文化系寄り道倶楽部 -12ページ目

文化系寄り道倶楽部

アラフォーで2児のパパであり、80年代の音楽をこよなく愛し、ガンプラを愛で、パソコンをいじくり倒し、台所を妻から奪い取り、キングの小説におびえ、究極超人あ~るで笑いころげ、夜な夜なUST配信をしている

インディペンデントの音楽家が、曲を作り、詞を書き、演奏し、録音し、編集し、ミックスダウンし、ジャケットを作り、パッケージングして販売する

それを一人でやるとなれば、なんとも途方もない作業のように『改めて』思うようになった。

僕は曲を作ったことも、人前で演奏したことも、録音したこともあるけれど、それはあくまでも、完全自己完結

好きなものを好きなようにやる作業であって、究極的には誰にも聴いてもらえなくてもいいものだった

その意味で僕にとって音楽は趣味であって、生業とはかなりかけ離れたものだった
(『だった』という表現には、そうありたくなくても そうであった、などの未練も大いに含まれるw)

僕にとって、めざすものでも、憧れでも、ましてそれをすることが趣味でもなかった一般に 小説家、作家などという 僕の言うところの「物書き」について、僕の知ることは少ない

何を持って小説家というのか、どこまでが小説家という職業の作業なのか
そもそも出版とは どんな仕組みでなされるのか

僕は素人で、しかも毛が生えていない部類(見た目の話ではなくw)の『すぶの素人』だ
ゆえに、おそらく普通ならするであろう新人として出版社に作品を投稿するなどという 「それらしいこと」については、僕はおそれ多くてできなかった(やってみたけど、手応えのなさが気持ち悪かった)

だから、ブログや小説の投稿サイトに書くことにした
思いついたことをそのまますぐに書き込み 発表するやり方は、実に乱暴で粗暴であったが、僕なりに勝算もあった

ありがたいことにやり始めてすぐに、僕の誤字脱字や表記方法の間違えを指摘してくれる人がいた

なんとも迷惑な話だけれど、僕はブログや投稿サイトの読者に編集者としての役割を丸投げした
(知らないということは恐ろしいことだけれど、時にはそれが強みになると僕は考えている)

それともう一つ
僕の中でも問題がある


執筆を初めて約3年 自分の書いた作品について、ようやく客観的な編集者としてみることができるようになった(まだ十分ではないが)

これは以前、自分の曲を趣味で作ったときに体験したことなのだが、自分の作品を客観的にみるためには、ある程度の時間が必要だということ

おそらくその期間は、経験やもともと持っている素養によって、短縮することは可能なのだろうけれど、僕にはそれを語るべきものが何もない

駄文をネットにさらし続けて、少しずつ手直しをしていく
表に出ているという緊張感と、連作を読んでくれている人がいるという責任感が僕には必要だった

これでよし

そう思って有料化に踏み切る

しかし、アップした途端、僕はすっかりうろたえだした
その時にはみえなかったものがみえ、手直しを繰り返す日々

そして、改めて思う
ようやくスタートラインに立ったのだと

今日 4度目の更新でようやく落ち着くと思われる
でも、まだ探さないでくださいw
前にご紹介した・・・うわぁ、だいぶ日が経ってますねw
http://ameblo.jp/makake/entry-11456382312.html

短編集『週末、公園のベンチにて』
のあとに、短編集『休日、事務所のソファにて』を出しました

この二つの作品集はタイトルからわかるとおり、まぁ対になっていると申しますか……

前者は、リラックスした状態でに妄想から作られた作品
後者は、ストレスの状況下で現実逃避的に妄想して作られた作品となります

$文化系寄り道倶楽部

収録エピソード

第1章 敗北論
 こぎつねと二人の男
 パンツを被る男
 エンディングノート

第2章 魔法少女
 春の目覚め 魔法少女
 夏の終わり 扇風機
 秋の味覚 立ち食いそば
 新しい顔
 冬の朝のデジャブ

第3章 休日、事務所のソファにて
 未来を映す鏡
 億万長者になれるセミナー
 過去を映す鏡



『第2章 魔法少女』は春夏秋冬+1という構成ですが、このうち春のパートは同じものが、短編集『週末、公園のベンチにて』に収録されています

もともと、あるイベント用に書き下ろした作品だったのですが、シリーズ化を思いつき、内容を刷新して魔法少女シリーズとしてこの中に収録しました。
ダークヒロインの誕生です

彼女は特殊な生い立ちを持ち、それによって人でない存在として現代を生きています
彼女の生い立ちに関する物語は『朔夜~月のない夜に』で描かれることになっています(絶賛連載中であり、苦闘中でありますw)

