出版企画書を書くとき、
多くの人が最初に立ち止まるポイントは「読者設定」です。
「読者設定の重要性は知っているけれど、いざやると曖昧になってしまう」
「ターゲットを絞ると読者が減り売れなくなりそうで怖い」
「編集者に"読者は誰ですか?"と聞かれて、言葉に詰まってしまう」
そんな声を、これまでたくさん聞いてきました。
前回の【出版ロードマップ#17】では
「文章→企画書への変換」を扱いました。
今回は、その企画の中心となる「読者設定」。
読者設定は企画の出発点ではなく、
文字通り“企画の核”です。
企画の成否を分ける"読者設定"について一緒に考えていきましょう。
✅ 理由
なぜ読者設定が企画の“核”になるのか
読者が曖昧な企画は、9割が通らない
出版企画が通らない最大の理由は、
読者が見えないことです。
出版の現場で編集者が企画書を読むとき、
最初に見るのは「この本は、誰のためのものか」です。
読者="救いたい相手"
が明確になると、
企画の骨格が自然に整います。
反対に、読者を広くとるほど、
言葉と悩みが薄くなります。
「すべての女性に届けたい」と書かれた企画より、
「朝の不安で動き出せない40代女性」と
絞られた企画のほうが、
編集者は「この本に必然性がある」と判断できるのです。
✅ 効果
読者設定が生む「5つの効果」
読者設定とは「狭める作業」ではなく
「深く届かせる技術」です。
効果①:企画の軸がブレない
誰に届けるかが決まると、
企画が迷子になりません。
章立てに迷いが出ても
「読者が本当に必要としているか」で
判断することができます。
例:「朝の不安に悩む人」なら、
一般的な生活習慣より“心の揺れ”が優先される。
効果②:読者の“痛み”が言語化できる
出版企画は、"悩みの具体性"で決まります。
読者が鮮明になると、
その人の痛みが見えてきます。
痛みが見えれば、それを言葉にできます。
例
・「自己肯定感が低い」ではなく
「朝、鏡を見るのが辛い」
・「気分が重い」ではなく
「朝、ベッドから起き上がるまでに30分かかる」
など“悩みの具体性”で強さが決まります。
抽象的な悩みも、
読者像が明確になることで“痛み”として描けるようになります。
効果③:構成と章立てが自然に決まる
読者の悩み→背景→方法→未来。
この流れが一本線になります。
読者が定まっていれば、
どんな順番で何を伝えるべきか、
迷わずに組み立てられます。
例:第1章で「朝の辛さ」、
第2章で「なぜ辛いのか」、
第3章で「朝を変える習慣」。
余計な章は自然と削除され、必要な章だけが残ります。
効果④:編集者が社内で推しやすくなる
「誰に届くか」が明確だと、
編集者は社内会議で企画を推せます。
「この本は、こういう悩みを持つ人に確実に届きます」と
言えるからです。
「朝の不安で動き出せない40代女性」
という具体的な層が見えると、
企画はぐっと通りやすくなります。
効果⑤:言葉が研ぎ澄まされる
読者像によって、言葉の温度が変わります。
20代と40代では、響く言葉が違う。
男性と女性でも、選ぶ表現が変わります。
読者が鮮明なほど、
言葉は研ぎ澄まされていきます。
例:「頑張ろう」ではなく
「もう、頑張らなくていい」という言葉が、
疲れた40代女性には届く。
読者像が明確だと自然と伝わる言葉が選べるようになります。
✅ テンプレート
読者設定の“5つのステップ”
STEP1:年齢や性別ではなく“状況”から設定する 例:「朝の不安で動き出せない40代女性」
STEP2:“痛み”を3つ書き出す 例:自己否定/朝の憂うつ/未来への不安
STEP3:“痛みの背景”を仮説で書く 例:役割期待、過去の挫折、自己否定のクセ
STEP4:“変わる未来”を描く 例:「朝の始まりが軽くなる」
STEP5:“一人のモデル読者”を設定する 例:「2年前の自分」「相談に来ていた同僚」
この5つで、企画の核が完成します。
✅ 例文
実例:読者設定を深めるプロセス
テーマ「朝の不安で動き出せない40代女性」
ここでは、読者設定をどう深めるか、2つのプロセスで実演します。
● パターン①:広すぎる読者設定 → 絞り込む
最初に著者がやりがちな設定は、
次のようなものです。
