馳星周『比ぶ者なき』 | たまには跳ばずに観るFOOTBALL

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ブログタイトルは遠い昔よくサッカーを飛び跳ねながら
観ていた名残り。

比ぶ者なき (中公文庫)/中央公論新社
¥946
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図書館が開いてないので、久々に書店でお買い上げの一冊。

書名は「ならぶものなき」と読みます。
主人公・藤原不比等が、日本を藤原一族のものにするという野望達成の過程を描いた歴史小説。
飛鳥・奈良時代を描いた作品は小説でも映画・TVでも実に少数で、ちょっとありがたい。

「ちょい悪党があるきっかけで大犯罪に手を染める」が著者の一つのパターンだったが、それはなし。
史実にある程度沿ったエピソードと、資料が少ないことを利した完全創作の部分がある。
著者の中でうまく落とし込んでいるため、そこまで違和感はない。

あとがき代わりの対談で、話の大筋(?)のもとは大山誠一氏の論を採用しているということが判明。
簡単に言えば、「聖徳太子は時の権力者に作られた虚像」説。
本作でも不比等が天皇の神格化をはかり、さまざまな捏造を行っている。

10年ほど前だったか、すでに歴史の教科書から「聖徳太子」はほぼ消えたと言われた。
が、来年度からの新学習指導要領では復活すると聞いている。
資料研究が進むと二転三転していくのは個人的には面白いのだけど、教師たちは大変だろうなぁ。

『不夜城』の凄さをなかなか超えられず、期待にそぐわぬものも散見された著者作品。
しかし、本作は文句なしの傑作でした。
武智麻呂、房前らが長屋王と対峙するであろう続編が非常に楽しみ。