『第1章 敗北論』とはインディーズアーチスト 山作戰の名曲『敗北論』から頂きました
この章では、いろんな形の敗北が描かれています

「こぎつねと二人の男」では、まったく違う世界で生きる二人が出会ったことでの不幸と希望を描いています。

「パンツを被る男」では、落ちぶれた作家の不思議な体験

「エンディングノート」では、偶然事故に巻き込まれた男の奇妙な運命

挫折、失敗、運命のいたずら そういったことがかかれています。

『第3章 休日、事務所のソファにて』には二つの 鏡にまつわる物語が収録されています
ともに時空を扱ったSF作品になっていますが、SFよりも怪談に近いかもしれません
時空を超えたいというのは、まさに現実逃避の象徴
「未来を見たい、過去に戻りたい、人生をやり直したい」が描かれています
その意味では「億万長者になれるセミナー」はこの短編集の中ではもっとも異質かもしれません

SF的な仕掛けも、ホラーやオカルトのような奇々怪々な出来事はいっさいおこりません
しかし、現実こそが、なんとも奇々怪々であると 僕は時々思うのです

「ひき蛙の目玉」「馬の蹄」「夜光苔」「コウモリの血」「栄光の手」「墓場の土」「処女の血」

悪魔を召還するには以上のアイテムをそろえればいいそうだ

たとえば偶然にそういったアイテムがそろったときに恐ろしいことが起きる

ボロアパートの前に不法投棄された冷蔵庫

近所で飼われていた老犬の姿が見えなくなり、不思議に思っていたある日、偶然浮浪者が冷蔵庫を開けるとそこから犬の死骸が見つかった。
気持ち悪くなってその冷蔵庫を処分したが、今度は一人の少年が行方不明になる。
どこをどう探しても見つからず、あきらめかけた頃、ゴミ捨て場の管理者から警察に電話がかかる
「大変だ、こ、子供が死んでいる」

ゴミ捨て場は子供たちの遊び場でもある

かくれんぼでもしていて、何かの偶然で冷蔵庫の扉が開かなくなってしまったのか

遺体の状況を詳しく調べてみたが、死因ははっきりと特定できなかったという

検証が終わり、いよいよ冷蔵庫をスクラップにするというとき、こんどはカラスやねずみの死体が中から出てきたという

悪魔の仕業であろうか?

「ひき蛙の目玉」「馬の蹄」「夜光苔」「コウモリの血」「栄光の手」「墓場の土」「処女の血」

これらが偶然にそろうことはまずないだろう

そう思う人が多いかもしれないが、これは必ずしも『名前が示すそのもの』である必要はないことが、最近わかったそうだ。

「ひき蛙の目玉」「馬の蹄」は、たとえばそれが描かれたロゴマークであってもかまわない
「夜光苔」は夜に光に照らされた苔でも問題ない

「墓場の土」と「処女の血」
これはずばりそのものが必要だろう

最後に「栄光の手」であるが・・・

とあるクリーニング店で事故があったそうだ
作業員が機械に巻き込まれ右手を失うという悲惨な事故だそうだが、その男というのは、かつて地元の高校で優勝したことがあるピッチャーだったそうだ

そしてそのクリーニング店はラブホテルと契約をしていたそうな

その男が事故にあった直後から、そのプレス機によって多くの犠牲者がでたという話がある。

信じるかどうかは皆さんの自由だが、僕はいま、悪魔召還プログラムなるものを完成させるべくこれから墓地に行くつもりです

墓地だけに・・・ぼちぼちね

2013年4月1日
神戸にて
左手の想ひ出 完結です



 言った者負け

「好きです。付き合ってください」
 簡単にはいかない。いえない。言い出せない。

 それは恋の駆け引きというにはあまりにも不器用で、不恰好であったし、若さが失敗を恐れない無謀さや、まっすぐさであるという話は、うそであるかのように思えた。

 しかし、後に僕は気づかされる。

 いつまでもこのままでいたい。そういう気持ちが僕の中に少なからずあったのだということ。そして、何かを得るためには、何かを失わなければならないということを、直感的に感じていたのだと思う。

 奥村恵子がバスケ部に入ってから、一緒に過ごす時間は確かに増えたのだが、それはあくまでも場所と空間の問題であって、常にお互いを意識していられるような状態ではなかった。その意味では席が近い柴崎千恵や栗山直子のほうが話をする時間は長かった。

