暴走検察/上杉 隆

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Amazon.co.jp内容紹介:
検察X小沢一郎X週刊朝日、壮絶なバトルロワイヤル!
西松建設事件から土地購入疑惑まで、検察は「犯罪捜査」をしていたのではない。
人事と既得権を死守すべく、小沢一郎に対し「権力闘争」を繰り広げていたのだ
──検察の強大な権力とタブーに挑んだジャーナリストと週刊誌の闘いの記録。
これは週刊朝日に2009年3月から2010年4月に掲載された連載を1冊にまとめたものです。
出版されたのは今年の4月でした。
すぐに図書館に予約した(買えよっ)のですが、順番が回ってくるまで半年くらいかかったワケです。
小沢一郎サンにまつわる「政治とカネ」の問題を中心に、ホリエモンこと堀江貴史サンやこないだ判決が確定した鈴木宗男サンなど、メディアで報道された犯罪の大きさと実際に起訴されたものとの間に大きな落差があった事件について、検察の動きを検証したレポートです。
連載当時、かなり話題になり、週刊朝日の編集長が検察に別件で逮捕されるのでは?というウワサが流れたほどです。
この企画を書いたのはジャーナリストの上杉隆サン。
このblogでも何度となく取り上げているヒトです。
他のメディアと違った視点で社会常識のウソに挑戦しているワタクシ大注目のジャーナリストです。
この本を読み終わったタイミングで、この事件についての一審判決のニュースが流されました。
【郵便不正】村木元局長に無罪判決 検察側構図をことごとく否定 (2010.9.10付け産経新聞)
この事件のことも本に書かれていましたけど、メディアでもここ数日報道されていたのでご存じの方も多いでしょう。
この事件では検察は民主党の大物議員の逮捕を狙っていました。
結局、不正をこの議員に依頼したと検察が主張した日に、この議員はゴルフに行っていて依頼を受けることができなかったというオソマツなハナシをきっかけに、検察が描いた犯罪ストーリーのすべてがうそだったことがわかりました。
この事件は去年のものでしたので、一連の経過がわかる記事はないかと思って探してみたら、産経新聞だけがネット上に載せていました。
【郵便不正】村木・元厚生労働省局長と文書偽造事件の経過 (2010.9.10付け産経新聞)
産経では、一連の報道も関連ニュースとして時系列で掲載していました。
赤字の部分はワタクシのようなシロートさんが見ても検察のウソだったという記事です。
産経新聞トピックス「郵便割引制度悪用事件」 (2010.9.10付け産経新聞)
村木・厚生労働省元局長に無罪判決 大阪地裁9.10 14:04
障害者割引悪用で有罪確定へ 元障害者団体会長6.24 18:40
【風を読む】論説委員・松村雅之 信じがたい特捜の捜査6.15 07:33
守田被告2審も有罪、大阪高裁3.17 16:00
村木元局長の初公判は27日 厚労省の公文書偽造事件1.5 16:13
元厚労省局長の保釈を許可 公文書偽造で大阪地裁11.24 18:41
新たに1人在宅起訴、2人略式起訴6.27 01:06
郵便不正 別の2団体には厳格審査 「凛の会」前後に元局長が証明書決裁6.21 01:39
村木容疑者、接見でも「偽造ありえない」6.20 13:17
証明書発行「然るべくやりました」厚労省元部長が民主党議員に報告6.18 01:22
凛の会、証明書発行前にDM契約 発送期限迫り催促6.17 14:28
国会議員が事務所から厚労省に電話 凛の会メンバーの目前で6.16 14:34
「もう忘れて」厚労省局長が係長にくぎ6.16 13:25
「正式決裁いらない」と局長指示 証明書偽造認識か6.16 02:00
「直接面会して催促」と倉沢容疑者 村木容疑者は「知らない」6.16 01:30
省庁のキャリアシステムが背景か6.15 11:32
厚労省現役女性局長を逮捕 組織ぐるみ犯行解明へ 大阪地検6.14 19:57
厚労省局長を任意聴取6.14 10:31
郵便不正 厚労省局長を一両日中に聴取へ 偽造を認識か6.14 00:03
郵便不正「ノンキャリなので押しつけられた」 厚労省係長が供述6.11 13:33
どうでしょう。
検察や、それに踊らされたメディアがいかにいいかげんだったかをハッキリと表しているみたいです。
検察が違法すれすれの思い込み捜査をする。
↓
関係ないようなヒトまで何時間も事情聴取する。
↓
場合によってはそういったヒトまで逮捕してしまう。
↓
またそれをすぐメディアにしゃべっちゃう。
↓
メディアは裏付けもとらずにすぐニュースにしちゃう。
↓
世間に「あのヒトは悪者だ」という印象を与える。
↓
でも結局はちっちゃな犯罪でしか起訴できない。
↓
そのヒトの悪いイメージだけが残る。
というサイクルはみな共通しています。
今回の村木サンの無罪判決でも、メディアからはお詫び記事の掲載もないし、一連の報道を反省して検証したというハナシも聞きません。
まさに「書き得」状態。
検察という絶対的な力を持っている官庁が暴走するとどうなるか、
メディアがそれをチェックできないとどうなるか、
をこの本は指摘しています。
あとがきに、「ホンマかいなー」ということが書かれていました。
「特捜部に集められる検事には在任中に大きな手柄を立てなければならないという強迫観念があるようです。
ここで大きな事件を扱えれば、検察内での出世はもちろん、退官後も大企業の顧問に迎えられるなど、計り知れないメリットがあるといいます。
(中略)
小沢一郎のような大物であれば「一生食うに困らない」と言われるほどだそうです。」
何度となくこのblogでも取り上げてきました。
メディアの報道を見分ける目を持つこと、それができる教養を持つこと。
それが一層ダイジな世の中になってきてしまっていることを印象づけた一冊でした。