私はトレーナーやコーチとしての長いキャリアの中で、一般の方をはじめ、野球選手やゴルファーなどの肩や肘、腰や股関節、膝や足などの関節と筋肉をメディカルSTトレーニングやPNFなどで調整してきました。
そのコンディショニングやスキルアップを図る上でで大切なのは、肩であれば、肩のメカニズムを理解することがとても重要なポイントになります。
「なぜ肩を傷めたのだろう」「どうして腱板や関節唇を損傷したのだろう
」「なぜ球速が上がらないんだろう
」「どうしてコントロールが悪いのか
」あるいはプレーンが外れるのかなどの原因を分析したり、動作やフォームを解析する上でも、その知識はとても大切なのです。
これまでのブログの中で、肩関節は姿勢と大きな関わりがあることや、肩甲骨と鎖骨とともに連動して動く機能特性を紹介してきました。
投げる、スイングする要となる肩の強さは肩関節だけでは実現できず、常に複数の関節で投げる、振る動きが実現していることを知っていただきました。
そして、野球での投球やバッティング、ゴルフやテニスのスイングの支点となる肩関節は、解剖学的特徴によって、とても動く範囲が広く、前や上、横や後ろ、そして回すなど、様々なパフォーマンスが実現できる機能を持っていることも知っていただきたいと思います。
その特徴とは、関節を作っている二つの形状から生まれています。その形状は上腕骨頭が球状なのに対して、一方の肩甲骨関節窩は「鍋のふた」のように平たい形状であるという大きな特徴と、上腕骨頭の大きさに比べて、肩甲骨関節窩はおおよそ4分の1と小さいという点です。
上腕骨の骨頭の面積に対して、肩甲骨関節窩の面積がおおよそ4分の1と小さく、不安定になりやすく、ずれやすい。
そうです。肩関節はこれらの特性から動きが大きい関節なのですが、その特性が投げる、振る、支える弱点ともなり、脱臼しやすく、ずれ(亜脱臼)やすいというリスクにもなっていることを理解することは、スキルアップやスポーツ障害予防の点からも大切です。
今回は、その不安定な肩関節を安定させるために、とても大切な役割をしているインナーマッスルについて少し説明します。
肩のインナーマッスル(深層筋)は、肩甲骨の内側に付着している肩甲下筋、背面の棘下筋、上方の棘上筋、下方の小円筋を指し、肩の周囲を被うように、肩甲骨と上腕骨をつないでいる筋群です。
この肩のインナーマッスルの力によって、肩甲骨関節窩に上腕骨をしっかり引き寄せ、安定性を保っています。
【肩のインナーマッスルの図】
肩甲下筋
棘下筋
棘上筋
小円筋
インナーマッスルは肩だけではなく、体の関節部に多く付着し、コアバランスをはじめ、それぞれの関節の動きと安定性を左右する大きな働きをしています。
肩のそれぞれのインナーマッスルには、その外側にあるアウターマッスルがしっかりサポートし、さらに安定力とパワーを発揮できるように総合的に働いています。
肩を主に持ち上げる時(肩外転)に作用する棘上筋をサポートしている三角筋上部線維は肩の上方にあります。
肩の外旋に働く棘下筋、ワキを締める運動に働く小円筋は、腕を振りぬくときにブレーキをかける広背筋がサポートしています。
肩甲骨の前方には主に肩の内旋運動に働く肩甲下筋があります。体の後方に腕を引く時と腕を前に振る時は大胸筋がサポートします。
腕振り動作で代表的なのが野球のピッチングですが、最近では、高校球児でも150キロ前後の速球を投げる投手が現れ、話題になっています。
すごい時代がやって来たものです。きっとその選手の投げ方は合理的で、肩の安定力があって、体のパワーやしなりを上手く体から肩、腕、そして手指に伝え、実現しているのでしょう。
体のパワーを全面的にバネのように手指に伝えるパワーピッチングと言えば、広島の前田健選手、大リーグのダルビッシュ有選手や藤川球児選手をはじめ、多くのプロ野球選手がいますよね。
私がピッチャーを育てていく過程で大切にしているポイントは、肩・肘・手指の正しい使い方と、下半身の安定と上体の回転をスピーディにさせるボディターンと連鎖させることです。
その習得方法として部分的強化にメディカルSTトレーニングやボディターントレーニング、神経筋を促通させる野球PNFトレーニングを取り入れ、総合力を高めています。マウンドに立って投げるピッチャーであれば、腕を安定させる肩のゼロポジションも作りやすく、体のパワーも手指に伝えやすくなります。
しっかりと体幹のバランスを整え、肩のインナーマッスルやアウターマッスルの柔軟性を確保してから、トレーニングをすることが大切です。
詳しくは、私の著書『野球選手の故障予防と投打のバイオメカニクス
』をご覧ください。
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