宝塚歌劇雪組新人公演、ご縁あって観劇できました。
新人公演の演出は上田久美子先生。


第二次世界大戦直前のフランス・パリを舞台にした大人の愛を描いた物語『凱旋門』。

出演者は若手の皆さんだけでたった一回の上演である新人公演だからこそ
時代背景を考え
台詞一つ一つの意味を考え
それらを丁寧に、役を通して表現しようとしている若さゆえの懸命さが伝わる新人公演で、胸打つものがありました。




友人が応援している叶海世奈さん。
この作品が退団公演ということで最後の新人公演でした。
髭役が多かった彼女の集大成、亡命者・ビンダー役も髭付きの落ち着いた大人の役で、しかも父親という役柄。
妻と子供を気遣いながら、いつその身に危険が及ぶか不安な毎日を暮らす様子を表現しつつ
大好きだという歌のソロパートが結構ありまして「良かったねぇ」と親戚のおばちゃん目線で見つめておりました。


新人公演主演の縣千(あがた・せん)さんは初主演とは思えない堂々とした台詞回しに立ち姿。
亡命者という立場と不意に恋してしまったゆきずりの女ジョアンに、戸惑いながらも惹かれていく過程が丁寧だなぁと感じました。

本役さんと彼女の大きな違いは「戸惑いながら」という点でしょうか。
学年的なものが影響していると思うのですが、轟悠さんのような大きな器で彼女を受け入れるというよりは
「戸惑いながら」惹かれてゆくように見受けられます。

浅はかなジョアンに「つい」惹かれる…というのも、縣千さんらしさが出ていたのかなぁと。
そしてスーツが似合う宝塚の王道男役さんだなと感じました。



戦争と戦争の狭間で揺れるパリの生活を「私達には浅はかなことが無さすぎるわ」と捉えるヒロインのジョアン。
このお役は難しいでしょうねぇ……と本公演を観ていても感じます。


だって平和な世界しか知らない現代の日本人からすると、その時代のヨーロッパ情勢の複雑やさ、悄々とした人々の生活ぶりなどは、想像でしかないですし。

でもその想像を史実などと絡めて紡いでいき、舞台表現していくのがプロの役者ですよね。
いやー本当にすごいお仕事…。
そしてその作業をまだ経験浅い新人公演でもこなさなければならないのは、大変だろうなぁと。

観劇後の受け取り方が、私にとって月組『グランドホテル』新人公演と似た感覚でした。
あれも時代背景が戦争直前のベルリンで、どこか影を潜めていた日常を描いた作品でしたからね。


華やかな生活を求め、煌びやかな映画の世界での仕事を選択し、男性に居場所と愛を求める…そんなヒロイン・ジョアンを大人っぽく演じた潤花さん。
見た目の大人っぽさがジョアンに似合っていらして、お綺麗でした。
軽薄すぎず、色っぽすぎず、女性としての魅力溢れるバランスの良さを丁寧に演じている姿が印象的です。


あと目を引いたのがアンティーブ場面のダンサーお二人と17場復讐の場面に登場する娼婦役のダンサー達。
キレがあって美しかったなぁ。

素晴らしい新人公演をありがとうございました。