今を生きる
僕には自慢できるような特技もなければとりわけ優れている才能もない。大きな野心もないし、犯罪に手を染めるような度胸もない。
あるとすれば真っ直ぐに、ただ普通に生きてきた事だけだ。
だから幸せについて考える時に思い浮かぶ事といえば結婚して家庭を持ち、子供が成人するまで育てる事だ。子供が真っ直ぐ育ち一人前になってそれぞれの家庭を持ち、孫の顔を見る事ができればそれでいい。後は、奥さんと一緒に余勢を過ごせれば、それでいい。
大きな夢ではないけれど、それが幸せなんだと思う。僕が愛する人を守る事。真っ直ぐに生きる事。それでいい。
ずっとそう思って生きてきた。
そう、彼女に出会うまでは。
僕が彼女を説明する事は難しい。何故なら、僕は彼女ではないのだから。たぶん、どんな言葉でも彼女を言い表す事はできないだろう。
それでも強いて言うのであれば。
エキセントリック。
それが相応しいのかもしれない。
彼女はよく笑う。
けれどそれは優しいものでははない。誰かが悲しい時、彼女はそれが楽しいみたいだ。
子供が飼い犬の死に泣いていたら、彼女はそれを見て笑う。声を上げては笑わないけれど、満足そうな笑みを浮かべるんだ。
彼女はよく怒る。
けれどそれは一時的なものだ。自身の怒りは不愉快らしい。
誰かが彼女を罵った。彼女を傷付ける鋭利な言葉。
彼女が怒るのは一瞬だけ。それは誰にも知られたくないのかもしれない。彼女の性格ならそれもあり得る事だ。
彼女には善悪の頓着がないんだ。
だから彼女は人を傷付ける事に抵抗がない。自身の楽しみのためなら人だって殺せるのかもしれない。
それとは逆に悪人に手を差し延べて救いを与えるかもしれない。それが自身の楽しみのためなら。
そんな彼女だから、自由奔放に生きる。誰かを傷つける事を厭わない。
自身のためなら、罪を犯す事も厭わない。
そんな彼女を誰も理解しようとはしない。理解してはいけない、と考えるのかもしれない。
誰かが言っていた。
彼女はタブーだと。
彼女は魔女なんだと。
だから誰も彼女に近寄らない。関わりを持とうとしない。触れるなんてとんでもない。現代の魔女。魔女はいつの時代だって狩られてしまう運命だ。
…ただ、僕は知っている。
彼女には涙がある事を。
何故泣いていたのかはわからない。理由を訊いたところで答えてくれるとは思わない。答えてくれたとしても僕に理解できるとも思えない。
それでも、あの時僕が見た涙は紛れもなく悲しみの涙だった。
その瞬間、僕の心は魔法にかけられたかのように取り込まれてしまった。理由なんてわからない。もし彼女が本当に魔女であるならば、僕に魔法をかけたのかもしれない。なんにしろ、僕は彼女に魅せられてしまったんだ。
それからの僕は、彼女のそばにいる事が当然と考えるようになった。彼女もそれを拒んだりはしなかったから、きっと一緒にいたいのだろう、と勝手に考える事にした。
彼女の行動は相変わらずエキセントリックで、僕自身にも理解はできない。けれど、時折僕に見せる微笑みはとても純粋で、そこには魔女と呼ばれる理由なんて見つける事はできなかった。
それでも魔女はいつの時代だって狩られてしまう運命なんだ。
善悪の頓着がない彼女が社会的に不適格であるのは誰の目にも明らかだったし、彼女は危険だと僕だって思う。彼女はやはりタブーだ。それは認めなくてはいけない。
ただ、僕にだって言いたい事があるんだ。
彼女は魔女なんかじゃない。
人間なんだ。
彼女と同じ時間を過ごしていて、なんとなくわかった事がある。彼女は孤独なんだ。寂しかったんだ。けれど、それを伝える方法がわからない。誰かが不幸になれば彼女は自分の寂しさや辛さを皆が理解してくれると思ったんだろう。自分の悲しみは寂しさだ。そう伝えたかったに違いない。だから誰かを傷つける。罪を犯す事で存在を確かめる。
けれど、それが許される世界ではないんだって僕も理解している。
きっと彼女は排斥されるだろう。人間だけど、魔女と呼ばれ咎められるんだろう。それは仕方がない事なんだと思う。世界は彼女のためにあるのではないのだから。彼女は特別ではないのだから。
それでも、誰に何と言われようと、僕は彼女と一緒にいようと思う。
彼女が孤独だとか可哀相だとか、僕だけでもそばにいてあげようだとか、そんな同情や憐憫なんかじゃなくて僕自身の意思で決めたんだ。
彼女は魔女なんかじゃないから、もちろん魔法にかかっているわけでもない。
