三浦春馬さんが7月18日に亡くなられました。

心よりご冥福をお祈りいたします。

 

 

 大学生時代のことについて思いを馳せます。まだ昔のこと、というには遠くはなっていない私の大学生時代。今と比べるとかなりエネルギッシュだった。疲れを知らなかったね、あの頃は。最近思い出すのは、教育実習が始まる前日。友人とスーパー銭湯でひと汗流して、その後に横浜の大戸屋で食事をしながらお互いの教育観について語り合ったことです。

 大戸屋が揺れています。大株主が提示した改革案に会社側が反対しており、敵対的TOB(株式公開買い付け)に発展することが濃厚となってきました。私個人の考えてとしては、多少値段が高くても店舗内キッチンでの調理にこだわってほしいです。

 

 

うらみわびの「この映画がおもしろい!」第5回。今回は三浦春馬さん、多部未華子さん主演の映画『君に届け』を見ます。

 

 

 

 

勝手に評価表

ストーリー

☆☆☆☆

アクション

☆☆

感動

☆☆☆

 

 

 

いままでに感じたことのない気持ち

「わたしなんかが」って思うけど

この気持ちよ、「君に届け」

 どんな映画?

 黒沢爽子(役:多部未華子)は長い黒髪と暗い雰囲気から物心がついた時から「座敷童」、「貞子」と呼ばれ、現在は「貞子」で落ち着いた。彼女は周りの人の役に立とうと日々奮闘中。座右の銘は「一日一善」。周りと交友関係がほとんどない彼女であったが、高校入学の日に一人の青年、風早翔太(役:三浦春馬)と出会う。各人が胸に秘めた「本音」を打ち明けられずにいることで起こるすれ違いを描いた、甘酸っぱい青春恋愛ストーリー。

 

 ここに注目!

 本作は椎名軽穂さんの同名のマンガを実写映画化したものです。原作は「『別冊マーガレット』(集英社)2006年1月号から2017年12月号まで連載され (略) 2008年第32回講談社漫画賞少女部門受賞作」(Wikipedia)であります。

 本作に登場するのは高校生ばかり。大人との微妙な関りをもちながらも特殊な空間にいる高校生たちが、自分たちの胸の中の「本音」を相手に打ち明けられずにいます。それでいて集団でまとまって行動している。しかし、一対一のつながりが人間の本質なのである。交友もそうだし恋愛もそう。不器用ながらも彼ら彼女らは思う。この気持ちよ、「君に届け」、と。本作はそんな生徒たちの一年間を描いた作品ですが、シーンごとに移りゆく登場人物の心の内面に注目です。

 今から10年前の作品ですが、登場人物が豪華です。主演の三浦春馬さんはさわやかな男子高校生にぴったり! ヒロイン役の多部未華子さんも暗い雰囲気を上手に醸し出しています。どちらかというと明るい役の印象でしたが、すごいですね。さすが役者さん! そして二人を取り巻く女子高生役に桐谷美鈴さんが出演されています。桐谷さんは大人びた役のイメージがありましたが、こういう女子高生の役もできるんだ、と驚きました。

 私事ですが現在、アニメ版のほうも見ているので、それを見終わってから映画版を見ようと思っていたのですが、主演の三浦春馬さんが突然亡くなられたので、このタイミングで見てみようと思い立ちました。アニメ版はかなりのハイクオリティですが、本作もそれに劣らない完成度だと思います!

 

Hulu

配信が終了している作品もあります

 

 

 

ここからはネタバレを含みます。読み進める際はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大作だからこそ・・・

 ストーリー全体としては見ごたえがありました。高校生の甘酸っぱい恋の物語。クラスのいわゆる陰キャがクラスの人気者の男子高校生に恋をする。はじめは自分もその感情が恋だと認識できずに戸惑う。傍にいたいのに、「自分なんかがいると・・・」と思って距離を取ってしまう。そしてクラスという集団が生み出す雰囲気の威力。根も葉もない噂であっても、集団のなかではそれが真実として捏造されてしまう恐ろしさ。この作品はこうして陰陽を上手く織り交ぜて魅せてくれる。

 本作は原作マンガは130話、アニメ版も2nd Seasonまである大作。だからこそ、2時間にまとめるのはもったいない気もする。(贅沢な悩みでもあるが・・・)