Before:「悩んでいる女性全般」
これは広いようでいて、
実は“誰にも届かない”状態です。
なぜなら悩みの具体性がゼロだから。
次に多いのが 「働く40代女性」。
これは一歩前進ですが、まだ企画としては弱い。
-
どんな仕事をしているのか
-
どんな1日を生きているのか
-
何に不安を抱えているのか
このレベルの情報が企画書には必要です。
そこで絞り込むことで、読者像が急に立ち上がります。
【読者を絞ることで企画が強くなる3つの理由】
-
言葉が鋭くなる:読者が「これは私の本だ」と感じやすくなる。
-
編集者が判断しやすくなる:会議で「なぜ必要か」を一文で説明しやすくなる。
-
章立てが自然に決まる:読者の1日の流れが、そのまま企画の構成へ落とし込める。
読者を絞ることは可能性を狭めることではありません。
むしろ“一人に深く届く企画”のほうが、
結果的に多くの人を動かします。
● パターン②:“痛み”を三層で言語化する
読者設定は、単に「読者像を書くこと」ではありません。
「読者の心の動きを深く理解するプロセス」です。
ここでは、読者の痛みを表層・中層・深層の三層で捉えます。
・【表層の悩み】
「朝がつらい」「起きられない」「なんとなく憂うつ」
まず読者が自覚している表面的な症状が見えます。
・【中層の痛み】
「こんなに辛いのは私が弱いから」
「もっと頑張らなきゃいけないのに」
痛みを“自分の責任”として抱えてしう心のクセ。
・【深層の背景】
「私は完璧でなければならない」
「迷惑をかけてはいけない」
役割期待や“べき”に縛られ、
自分を追い込んでしまう背景。
痛みを三層で捉えると、
構成が自然に浮かび上がります。
-
表層=症状
-
中層=思考のクセ
-
深層=背景(根っこ)
「朝が辛い人のための本」ではなく、
「完璧であろうとして疲れた人が、
自分に優しくなれる本」。
読者は、このプロセスを読んでいく中で
「自分でも気づいていなかった痛み」に触れ、
静かに癒やされます。
読者設定は、読者の内面を理解する“技術”であり、
企画を説得力あるものに変えるための鍵です。
✅ NG例
読者設定でやってはいけない
3つのこと
失敗する企画は、必ずどれかに当てはまります。
1. 読者を広げすぎる
「誰にでも届く」は「誰にも刺さらない」。
読者を広げるほど言葉が抽象化し、
企画の必然性が失われていく。
2. 年齢や性別だけで決める
「30代女性」では痛みが見えない。
状況、背景、感情まで含めて描くことで、
初めて企画が立ち上がる。
3. 理想の読者で決めてしまう
著者の“届けたい人”ではなく、
現実に困っている人を設定する。
企画は「救いたい相手」が見えた瞬間に強くなる。
✅ まとめ
読者設定は出版企画の“核”
読者設定は出版企画の“核”です。
読者像が鮮明になった瞬間、
言葉も構成も章立ても自然と揃います。
出版とは、読者の未来を描く行為でもあります。
読者の痛みと、
著者が届けたい視点。
その二つが重なるところに、
企画の強さは宿ります。
あなたが救いたい相手は、誰ですか。
その人の顔を、もう一度、
静かに思い浮かべてみてください。
その人に届ける言葉が、
あなたの企画を支えてくれます。
それが出版の本質です。
次回予告
悩みの核心を「一文」で言い切る方法
企画の軸を決める重要な工程を、
一緒に整理していきます。
※2026年4月から、
noteで出版メンバーシップ(出版塾)を設立予定です。
どうぞお楽しみに。
✅プロフィール
本を33冊書き、
累計430万部の本を売ってきた
出版プロデューサーの西村真紀です。
出版の実務と「40代からの諦めない人生」をnoteで綴っています。
出版ロードマップ https://note.com/maki_nishimura/n/n87ded8b6db46
40代からの諦めない人生(もうひとつのnote) https://note.com/novel_weasel1557
詳しい自己紹介 https://note.com/maki_nishimura/n/nfdf8f160cd58
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