夏の終わりに
私の夏は、花火でも海水浴でもなく、夜空に星をみつける事がなによりも楽しみだった。
私が決まって探す星。
こと座のα星ベガ、わし座のα星アルタイル、はくちょう座のα星デネブ。この三つの星を結んで作られる夏の大三角形。この大三角形を見ている時間が一番好き。
それが、私の夏の風物詩。
夏休みも残りわずかとなって、慌ただしく宿題をすませるのが毎年の恒例行事で、それは高校生になった今も変わらない。
私の通う学校は熱心な進学校ではないけれど、それなりの進学率を誇っているから、やっぱりそれなりの宿題もある。
学生の本分は学業なのだから仕方のない事だと思うんだけど。
でも、夏休みくらい息抜きしたっていいじゃない、と思うのは当然の事だ。だって、その為の夏休みなのでしょう。
だから私も人並みには遊んだりした。
友達とショッピングに出かけたりカラオケで声が枯れるまで歌ったり。
それは楽しい時間だったから、今年の夏はそれなりに満喫できている、と自分では満足してるつもりだ。
そんな理由で、今年もやっぱり恒例行事から逃げる事はできそうもない。
『勉強は午前中、涼しい間にすませましょう』なんて、よく言われる台詞だけど私にはとても無理。
私は夜、机の向こうにある窓から夏の大三角形を見ながら宿題に取り掛かる。そうすると、不思議と集中して進めることができる。
曇りの日は最低。
理由はもちろん星が見えないから。
雨なら諦めもつくんだけれど、曇りっていうその中途半端さが私をイライラさせる。
窓から外を眺めても、星一つ見えない暗い夜空ばかりで、そんな日は何かをする気になんてなれっこない。
そんな曇りの日が数日続いて、私もいい加減諦めがついたのか、残念だけど大三角形に見守られる事なく宿題をすませる事にした。
もちろん気分はのらないから遅々として進まない。机にかじりついて公式や文法を頭に詰め込んでも、さっぱり記憶できない。
数時間が経過して、少し気分転換にと近所を散歩してみる事にした。
普段は滅多にそんな事をしないんだけど、今日は何故かそんな気分だった。
部屋着のままで近所を歩くのは少し抵抗があったから、それなりに人に見られてもいい服に着替えて、よし、少し離れた駅前の公園まで歩こう、と決める。
私は女の子にしては歩くのが速い方で、十数分も歩けば駅前の公園に到着する。
少し涼しい夜だったせいか、思っていたより汗をかく事もなく目的地の公園にたどり着いた。
小さな噴水と花壇が敷地の縁沿いに設けられた普通の公園。
私は噴水の近くにあるベンチに座り少し休憩をする。
なんとなく空を見上げてみたけれど、やっぱり星は雲に隠れて見えない。
視線を噴水の方に向けると、そこには一組のカップルが手を繋いでさっきまで自分がしていた様に空を見ていた。雲がなければ、ちょうど夏の大三角形があるあたりを見ている。
しばらくして、男の方が大きな旅行カバンを抱えて駅の方へと歩いていった。
少し名残惜しそうに何度も振り返り、女性にむけて手を振る。女性も小さく手を振っている。
きっと遠距離恋愛のカップルなんだろう、と私はぼんやりと考える。
きっとあのカップルは二人で夏の大三角形を見たかったんだろう。ベガとアルタイル。織姫と夏彦。一年に一度しか逢えない七夕伝説に自分達を重ねていたのかもしれない。それがロマンチックなのかは私にはわからないけれど、きっとロマンチックなんだと思う。そう思いたい。
私はベンチから腰をあげ、よし、家に帰るぞ、と決める。
行きよりも少しゆっくりと歩いて、雲が流れて星が見えないかな、と期待して歩く。
程なくして家に着き、玄関を開ける前になんとなく空を見上げてみた。
夏の大三角形は、まだ見えない。
私が決まって探す星。
こと座のα星ベガ、わし座のα星アルタイル、はくちょう座のα星デネブ。この三つの星を結んで作られる夏の大三角形。この大三角形を見ている時間が一番好き。
それが、私の夏の風物詩。
夏休みも残りわずかとなって、慌ただしく宿題をすませるのが毎年の恒例行事で、それは高校生になった今も変わらない。
私の通う学校は熱心な進学校ではないけれど、それなりの進学率を誇っているから、やっぱりそれなりの宿題もある。
学生の本分は学業なのだから仕方のない事だと思うんだけど。
でも、夏休みくらい息抜きしたっていいじゃない、と思うのは当然の事だ。だって、その為の夏休みなのでしょう。
だから私も人並みには遊んだりした。
友達とショッピングに出かけたりカラオケで声が枯れるまで歌ったり。
それは楽しい時間だったから、今年の夏はそれなりに満喫できている、と自分では満足してるつもりだ。
そんな理由で、今年もやっぱり恒例行事から逃げる事はできそうもない。
『勉強は午前中、涼しい間にすませましょう』なんて、よく言われる台詞だけど私にはとても無理。
私は夜、机の向こうにある窓から夏の大三角形を見ながら宿題に取り掛かる。そうすると、不思議と集中して進めることができる。
曇りの日は最低。
理由はもちろん星が見えないから。
雨なら諦めもつくんだけれど、曇りっていうその中途半端さが私をイライラさせる。
窓から外を眺めても、星一つ見えない暗い夜空ばかりで、そんな日は何かをする気になんてなれっこない。
そんな曇りの日が数日続いて、私もいい加減諦めがついたのか、残念だけど大三角形に見守られる事なく宿題をすませる事にした。
もちろん気分はのらないから遅々として進まない。机にかじりついて公式や文法を頭に詰め込んでも、さっぱり記憶できない。
数時間が経過して、少し気分転換にと近所を散歩してみる事にした。
普段は滅多にそんな事をしないんだけど、今日は何故かそんな気分だった。
部屋着のままで近所を歩くのは少し抵抗があったから、それなりに人に見られてもいい服に着替えて、よし、少し離れた駅前の公園まで歩こう、と決める。
私は女の子にしては歩くのが速い方で、十数分も歩けば駅前の公園に到着する。
少し涼しい夜だったせいか、思っていたより汗をかく事もなく目的地の公園にたどり着いた。
小さな噴水と花壇が敷地の縁沿いに設けられた普通の公園。
私は噴水の近くにあるベンチに座り少し休憩をする。
なんとなく空を見上げてみたけれど、やっぱり星は雲に隠れて見えない。
視線を噴水の方に向けると、そこには一組のカップルが手を繋いでさっきまで自分がしていた様に空を見ていた。雲がなければ、ちょうど夏の大三角形があるあたりを見ている。
しばらくして、男の方が大きな旅行カバンを抱えて駅の方へと歩いていった。
少し名残惜しそうに何度も振り返り、女性にむけて手を振る。女性も小さく手を振っている。
きっと遠距離恋愛のカップルなんだろう、と私はぼんやりと考える。
きっとあのカップルは二人で夏の大三角形を見たかったんだろう。ベガとアルタイル。織姫と夏彦。一年に一度しか逢えない七夕伝説に自分達を重ねていたのかもしれない。それがロマンチックなのかは私にはわからないけれど、きっとロマンチックなんだと思う。そう思いたい。
私はベンチから腰をあげ、よし、家に帰るぞ、と決める。
行きよりも少しゆっくりと歩いて、雲が流れて星が見えないかな、と期待して歩く。
程なくして家に着き、玄関を開ける前になんとなく空を見上げてみた。
夏の大三角形は、まだ見えない。