 それでも以前に比べて、間違いなく親密な関係になっていたのは、共通の話題が増え、場所や時間を共有したことによって、相手が何を考え、どう感じているのかが、わかるようになっていたからである。

 だからきっかけさあれば……

 何かの勢いで、大はしゃぎをすることがあっても、次の日には何もなかったかのように一言も口を利かない二人。

 期待と不安が入り交る。ふわふわとした居心地の悪さと、ドキドキするような緊張感。片思いを愉しむような余裕はなかったが、好きだという気持ちを伝えて、次はどうすればいいのか。男女が付き合うということが。抱きしめたいという衝動の先にあるのは、性の快楽なのか。映画やドラマのようなロマンチックなものなのか。

 今のままでいい

 なんとも不器用である。若さというよりは未熟さ、初心(うぶ)というよりは無垢であったのかもしれない。

 いや、それ以上に臆病だったのかもしれない。


 しかし『きっかけ』は、思わぬ形で突然訪れた。


 夏休みが開け、体育祭の準備が始まった頃、僕があることをしたために、二人は付き合っているのではという噂が広まった。

 他愛もない遊び、ジャンケンだったか、競争だったか、ゲームだったかもしれない。あるいは何かを賭けたのか。ともかく僕は奥村に負けたのだった。そして、罰ゲームとして体育祭の練習で使った奥村の椅子(自分たちの教室、4階から運び出した椅子)を持って教室まで上がるというものだった。

「負けたんだからしかたないじゃないか」
 そう弁明したのだが、悪いことにそのことを言いふらし始めたのが、少々たちの悪い連中だったのだ。この『たちの悪い』とは、退屈をもてあまし、何か面白いことはないかと授業をサボり、大人の目の届かないところで、大人が顔をしかめるようなことをする連中のことだ。

「お前ら、つきあっているんじゃねーの」
 僕は、どこかそういった『たちの悪い連中』を軽蔑しているところがあった。彼らに一生懸命に弁明するのがいやだった。だから、無視をしたと思われないようなレベルで受け答えし、有耶無耶にしてしまったのである。

「シカトこいていんじゃ、ねーぞ」
 そうなったら売り言葉に買い言葉である。僕は、今だけやり過ごせば、すぐに治まるだろうと思っていた。が、それがそうならなかったのは、彼らがほとほと退屈していたからに違いない。その日のうちに、クラスでそのことを知らないものはいないレベルに話は広がった。それ以上に広がっていた可能性もあったが、『しばらく、奥村とは目も合わせられないだろう』と覚悟をした。

 その日の放課後、なぜそういうシチュエーションになったのか、未だに思い出せない。おそらく教室にはほとんど誰もいなかった。帰り支度をして、教室を出ると、廊下の窓は真っ赤な夕日でまぶしかった。そのオレンジ色の光の中に寂しげに外を眺めている千恵を見かけたとき、一瞬声をかけるかどうか迷った。

「なにしているの?」
 考えるよりも先にその言葉が出たのは、おそらくそれが千恵だったから。もしも他の誰かだったら、僕はもう少し注意深く、思慮深く対応したに違いない。僕は千恵に遠慮が無かったのである。

「何しているように見える?」
 それは『寂しげ』とか『元気がない』とか、まして『思いにふけている』などではなかった。そういう声でもなければ、表情でもなかった。僕はうろたえるしかなかった。

「何を見ているんだ? 誰かいるの?」
 僕は千恵の視線の先に何があるのか、覗き込んでみた。僕はうかつにも、千恵のすぐ手の届くところに立ってしまった。

「ねぇ、あの話、本当? 本当はどうなの?」
「あの話って……」
「奥村さんの椅子を持ってあげたって話」
「あっ、ああ。だって、そういう約束だったから」
「へぇ、そうなんだ」
「罰ゲームだから、しかたないじゃん」

 もう何度目になるのか。僕は少しだけ不機嫌になった。理由はわからない。ただそれは、千恵に対するものでもなければ、たちの悪い連中に対するものでもなかった。

「どうして……」
 そう、聞こえた。そう千恵が言ったように聞こえたけど、それが何を意味するのかわからなかった。『どうして?』と質問をされたのか、そのあとの言葉がまだあるのか。そもそも聞き違えではないのか。僕にはわからなかった。

「えっ?」
「そっか。それじゃあ、しょうがないよね」
「うっ、うん」
「そっか……」

 千恵は笑った。僕には笑ったように見えた。夕日に焼かれた千恵の顔は、確かに微笑んでいた。そう見えた。そしてなぜだか僕は、ここにいてはいけないような気がした。
「あっ、じゃぁ、俺、行くわ。じゃーね」

 逃げるようにその場から立ち去ろうとする僕の左手を……

 ああ、そうか

 そうだったのか

 千恵は何も言わず、僕の左手は千恵の手が触れたあのときの感触を思い出していた。

 手を握られたあのときよりも、感覚だけがよみがえった今のほうが、僕には強く心に残った。あの時もしも、千恵が僕の手を握っていたら、僕はその手を振りほどけただろうか?

