映画の宣伝文句は「衝撃のラスト15分」で、まぁありがちなキャッチコピーだが、近年、ここまで圧倒的な衝撃を与えるラストシーン――それも悪い意味で――というのはないだろう。
予告編
この映画、仲間内ではひどく評判がよく、『ラスト そうくるか!』『後味の悪さがたまらん』との意見が多く、いかに僕の仲間内がポンコツかがよくわかる。
賛否両論はあっていい。特にこの映画はラストは原作から大幅に?書き換えてあるのでなおさらだ。
で、原作が救われるラストかといえば、「生き残る可能性」は残しているものの、およそ絶望的な状況である。
さて、状況が絶望的なのとラストが絶望的なのと どちらがお好き?
その程度の軽いのりでいいとは思うのだが、そこに計るにはあまりに重たい内容であることもたしか。
映画はあくまで娯楽である
で、あればあの映画版のラストは酷いものだ。決して人に薦めていいものではない。
しかし僕は、やはり、物語としてのより完成度の高いほうを評価したい
その意味では、フランク・ダラボンに一票
あ、別に勝敗とかじゃなくてね・・・だってすでにキングには数万の単位で投票してるからw
これみるとネタばれ
衝撃のラスト
所見
さて、このミストね
原作はこの「骸骨乗組員」という短編集に入っている。
スケルトン・クルー〈1〉骸骨乗組員 (扶桑社ミステリー)/スティーヴン キング

¥651
Amazon.co.jp
この物語――というかキングが描く世界には、まともな善人はでてこない
一癖も二癖もあるような イカれた人々が繰り広げるサバイバルストーリー。
大まかな物語のプロットは
突然不気味な霧に町が包まれる
主人公とその息子をはじめ町の人々がスーパーに閉じこもる
不気味な怪物が次々とスーパーを襲う
パニックからスーパーの中で異常な宗教めいたことがはじまる
主人公と数名が意を決して車で脱出
霧の中をひたすら逃げる
ここから先が映画と原作では分岐する
あまりにも凄惨で救いのない映画のラストは、本当にいやなものが心に刺さる
原作は最後をぼかしている・・・読み物としてはそれでいい。余韻が残るほうが読み心地がいい
しかし、これを映像にしてしまうと・・・ちょっと物足りなさがあり、やはり後味が悪い気がする
で、この物語の訴えていことを よーく考えてみると こういうショッキングなラストはぜんぜんありだと思う――なぜか
それはこの物語のタイトル『霧』である
五里霧中とはよく言ったものです
閉鎖された世界で起こす人のパニックは、想像を超えた狂気を生み出す
原作は田舎町という閉鎖された地域
よく知り、或いは知った風な知り合い同士が、非日常の中に閉じ込められ、当たり前のようにいがみ合い、疑心暗鬼になり、次から次へとおこる異常な事態に冷静な判断力をまるでかんなで削るように、或いは砂で固められた城に波が押し寄せるように崩していく
どうにか正気を保とうとする主人公
それは息子に対する絶対的な愛
愛する息子をなんとしても守らなければならない
そのためなら、それを邪魔するものにはたとえ、得体の知れない怪物でも、えせ宗教を先導する女教祖でも、それを命を張って排除する
一見、異常な状況でそこに立ち向かう父親の物語に見えなくもないが、それはキングが描いたことではあっても描きたかったことではないのだと思う。
彼が描きたかったのは、あくまでも非日常のなかで、いったい人はまともでいられるのか? という強烈な問いだと思う
で、あればこそ、監督でもあり脚本を手がけたフランク・ダラボンの作った映画のラストシーンに対して評価をしているのだと思う。
つまり、閉鎖されて状況で、論理的に生き残るすべを失った場合――つまり、希望をつなぐ情報や可能性が見えない霧のなかでの「生きるための判断」は、容易に狂気を生み出す可能性を秘めているということ
もし、あなたが 子供に あの怪物たちに僕を殺させないで・・・と願われたとき、そしてそれをかなえる手立てが見つからないときに、あなたは、この選択肢を手に取らないと、言い切れますか?
残された弾丸は車の中にいる人数だけ・・・そう自分をのぞいて、人数分ある
ガソリンはない
車の中の安全は、ガラス一枚でしかない
外には車を踏み潰すほどの巨大な化け物が闊歩している
自分の目の前で、息子をあの怪物に食い殺される場面を想像してしまう
そして、息子は言う
パパ どうして約束を守ってくれなかったの?
痛いよ 痛いよ パパ
その妄想は、あなたを苦しめ続けるだろう
ほんの小さな物音にも
ほんの小さな影がうごめいても
あなたの妄想は、やがて、現実的な選択肢を迫る
さぁ、その銃を手にとり、引き金を引くのだ
そうすれば、息子は救われる
静かに眠るうちに
一瞬の閃光と乾いた音が、すべてをかなえてくれる・・・
そうならないで、いられるかどうか?
それを知りたくければ、決して霧の中に入ってはいけない
なぜなら 霧の中に 救いはないのだから・・・
そういう、物語だと 僕は思います