うらみわびの
【きょう考えたこと】
第103回
母が再婚することになった。
これに関しては喜ばしいことである。
ただ私にとっては心穏やかではないこともある。
再婚相手の男性はしきりに母に言うようである。
「子供を自立させろ」と。
具体的には私の生活費の一部を母が工面していることが気に食わないようだ。
それもそうだろう。傍から見て20歳を過ぎた息子の生活費を工面している親は異様である。
しかしながら言わせていただきたい。
私は好きでそうなったわけではない、と。
私はうつ症状と向き合っているのだ、と。
現在、少ない時間ではあるが私も働いて給料を頂いている。
そのなかでなんとか自らの生活を成り立たせようと苦労している。
しかし、フルタイムで働ける身体ではないので、いわゆる”自立”した生活とは程遠いのが現状だ。
そもそも”自立”とはなんなのか。この定義を定めないと母の交際相手との対話は難しいだろう。
「自らの働きで得た給料で自給自足の生活をする」という意味であるのならば、現在の私の生活状況は”自立”からは程遠いだろう。
しかし、この”自立”の定義は社会的にある種の危険性をはらんでいるように感じる。社会では「働きたくても働けない」人もいる。「働けない人」というと”完全失業者”というワードも浮かぶ。総務省の労働力調査では2021年4月期の完全失業者数は全国で191万人だそうだ。
視野を少し広げると、働きたくても働けない”未活用労働者”が2020年4~6月期には533万人いたという。同時期の完全失業者194万人を大きく上回る数字だ。
〇未活用就業者
・就業時間が週35時間未満でさらに働きたいと考える就業者
・1ヶ月以内に求職活動をしている失業者
・求職活動をしていないが就職を希望している人等、潜在労働人口
を合算したもの。
ここでの未活用就業者の定義の3つ目、「求職活動をしていないが就職を希望している人等」という”潜在労働人口”というのは一見不思議なものである。就職を希望しているのに求職活動をしていないのはどういうことなのか。これには様々な理由が考えられる。ケガなどで就職困難な状況もあるし、精神的に就職が困難な状況の人もいる。ここで注意したいのは、世の中に「働きたくても働けない」という人がたくさんいる、ということである。
加えて働いていても自分一人では満足に生活ができない人もいる。それは当人の責任なのだろうか。先ほどの未活用就業者のなかの「精神的に就職な困難な」人は、就職した後もすぐにフルで働けるとは限らない。これは当人の責任なのだろうか。
世の中には誰かの助けなしには生きられない人がいる。それは恥ずかしいことだろうか。いや、そうではない。自らが立つ力が十分にないことに絶対的な責任はない。人間とは程度の差はあれど誰もが支え合いながら生きていくものである。
人の”自立”を年収という数値で測るのはひとつの見方である。しかし、これは短絡的な見方というほかない。そこには「自分は稼げて生きている」という自負と、図らずともがな社会的弱者を蹂躙する視点が混在している、と考える。
「自立しろ」と人は言う。
それは「お前のために言っている」と人は言う。
または「お前の周りの人の幸せのためだ」と人は言う。
しかし、本当にそれが当事者の「幸せ」につながるのか。再度考えてみてほしい。
そこに「あいつは怠けている」という考えはないか。「あいつは情けない奴だ」という考えはないか。
もし、そうであるならば言ってくださるな。
なぜなら私自身が一番、自分を「情けない奴だ」と思っているのだから。
これはしょうがないことでもある。うつ症状持ちの人と精神健常者の間には感覚と思考の隔たりがしばしば見受けられる。
一方は「常に死を考えるほど苦しい」ともがきながら、他方では「仕事もしないで怠けている奴だ」と感じる。これが”自然な”ものの見方なのだとしたら恐ろしい。
究極的には本当の”苦しみ”は当人にしか解らないのかもしれない。おそらく母の交際相手には私が無職で過ごした1年間の心の苦しみは解らないだろう。制限付きでも働けている”今”がどれだけ奇跡なのかも。
悪気はなかったのだろう。それでもこれだけは言わせていただきたい。
うつ症状持ちの人に”自立”というワードを持ち出すのがどれだけ危険なことか。よく理解してほしい。
それは当事者が一番心の奥底で気にしていて、気にしすぎていて、それが症状の回復を妨げていることなのだから。
言うなれば米国で他者に対してあからさまに戦争や政治の話をもちだすようなことかもしれない。それだけ”自立”というワードはうつ症状のパンドラの箱を開ける鍵なのである。
先日、久々に私のうつ症状が急激に悪化した。
今日も皆さんが幸せでありますように
今日の一曲♪
6月前半のテーマは「雨」。
『レイニーブルー』(2000)
(歌:徳永英明 作詞:大木誠 作曲:徳永英明)
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