 それから数日後、僕と奥村は付き合うようになった。中学を卒業し、別々の高校に進学すると、急にギクシャクした関係になり、すぐに別れた。

 その後彼女と再会したことはない。

 千恵とは一度だけ会ったことがある。比較的仲がよかった共通の友人を介して合コンのようなことをしたのは高校を卒業するころだったか。いろんな思い出話をしたが、二人の間でその話題がでることはなかった。

 僕がこの話を思い出したのは、思いがけない娘からの一言がきっかけだった。小学校5年生になった娘が食事中に不意に僕にこう尋ねたのである。
「パパは中学のときに何人の人を好きになったの?」

 妻は噴出し、僕はおそらく、鳩が豆鉄砲を食らった顔を、人生で始めてしたのではないだろうかと思うくらいに動揺し、そしてこう答えた。
「いっぱいだよ」
「ふーん。そうなんだ」

 冷静に心の中で指折り数える。1年のときに同じクラスで最初に気に入った子、バスケ部の先輩に憧れたこともあったし、でも実際に付き合ったのは奥村一人。

「いや、そういえば……」
 考え込む僕の顔を、妻はいたずらっぽく覗き込み、娘はすでに関心がないようだった。
「今日あれよ、学校で例の授業があったのよ」
「あぁ、あの女子だけ集められるイベントか」

 受け答えはするものの、僕の心はあのときに見た、夕日の中で窓の外を眺めている千恵の姿。そして左手に残った暖かく、やわらかく、そして切ない感触を思い出し、一瞬だけ時空を越えていた。




おわり
恋愛小説・・・思わず長くなってしまったw
あと1話で完結させたい



 女子にしても、男子にしても、いくつかのグループに分かれている。真面目、子供っぽい、ませている、ツッパっている、無関心。そしてニュートラル――つまり普通だ。

 真面目も二つに分かれる。真面目で勉強ができるやつとできないやつ。真面目で勉強ができないやつをバカ呼ばわりするような風潮はなかった。真面目というだけで内申書にはプラスになる。真面目で勉強ができないやつは子供っぽいグループを形成する。彼らの遊びは小学生の延長であり、誰の迷惑にもならないが、誰の関心も引かない。

 ませて勉強ができるやつは無関心グループになる。自分のことはきっちりとやるが他人には干渉しない。スポーツもできるが、クラブ活動はやらない。人と必要以上に関係を持つことを良しとしない傾向がある。しかし、じっくり話してみると、いろいろと面白い。しかし、一緒にバカができないのは面白みにかける。

 ツッパリは突っ張ることでしか存在感を出せないやつと、存在そのものがとんがっているやつに分かれる。前者は虚勢であり、後者はカリスマだ。クラスに一人はカリスマがいる。そして、その太鼓もちが何人かつく。仲間というよりは主従の関係に近く、カリスマ、太鼓もち、使い走り=使いっぱの集団はどのクラスにもあった。

 僕はニュートラルを気取り、どのグループにも属さない中立を保つことに勤めた。そのポジションが心地よかった。だからというわけではないが、必然学級委員的な役割を引き受けることが多かった。職員室に入り浸り、気の合う先生と当時聞き始めた洋楽の話――ビートルズやローリング・ストーンズのこと、ヒッピーのこと、学生運動の話に夢中になった。職員室といえばタバコとインクの臭い。そしてわら半紙の香り。

 しかし、何よりも僕の関心ごとは勉強でもバスケでもクラスの友達でも他校との喧嘩の話でもなかった。僕は、自分は『誰が一番好き』なのか、すっかり迷ってしまっていた。

 いや、一番好きなのは奥村恵子で間違いはない。僕は日に日に彼女との距離が近づいているのを実感していたし、奥村自信も少なからず、自分のことを意識してくれているという手ごたえも感じていた。

 彼女は誰にでもあの笑顔を見せるわけではない。

 好き嫌いがはっきりしている。嫌いなやつに対する態度は、誰が見てもわかるほどに遠慮がない。そして関心がないやつに対してはある一定以上の距離を保つ。無視とまではいかないまでも、積極的に話をしようとはしない。というより、怖がっているといったほうが正しいかもしれない。

