宿泊した西禅院のご住職に、壇上伽藍の中を案内していただきました。

壇上伽藍の場所で最も大きな建立物は大塔といいます。

この近くには同じ形をした大塔と対となる西塔もあります。

高野山を歩いていると、お寺にこの大塔と同じ形をした塔がいくつもあります。

あまり見たことのない形だったのですが、これは大日如来さまが坐禅を組んでいる姿がモチーフになっているそうです。

よく目にする五重の塔は仏さまが立っている様子とのことです。

これも初耳でした。


壇上伽藍には有名な二枚の曼荼羅があります。

私が見たのは大塔の中にある金剛界曼荼羅です。

もう一枚は胎蔵界曼荼羅といいます。

真言密教は宇宙そのものを大日如来という仏さまと捉えているそうです。

そして、この二枚の曼荼羅はそれぞれ描かれている世界が違います。

金剛界曼荼羅は格子状に区切られた図で、仏が悟って行くまでの道筋を表し、

胎蔵界曼荼羅は真ん中に大日如来を描き、仏が悟ってからの世界を表しているそうです。


大塔の中央には大きな仏さまが鎮座しておられますが、これは胎蔵界曼荼羅の大日如来さま。

そして周りを金剛界の菩薩さまが取り囲んでいます。

大塔と西塔の中は、どちらも2枚の曼荼羅を重ねた世界を立体的に表しているので、これを両界立体曼荼羅と呼ぶそうです。

こんな風に両方の曼荼羅を合わせることを芙二(フニ)というそうです。


いや、いや、すっすごい。

初めから空海は2つの世界を重ねるなんてことをやろうとしたの?と思いながら聞くと、実はこのように両界を合わせて立体曼荼羅にしたのは昭和10年に大塔が再建された時からだということです。

それまで二百年間は大塔はなかったというのです。

初めは西塔には金剛界の仏様の世界、大塔には胎蔵界の世界が納められていたけれど、火災でその都度失われた仏さまも多くいらっしゃったとのこと。

なので、再建された時に仏さまをそれぞれの世界ごとに分けずに納めることで、すべてを焼失することを防いでいる意味もあったのではないかと教えてもらいました。


西塔と大塔が今のように両方揃っていることは歴史上は大変短く、いつも火災でどちらかがなかったことが多かったので、どちらかがなくても1つの塔で両方の世界を見られるようにしたのだということです。


はー、すごい。

焼けなかったら混ざらなかった!


そして、描かれた曼荼羅の世界観の解釈もそれぞれのご住職さんごと、つまり人によって解釈が違うということも大変興味深いことでした。

もっとお話を聞いていたかったです。


【お知らせ】 

今月のモダナークギャラリーの日程です。 

11月20、21、27 

スタートは12時からです。 

ぜひご予約ください。 

roxy.emiko@gmail.com