銀座『日本歳時記 壬生』


お食事を頂く日本料理店と言えばそれまでですが、

他に類をみない日本の歴史と文化も学べる大切な勉強の場です。


毎月訪れるたび、

女将さんから、


「会員じゃなきゃ、うちの門をくぐれないんだから、

若い人なんて来れないんだから、

まりちゃん(なぜか、私の「壬生」名です)が代表して、

まりちゃんと同世代の人達に、

うちで見たこと食べたこと聞いたことを、

インターネットでもいいから、

ちゃんと伝えるんだよ」

と肩を叩かれながら、

力強くおっしゃって頂きます。


ということで、

長くなりますが、

いちいち詳しめに書かせて頂きます。


9月の玄関先には、


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「ほととぎす」が生けてあり、


掛け軸には、

「厄日二百十日」と書かれてます。


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この「厄日二百十日」、

「台風」を意味するそうです。


古来日国では、

「二百十日」は、

暦の上で雑節の一つとして、

江戸時代初期の1656年(明暦二年)に、伊勢暦で初めて使用され、

貞亨改暦(1684年)の際、

幕府天文方に就任した渋川春海によって、

初夏を知らせる八十八夜と共に、暦に記載されたようです。

この雑節は、

立春から数えて210日目の日、

太陽暦では9月1日頃が、

220日目の二百二十日と共に、

台風が来襲する厄日とされています。


よって、

今月の言葉になさったようです。


ちょうどこの前「台風」が来てましたから、

まさに9月最初は、

「厄日二百十日」ですよね。


うまいことできてます。


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お手洗いには、

あの毒性を持つおそろしい「とりかぶと」です。


9月に咲く花なんですね。



さて、

今月のお料理のお題はといいますと、


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「依然残暑」でした。


確かにです。


その残暑に打ち勝つ体を作るお料理が供されるわけですが、

いつも以上に今回の1品目には度肝を抜かされました。


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生、飯


なんと、

真水で溶かれた抹茶の中に、

ついさっき炊き上がった日本米の熱々ご飯が盛られてました。


ご飯の上には、

白砂糖がふりかけてあり、


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抹茶水には、

氷が一つ浮かんでます。


まず、

ビタミンC豊富な抹茶から飲み、

その後、

炊きたてご飯を頂くのですが、

抹茶の苦味と、

ご飯本来の甘みと、

白砂糖の甘みだけの味わいです。


言葉で表現できないのですが、

「白いおはぎ」です。


今の時代は、

敬遠されがちな白砂糖ですが、

昔は高級品でなかなか口にできなかったとのこと。


でも、

私が田舎にいる頃、

もち米に白砂糖をまぶして食べた記憶があります。


当時はあんこが嫌いだったので、

おはぎも、

あんこなしで、

白砂糖ともち米だけで食べてました。


何だかその時を思い出します。


だから、

この抹茶ご飯は、

懐かしくて新しいお料理です。


お料理スタートが、

このデザート風ごはんで、

異次元に来た感じでしたが、

これで胃腸が動き出しました。


初っ端から長くなりましたが、

お次にまいります。


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向、すずき・かれい・貝柱


いわゆるお造りですが、


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周りの氷水に、

わさびを溶かし、

カボス入り醤油を加えて、

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全部かしゃかしゃかき混ぜて、

スズキとカレイを洗いにして頂くんです。


刻んだ胡瓜や菊も一緒に頂きます。


最後は、

具材のうまみが溶け出した氷水を飲み干します。


ご立派なお吸い物です。


これで一気に体の熱が下がりましたが、

続くお椀で、

また体が温められます。


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椀、○


プラチナのお椀です。


蓋を開けると、

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透明なおつゆに、翡翠色の3点が。


揚げ銀杏が、

茄子のベッドに入り、

手前には、

すり潰して葛粉と練られた銀杏餅が浮かんでます。


茄子は、

いったん揚げてあるのですが、

周りの紫の皮を超ウルトラ薄く削ぐことで、

油が入り込んでないんです。


職人のワザと芸術の域を超えてます。


この翡翠トリオの下には、

鰹と昆布のおだしで炊かれた大根がいました。


調味料は殆ど使われてませんが、

苦味・甘味・塩味・酸味・うま味の五味が味わえる究極のお椀です。


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焼、かぼちゃ・かます


南瓜の冠みたいなものがテーブルに運ばれ、


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女将さんが切り分けてくださいました。


蒸しただけの「奈良の三輪山の日本南瓜」とのこと。


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皮は無論、

南瓜の種もワタも薬になるからということで、


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種ごと器に、ポイッとのせられました。


追って、


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南瓜の横に、

「本かますの焼き漬け」が置かれました。


ふっくら潤いのある「本かます」と、

しっとり優しい甘さの「南瓜」の共演は、

ただ「おいしぃ」としかいいようがありません。


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強、白桃・あわび


白桃のスープと、

伊豆寒天のスープが2層になって出てきました。


「まずそのまま飲んで」と女将さん。


正真正銘、桃ジュースです。


どろどろの桃ジュースに、

ちゅるちゅるっとした寒天スープが合わさることで、

舌触りも楽しいです。


するとここで、


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大きな「蒸し鮑」がやってきました。


湯気が上がってます。


この鮑を、


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2層スープにのっけられ、

全てを一緒に頂きます。


こちらも五味を感じ、

冷と温の温度差も楽しめる驚きの逸品です。


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煮、冬瓜


冬瓜の他に、

高野豆腐と伏見唐辛子が合わせてありましたが、

どれも全く味わいが異なってます。


冬瓜は、

鰹と昆布のおだしで炊かれ、

高野豆腐は、

そのおだしに甘みが加えてあります。


伏見唐辛子は、

一滴の油で炒めてあるそうです。


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もちろん別々に調理されてますから、

一見、ごく普通の「炊き合わせ」に思えますが、

とにかく手間隙かかったお料理です。


「炊き合わせ」は、

3つ以上の鍋が必要なお料理です。


これでお料理が終わり、

果物をはさんで、

お菓子へとうつるわけですが、

今回のフルーツは、


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「広島の無花果」でした。


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何にも手を加えてないようですが、


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「え、嘘でしょ」ってほど、

コンポートになったような甘みがあります。


皮ごと頂きました。


無花果は、

食物繊維の宝庫ですから、

お腹のお掃除係としても大活躍です。


そして、

締めのお菓子が運ばれてきましたが、


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この銀の器に入っていたのは、


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「日本のグミ」でした。


葛粉・水・砂糖を練って、

フライパンで焼いたものです。


いわば、「葛根湯」です。


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砂糖が焼けているので、

まるで「綿アメ」みたいな味わいです。

思わず、

「はぁ」とため息が出ちゃいましたが、

これは感嘆のため息です。


『壬生』は、

いつ訪れても、

感嘆で始まり、

感嘆で終わります。


日本の気候はおかしくなりつつありますが、

でもやっぱり季節を感じられる日本です。


そんな日本で生まれ育った以上、

これからも日本を感じ、

自然に逆らわず、

世界の素晴らしいところや、新しさを取り入れつつも、

恵まれた日本の旧き良き伝統食を頂こうと思います。


なんだかんだ言っても、

日本が大好きです。