彼女を守る事。
僕の幸せはそれでいい。
うん、それでいい。
あるとすれば真っ直ぐに、ただ普通に生きてきた事だけだ。
だから幸せについて考える時に思い浮かぶ事といえば結婚して家庭を持ち、子供が成人するまで育てる事だ。子供が真っ直ぐ育ち一人前になってそれぞれの家庭を持ち、孫の顔を見る事ができればそれでいい。後は、奥さんと一緒に余勢を過ごせれば、それでいい。
大きな夢ではないけれど、それが幸せなんだと思う。僕が愛する人を守る事。真っ直ぐに生きる事。それでいい。
ずっとそう思って生きてきた。
そう、彼女に出会うまでは。
僕が彼女を説明する事は難しい。何故なら、僕は彼女ではないのだから。たぶん、どんな言葉でも彼女を言い表す事はできないだろう。
それでも強いて言うのであれば。
エキセントリック。
それが相応しいのかもしれない。
彼女はよく笑う。
けれどそれは優しいものでははない。誰かが悲しい時、彼女はそれが楽しいみたいだ。
子供が飼い犬の死に泣いていたら、彼女はそれを見て笑う。声を上げては笑わないけれど、満足そうな笑みを浮かべるんだ。
彼女はよく怒る。
けれどそれは一時的なものだ。自身の怒りは不愉快らしい。
誰かが彼女を罵った。彼女を傷付ける鋭利な言葉。
彼女が怒るのは一瞬だけ。それは誰にも知られたくないのかもしれない。彼女の性格ならそれもあり得る事だ。
彼女には善悪の頓着がないんだ。
だから彼女は人を傷付ける事に抵抗がない。自身の楽しみのためなら人だって殺せるのかもしれない。
それとは逆に悪人に手を差し延べて救いを与えるかもしれない。それが自身の楽しみのためなら。
そんな彼女だから、自由奔放に生きる。誰かを傷つける事を厭わない。
自身のためなら、罪を犯す事も厭わない。
そんな彼女を誰も理解しようとはしない。理解してはいけない、と考えるのかもしれない。
誰かが言っていた。
彼女はタブーだと。
彼女は魔女なんだと。
だから誰も彼女に近寄らない。関わりを持とうとしない。触れるなんてとんでもない。現代の魔女。魔女はいつの時代だって狩られてしまう運命だ。
…ただ、僕は知っている。
彼女には涙がある事を。
何故泣いていたのかはわからない。理由を訊いたところで答えてくれるとは思わない。答えてくれたとしても僕に理解できるとも思えない。
それでも、あの時僕が見た涙は紛れもなく悲しみの涙だった。
その瞬間、僕の心は魔法にかけられたかのように取り込まれてしまった。理由なんてわからない。もし彼女が本当に魔女であるならば、僕に魔法をかけたのかもしれない。なんにしろ、僕は彼女に魅せられてしまったんだ。
それからの僕は、彼女のそばにいる事が当然と考えるようになった。彼女もそれを拒んだりはしなかったから、きっと一緒にいたいのだろう、と勝手に考える事にした。
彼女の行動は相変わらずエキセントリックで、僕自身にも理解はできない。けれど、時折僕に見せる微笑みはとても純粋で、そこには魔女と呼ばれる理由なんて見つける事はできなかった。
それでも魔女はいつの時代だって狩られてしまう運命なんだ。
善悪の頓着がない彼女が社会的に不適格であるのは誰の目にも明らかだったし、彼女は危険だと僕だって思う。彼女はやはりタブーだ。それは認めなくてはいけない。
ただ、僕にだって言いたい事があるんだ。
彼女は魔女なんかじゃない。
人間なんだ。
彼女と同じ時間を過ごしていて、なんとなくわかった事がある。彼女は孤独なんだ。寂しかったんだ。けれど、それを伝える方法がわからない。誰かが不幸になれば彼女は自分の寂しさや辛さを皆が理解してくれると思ったんだろう。自分の悲しみは寂しさだ。そう伝えたかったに違いない。だから誰かを傷つける。罪を犯す事で存在を確かめる。
けれど、それが許される世界ではないんだって僕も理解している。
きっと彼女は排斥されるだろう。人間だけど、魔女と呼ばれ咎められるんだろう。それは仕方がない事なんだと思う。世界は彼女のためにあるのではないのだから。彼女は特別ではないのだから。
それでも、誰に何と言われようと、僕は彼女と一緒にいようと思う。
彼女が孤独だとか可哀相だとか、僕だけでもそばにいてあげようだとか、そんな同情や憐憫なんかじゃなくて僕自身の意思で決めたんだ。
彼女は魔女なんかじゃないから、もちろん魔法にかかっているわけでもない。
彼女を守る事。
僕の幸せはそれでいい。
うん、それでいい。