数年ぶりにコクーン歌舞伎、観てきました。
渋谷 Bunkamura 内のシアターコクーンで開催される歌舞伎で、古典歌舞伎の演目を新たな演出で上演する公演です。
今回は「これお富、ひさしぶりだなぁ…」の名台詞が有名な『与話情浮名横櫛』(よわなさけうきなのよこぐし)
ストーリーは検索すれば分かりやすいあらすじがネット上に沢山存在しますが
簡単に言うと、切れぬ縁に結ばれた与三郎とお富の運命的な恋を描いた物語。
いやー面白かった!!
歌舞伎とジャズの演奏が相性良いのだなというのがわかったのも、今回面白かったです。
登場人物の心理描写や雨音などの情景描写を、繊細なピアノやウッドベースなどの音色が表現していて、よりドラマチックに盛り立てていました。
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やはり今作品注目は疾走感が素晴らしい中村七之助さんの【与三郎】
観終わった後、なんか放心する感じ…。
育ちの良い与三郎が、訳あって無頼漢となり、三十四箇所の刀傷の痕を売りものにするゴロツキに成り下がっていく過程が一幕で描かれますが
傷を負ってもはじめは優男だったのが
ものの数十秒間で、表情から歩き方が変化してゆす七之助さんの表現力。
凄かった…
その数十秒で、流れ行く年月と共に「大店の息子・与三郎」から悪事に手を染める「切られの与三」に変わってしまったことを表していて。
いつもは女方の七之助さんが、立役を演ずることが注目されている今回のコクーン歌舞伎ですが
あの数十秒間を観られただけでも、来てよかった…と歌舞伎好きなら心震えると思います。
立役として見得を切るときも文句なく格好良いです!
歌舞伎の「型」ってやはり美しいな…と改めて感じました。
それと、【お富】 を演じる美しい女方・中村梅枝さん。
元は深川芸者の艶っぽさがぞくっとくるほどで、与三郎と惹かれあった一目惚れの瞬間と、再会した時の「目」が印象的です。
二幕ラストの橋の上で佇みながら台詞を発する際の、愛おしく、でもどこか子どもに向かって言うような呆れた感じも醸し出していて…
それが何とも言えず色っぽくて、したたかで、あぁこのお富さんなら次から次へと旦那ができても納得だなという魅力溢れる人物でした。
私、この作品を観て一番心に残ったのが梅枝さんのお富さんだなぁ…。
同性には好かれないかもしれないけれど女感の高いお富さん、梅枝さんならではのお富さんかと思います。
古典のイメージが強い梅枝さんですが
だからこそ、コクーン歌舞伎という舞台で女方ならではの「型」の美しさがより一層引き立つのでしょうね。
素晴らしい舞台でした!!
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これから観劇される方、ファンの方はもうご存知かもしれませんが、このインタビュー記事、面白いです。
予習に是非。
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中村七之助 × 木ノ下裕一対談「木ノ下さんは歌舞伎の本質が分かっている人」コクーン歌舞伎『切られの与三』
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