うらみわびの【息抜き】
第81回。
松尾芭蕉『奥の細道』を旅するシリーズ
第9回。
雨にまかれて
芭蕉は遂に宮城入り!
かの松島までもう少し。
そんな芭蕉一行は笠島付近まで来ました。
笠島といえば、藤原実方の塚がある場所。
藤原実方 ・・・ 平安時代の公家
和歌の才能が深く、中古三十六歌仙の一人
『源氏物語』の光源氏のモデルともいわれる
実方は天皇より陸奥守に任ぜられ、東北へ。
道中、笠島道祖神前を通るとき、神前を馬から降りずに通ろうとしたため、落馬。それによって彼は死亡してしまった、という。
それを知った西行法師が実方をあわれみ、以下の詩を報じた塚をつくったといわれています。
朽ちもせぬその名ばかりをとどめおきて枯野の薄かたみにぞ見る
芭蕉はこの西行法師が建てた塚を見てみたかったのですが、道に迷い、しまいには長雨にうたれる、という始末。
とうとう芭蕉は塚を訪れるのをあきらめ、その方向を遠めに見やるにとどめたのです。
このごろ五月雨に道いとあしく、身疲れはべれば、よそながら眺めやりて過ぐるに、箕輪・笠島も五月雨のをりに触れたりと、笠島はいづこに五月のぬかり道松尾芭蕉『奥の細道』「笠島」
芭蕉がどうしても訪れたかった実方の塚、『グーグル・ストリートビュー』で近隣を散策してみましょう。
目の前にあるのは実方橋。
この名前だけでも実方がどれだけ愛されているかがわかりますね。
辺りはのどかな田園風景。
もう一句!
本日は芭蕉による「五月雨」をテーマにした一句を。
五月雨の空吹き落とせ大井川
大井川といえば暴れ川として有名ですね。
雨が降る度に増水を繰り返し、人々の行く手を阻む。
その怒りの念がみられるのが、箱根旧街道、芦ノ湖付近にある石碑。
その「大井川」の文字は深くくっきりと彫られていたのが印象的でした。
芭蕉のこの句について、芭蕉俳句研究家の高柳克弘さんは以下のように述べています。
五月雨に本意は鬱々と降り続くところにあるが、この句はそうした本意に果敢な挑戦を試みた句といえよう。高柳克弘『芭蕉の一句』ふらんす堂(2008) p.83
なるほど。
芭蕉が「五月雨」の季語のイメージからの逸脱によって新たな境地を生み出した一句なのですね。
今日の一曲♪
『Over the Next Rainbow』(2019)
(歌:Saint Aqours Snow
作詞:畑亜貴 作曲:Kanata Okajima / TAKAROT)
明日から3月かぁ。
はやいね。
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