テレンス・マリック監督の「ツリー・オブ・ライフ」を観てきました。
多少映画の内容にも触れるので、まだ観ていない方は観賞後にお読み下さい。












映画の内容については賛否両輪あると思います。
ただ出演者の演技は本当に素晴らしかった。
テレンス・マリックの演出力というのが、映像と演技に
もの凄く出ていて、その中でもやっぱりブラッド・ピットの演技は
素晴らしい輝きを放っていました。

私は”人間の感情”というものが映画の中で表現すべき一番大事な
ことだと思っています。内に秘める人々の心情に、観客は
一喜一憂し、考え、一緒に2時間という時間を過ごしていきます。

言葉では表現出来ないもの。言葉では表現すべきでないもの。
ブラッド・ピットと息子役の関係性、彼らが何を考え、何を感じているのか。
何故そんな事を言ってしまうのか、何故そう感じ、捉えてしまうのか。

凄く繊細で難しい題材を、丁寧にかつ自然に描いていたのが本当に素晴らしかったです。
彼ら出演者が作りだした”感情”というものが本当に見事でした。


題材やテーマに関しては、様々なものがあって、自分も一度観ただけでは
多くを語れないと思いました。ただひとつだけ強く感じたのが、親の言葉の真意と、
子供の受け取り方。何かで読んだ言葉で非常に興味深い内容を思い出しました。
ハッキリと記憶している訳ではないので、少し言葉が違っているかもしれないですが、
「親を見切る」事の大切さについて書かれていた事です。

「見切る」と言っても「見限る」という意味ではなく、
子供が成長して大人になっていくに従って、自分の親も完璧な人間ではなく、
様々な悩みや苦労を抱えながら必死に生きているという事を理解すること。
という様な内容でした。映画の中でも、息子が父親の言葉に疑念を抱き、
でもそのはけ口がない。そして父親がいない時にそのリミッターが外れ、
自分自身が父親と同じ様な事をしてしまう。

その時に初めて彼は血のつながりというものを感じたんだと思う。


この場面は自分にとっては強く色々と考えさせられました。
ただ、観る人によってはもっと他の部分に惹かれたりもすると思います。
それほど、様々な思想が盛り込まれていた作品でした。

映画というのは、ただ物語を紡ぐだけのものではないと思います。
だからこそ受け取り側の意思というのも大事だと思います。
そこに何を感じ、どう理解するのか。

最近、自分のワークショップでも良く言っているのですが、
ワークショップに来るよりも、一本良い映画を観る方が勉強になると。
ただ大事なのはそれをどう観るかだと思います。
自分達が何も感じずに、ただ鑑賞しているだけなら何も得られないと思います。
でもそれだと勿体ないと思うのです。

この「ツリー・オブ・ライフ」にしても、
テレンス・マリックの人生、ブラッド・ピットの人生、ショーン・ペンの人生、
他にもこの作品に関わった様々な人々の”想い”が映画の中に詰め込まれています。
映画を観る事によって、自分の人生を歩んでいるだけだと理解出来ていなかった
思想等に触れたりする事が出来る訳です。
言い換えれば、自分の監督という仕事も、自分自身の人生が
魅力的でなければ良い作品は撮れないし、素晴らしい役者に興味を惹かれるのは、
演技だけではなく、彼らが作品の中で作り出しているキャラクターの人生に
興味を持つからだと思います。


かなり難しい内容の映画でしたが、様々な事を考えさせてくれました。
やっぱり映画は素晴らしいですね。