要所はしっかりと再現されているが、そこに至るまでの登場人物の葛藤があまり描かれていない。私も現在、アニメ版を視聴中だが、本作を見た方もアニメ版も視聴してみることをお勧めする。

 短い尺のなかで濃いテーマを演じるのは大変なことだ。その意味でヒロイン役の多部未華子さん、ヒーロー役の三浦春馬さんは熱演だった。特に多部さんは自虐的なキャラクターを見事に演じ切った。セリフだけでなく、たどたどしい仕草がリアルで見ていて作品の世界に惹きこまれた。

 

 自己を貫く風早

 風早はすがすがしいほどさっぱりした性格の持ち主だ。彼がすごいのは、周りの観念に流されない価値観の持ち主であることである。暗い雰囲気と引っ込み思案な爽子を「貞子」と恐れるクラス生徒とは異なり、彼は爽子の思いやりのある、でも不器用な性格に気づいており、彼の方から積極的に彼女と接した。自分の見たままを信じること、それは自分を信じることである。そして集団に反対することに対する勇気である。人は集団の中で生きている。集団のなかでは、暗黙のうちに「創意」が形成される。たとえそれが自分の意思に反していたとしても。風早はクラスに漂う「貞子はおそろしい」という「創意」の存在には気づいているが、自分が見た爽子の印象とクラスの「創意」とを天秤にかけ、出た結果に忠実に従ったのである。これは一人の世界では簡単なことだが、集団では難しい。反対するものは集団から排除される可能性があるからだ。だからこそ、風早はすごい。自分を信じていなければできないことだ。

 

 三種類の人間 

 このように自己の視点を信じて貫くことは、他の小説では、『青ブタ』シリーズの梓川咲田がそうであった。しかしある意味、風早は咲田を超えている。なぜなら、風早はクラスの中に溶け込んでいるからだ。

 クラスの創意に反しながらクラスから排除されないのは、彼がそれだけ人望があることを意味している。

 集団で人望を得る人には主に3種類がいると思う。1つは、集団にとって有益な人である、ことだ。その人の能力が集団にとって利益をもたらすなら、その人物は重宝される。たとえ、人当たりの悪い人であったとしても。

 2つ目は、集団をまとめる人である。どんなに個の能力が高くても、それを引き出す能力がなければ意味がない。今年のプロ野球セリーグで若手の多いジャイアンツがなぜ強いのか。それは選手層だけでなく、監督である原辰徳さんの存在も大きい。チームは一つの目標に突き進む時に強い。それをまとめ上げるのがリーダーや監督の存在だ。

 3つ目は集団を癒す人である。殺伐とした集団は居心地が悪い。実力があり、待遇が良くてもそこがブラック企業だと分かれば、就職したくない人も多いだろう。

 一番は、集団をまとめる人、もしくは癒す人になることだ。二番煎じは、集団にとって有益な人になることだ。以前、読んだ記事の中にチーム論について、「利用効用」と「存在効用」という言葉を使う人がいた。

 

  • 利用効用がある人・・・ 仕事のできる人
  • 存在効用がある人・・・ その人がいるだけで場がまとまる人

 

存在効用も突き詰めれば多様なタイプが存在するだろう。例えば高圧的にチームを支配する人もいれば、和やかな性格でチームを和ませながら士気を高めていくタイプ。どれがよい、とは一概には言えないが、チームの特性にあったもの、例えば、日本一を目指すラグビーチームなら、時にはきつく叱り、チームを管理していく人材がよいだろう。スポーツを通して人間を教育していく、という方針のチームなら、厳しい練習よりもスポーツの楽しさを教えてくれる人がよい。

 風早はクラスの皆に気配りができる、癒すタイプの人間だ。だからこそ、クラスからの人望は厚いし、爽子のことをクラスから取り残されないように動く。彼の生い立ちは詳しくは語られていないが、親御さんが彼を大切に育てたことがうかがえる。彼のような性格はあらゆる教育環境で育まれるものではない。それでも、彼のような存在がチームに増えていけば、いらぬことで傷つく人も減るだろう。

 

