の悩みを実際に深めていくプロセスを2つ紹介します。
● プロセス①:症状→感情→核心へ深掘りする
まず、症状(表層)を書き出します。
・朝が重い
・胸がざわつく
・起きる前から疲れている
・人と話すのがしんどい
・布団から出られない日がある
この段階では、「誰にでもありそうな悩み」が
ただ並んでいるだけです。
次に、感情(中層)へ潜ります。
・迷惑をかけたくない
・弱い自分を見せたくない
・誰にも甘えられない
・こんな自分ではダメだと思ってしまう
・言いたいことを言うと嫌われそう
ここで、読者の“その人らしさ”が見え始めます。
そして最も大切なのが、
深層にある“思い込み”。
・完璧でいなければならない
・弱さを見せたら価値が下がる
・役割を果たせない私はダメだ
・頑張っていないと居場所がなくなる
・前に進めない自分には価値がない
この深層に、本のテーマが宿ります。
これらを統合し、一文にまとめると──
「弱音を見せられない自分に苦しみ、
本当は誰かに助けてほしいのに言えない」
または
「完璧であろうとする思い込みに押しつぶされ、
心が休まらない」
これが“悩みの核心”です。
企画書で書くべき一文であり、
企画の骨格はここから始まります。
● プロセス②:核心が定まることで企画がどう変わるか
悩みの核心が定まるだけで、
企画がどれほど変わるか。
Before / After で比較してみましょう。
【Before:核心が曖昧な企画】
・読者設定:「朝がつらい40代女性」
・悩み:「朝が憂うつで動けない」
・タイトル案:「朝を変える習慣術」・
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章立て:
-
1章:朝がつらい理由
-
2章:朝を整える方法
-
3章:習慣の作り方
-
この企画は、悪くありません。
でも、誰にも"刺さらない"のです。
なぜなら、悩みが浅いから。
「習慣本」は、すでに無数にあります。
この企画には、必然性が感じられません。
【After:核心が明確な企画】
・読者設定:「朝の不安で動き出せない40代女性」
・悩みの核心:「弱音を見せられない自分に苦しみ、
本当は誰かに助けてほしいのに言えない」
・タイトル案:「弱さを隠さなくていい朝
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章立て:
-
1章:なぜ弱音を隠してしまうのか
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2章:"弱さ"の正体
-
3章:心が動き出す習慣
-
4章:人に頼るスキル
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5章:自分を許すという選択
-
核心が定まると、すべてが変わります。
タイトルに魂が宿ります。
章立てが読者の心の動きに沿った流れになります。
メッセージのトーンも「頑張ろう」ではなく
「もう頑張らなくていい」に変わります。
【核心が生み出す5つの変化】
1.タイトルに魂が宿る:
「習慣術」から「弱さを隠さなくていい」へ
。読者の心に刺さるタイトルが生まれます。
2.章立てが自然に決まる:
読者の心の動きに沿った構成が見えてきます。
悩み→背景→方法→未来。
一本線になります。
3.読者へのメッセージが明確になる:
「頑張ろう」ではなく
「もう頑張らなくていい」。
届けるべき言葉が、はっきりします。
4.本文のトーンが定まる:
励ますのではなく、寄り添う。
読者に必要なのは、
応援ではなく理解だと分かります。
5.著者の語るべき領域が明確になる:
習慣論ではなく、心の回復。
著者が書くべきテーマが、
くっきりと浮かび上がります。
核心は、「企画の設計図」です。
✅ NG例
核心を表現するときに
やってはいけない3つのこと
1. 抽象語で終わらせる
例:「自己肯定感が低い」「不安がある」
→ 方向性が曖昧になり、編集者が判断できない。
2. 読者の願望だけを書く
例:「自分らしく生きたい」 → 悩みの“痛み”が見えない。
3. きれいごとでまとめる
例:「前向きになれない」 → 根っこの“痛点”に触れていない。
核心とは読者の“痛み”ではなく、
その奥にある“本音”。
本音に触れたとき、言葉は優しく届きます。
✅ まとめ
企画の強さは“核心の明確さ”
で決まる
読者の悩みを一文で言い切ることは、
企画の軸を決める作業です。
文章の強さは、
核心の深さで決まります。
企画の強さは、核心の"明確さ"で決まります。
読者の痛みと、
著者が届けたい視点が重なったところに、
企画の本質が生まれます。
“悩みを一文で言い切る”という行為は、
読者の心に静かに触れるための訓練でもあります。
その一文こそが、あなたの企画を支えてくれます。
次回予告
読者の“痛み”から“変化”へ向かう道筋を、
どのように章構成に落とし込むのか。
企画の形を整える大切な工程を、一緒に見ていきましょう。
※2026年4月から、
noteで出版メンバーシップ(出版塾)を設立予定です。
どうぞお楽しみに。
✅プロフィール
本を33冊書き、
累計430万部の本を売ってきた 出版プロデューサーの西村真紀です。
出版の実務と「40代からの諦めない人生」をnoteで綴っています。
出版ロードマップ https://note.com/maki_nishimura/n/n87ded8b6db46
40代からの諦めない人生(もうひとつのnote) https://note.com/novel_weasel1557
詳しい自己紹介 https://note.com/maki_nishimura/n/nfdf8f160cd58
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