「ふざけんなよぉー」
 言葉は汚いが、そういってい笑っているときの彼女の眼尻は、極端に垂れ下がり「ムカツくー」と言った時には力いっぱい目を閉じる。漫画で描くとめのあたりが罰点になったような印象をうける。歩く姿は元気のいい小学生のようで、かわいらしい小動物のようだった。給食に嫌いなものが出る日は朝から機嫌が悪い。

「なんでだよー、なんでこの世の中にニンジンなんてあるのさー」
 運動部に所属しているわけでもないのに髪の毛は短めだが、美容院は嫌いだと言っていた。
「美容院行った後、くしゃみがでるんだもん」
 美容院の臭いが苦手だと彼女は言う。フェイスタオルを小さくたたんで口元に当てていると落ち着くらしい。

 彼女との会話は、何もかもが新鮮で、「なんだよそれ」とか「へんなのー」とか言いながら、僕は彼女のことをいろいろと聞いた。いずれそういう行為の積み重ねは、僕が奥村に興味がある「あいつ奥村のことが好きなんじゃない?」という噂がボチボチ出始めていた。

 だからなのだ。

 僕は彼女に夢中なのに、どうして千恵のことが気になるのか、気になるようになったのか、僕にはわからなかった。その当時、背徳と言う言葉を僕は知らなかったが、おそらく、そういう気分になっていた。

 俺は、二股をかけようとしているのだろうか? そういう男なのだろうか?

 それまで奥村に向けられていた僕の視線は、時々知恵に向けられるようになっていた。が、あまりにも距離が近すぎて、僕は目のやり場に困った。千恵も週に何度か軟式テニスの朝練がある。そのあと体育の授業が午前中にあるときは、Tシャツにスカートという恰好をしているときがある。セーラー服の夏服よりも下着のラインがくっきり見えるときがある。

 気にするなと言うのが無理な話である。

「わぁー、やらしー。千恵のことじろじろ見ているよー
「う、うるせーな。そんなんじゃねーよ」
「やらしい。男子」
「ち、ちがうって!」

 金山は時々そうやって僕と千恵のことをからかう。
「千恵もちょっとセクシー過ぎない?」
「だ、だって、この後体育なんだもん」
「雄介なんか、鼻血でちゃうわよ」
「うるせー、俺はピーナツ一袋食ったって鼻血なんかだすもんか」
「ピーナツ一袋って、アホかお前!」

 僕らの席の周りはいつも賑やかだった。いつまでもそうしていたいと思う気持ちは日増しに強くなっていった。でもそれは、奥村との距離をもっともっと近づけたいという思いが募るのと同じだった。そして変化は急に訪れた。

「えっ、奥村、バスケ部に入るの?」
「加奈子に誘われちゃって……断れなくって」
「高橋加奈子? 確か4組だっけ?」
「女子の部員、やめちゃう人多いみたいで……男子もいっぱいやめたんでしょう?」
「あぁ、1年の時はあんなに人気あったのになぁ。練習めちゃくちゃきついし、なかなか試合もやらせてもらえないしで、一時100人近くいた部員が、今ではまともに練習に出てくるのは10人くらいだからなぁ」
「君も、途中から入ったんでしょう?」
「あっ、ああ。1年の時の体育祭の1500メートル。部活に入ってないで入賞したの俺だけだったから、あのあと誘われたんだ。部員も少なくなっていたし、今ならすぐに試合に出られるなんて、言われてさぁ。まぁ、レギュラーの連中にはかなわないよ」

 決して運動が得意な方ではない奥村がバスケ部に入ることになったのにはいくつか理由があるが、それは主に彼女自身のことではなく、友人関係の問題で、それもどちらかと言うと不純な理由であることを、奥村は内緒で教えてくれた。
「誰にも言わないでよ。加奈子、好きな子がいるのよ。バスケ部に」
「ふーん。それで?」
「えっ、だ、だから、ほら、同じ部だったら、長い時間一緒にいられるじゃない」
「うーん。と言っても練習は基本別々だしなぁ」
「と、ともかく、内緒だからね」
「あっ、ああ」

 秘密を共有するというのは、ぐっと相手との距離が縮まった感じがして、僕はうれしかった。もちろん奥村がバスケ部に入ったことも、うれしかった。こうして僕と彼女の仲は急に親密な関係へと進展していった。そしていつしか千恵のことは、気にならなくなっていた。


あと1話までは つづく