 クラスのみんなを平等に愛している風早だからこその弱点がある。それは、誰も特別扱いできないことだ。恋愛や告白、それは友人から一歩先の世界に進むということ。他者とは違う特別な関係になるということ。カップルになる、これをいとも簡単にやってのけてしまう人もいる。しかし、これが難しい人もいる。カップルになることで、他者との関係が壊れてしまうこともあるのだ。逆恨みのようにも感じるが、周りの人は「裏切られた」と感じる人がいる。それはその人が「嫌い」だからではなく「好き」だから生じる感情だ。今まで平等に愛してくれていたのに、突然、一人の異性と結ばれる。そのことが心のなかでどうしても許せないのである。「1人の結婚は10人の不幸」という言葉もあるようだ。

 風早は、好きな人と結ばれることがなぜそんなに亀裂を生むのか、疑問に思っているように感じた。恋愛は皆平等にすることができるはずだし、一人の異性に特別な感情をもったところで、他の人たちとの関係が壊れることはないと確信しているからだ。

 一方で、人々との関係の変化に敏感な人もいる。爽子は内心では人の役に立ちたいし、人が喜ぶ顔を見るのが好きである。しかし同時に、自分と関わることでその人の株が下がってしまうことを心配している。だからこそ、彼女は風早に対して自分から距離を取ったのである。「関わることで株が下がる」といえば、同じく『青ブタ』シリーズの上里沙希を思い出す。

 自分から積極的に行くべきか、集団に忖度して自重するのか、これは一概になんとも言えない選択だ。ただ、私が第三者の立場でアドバイスをするなら、「いけ!」と言う。相手との状態は悪くない。見逃し三振よりも空振り三振の方が次にもつながるし、諦めがつくからだ。

 これから二人が幸せになることを願ってやまない。

 

 

 三浦春馬さんに思う

 三浦さんは、仕事に手を抜かなかった人だ。その点に関しては尊敬の念に尽きる。同時に、彼は「休む」ということが苦手な人だった、と捉えている。Wark as Life。日々の食事も手を抜かず、舞台で女性役を演じる際には、家の中でハイヒールを履くという手の入れよう。仕事がプライベートに入り込んでいた。 三浦さんの実力はそのルックスだけでなく、確実な努力によって裏打ちされていた。

 若いうちは努力だけを考えてもやっていける。世の学生は授業と部活で周7日、という人もすくなくないだろう。それでも社会に出ると状況が変わってくることがある。純粋に体力のせいかもしれない。もしくは、職場という環境が予断を許さない独特の空間なのかもしれない。いずれにせよ、「疲れ」を上手くコントロールしていかなければ、持続的な活動は困難である。「休む」ことも技術なのだ。

 

仕事に前のめりになりすぎると、そのことに目がいかなくなってしまう。一方で、「我慢」、「鍛錬」といった自分を追い込む美学が存在するから、自分の疲れを正直に受け止められない。自分の体に鞭をうって頑張ってしまうのである。気づいた時には自分を壊してしまっていることもある。

 どうして自分で止められなかったのか。周りの人が止めてあげられなかったのか。反対にいえば、それほど気づくのが難しいのだ、人間の内面の変化というものは。

 唯一私たちが確実に行えることがある。それは自分が壊れる前に、「壊れる」ということの存在を認識しておくことである。そして、「壊れない」ために「休む」技術、自分の体調の把握、休み方を確立させること。一流のスポーツ選手はケガのリスクも考慮してプレーを行う。躍動するだけでは息の長い選手にはなれない。

 

 三浦さんの突然の死に戸惑う人も多いと思う。私も正直、驚きを隠せない。彼の死を単なる「不可解な死」と片付けるのではなく、彼の死が、人間の内面の「複雑さ」を示していると捉えている。それが突発的だったのか、計画的だったのかは計り知れない。しかし、このような不本意な死が減ることを願ってやまない。

 

 

最後まで読んでくださり、ありがとうございます

 

 

今日の一曲♪

『Breakthrough』(歌:JAM Project 作詞:影山ヒロノブ 作曲:影山ヒロノブ)

圧倒的な熱量で聴き手を惹きつけるJAM Project。時代を駆け抜けて今年で20年なんですね。いままで勇気をありがとう。これからも世界に元気を届けてください!

 

 

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