ワタシが子供のころ、まぁ、今と比べれば物質的には恵まれてはいなかったかもしれないけど、それは社会に流通している商品の絶対数及び種類の違いでしかなく、テレビゲームがソフトビニール人形や面子やミニカーだっただけで、決して貧しくはなかった
貧しくはなかったが、おもちゃを頼りに遊んでいたわけではない
子供は遊びの天才なんていうけど、これ、本当にそう思う
ワタシも子供の頃は、おもちゃだけじゃなくて、いろんな遊びを作り出していた
中にはいまでは考えられないわるいいたずらもこれに含まれる
ワタシはやったことがないがカエルのおしりにストローをつっこんで膨らませるなんていうのもそうかもしれないし、昆虫を捕まえてばらばらにしてみたり、アリの巣を見つけては爆竹で吹っ飛ばしてみたり
子供はそもそも残虐な生き物なのかもしれない
純粋なまでの残虐さは、今となっては思い出すだけでも怖気がする
みなさんもそんな遊びしたことないですかね?
ワタシが一番驚いたのは近所の神社にアリが大量に更新しているのをみつけて、友達を集めて爆竹でふっ飛ばしていたら、わりと大きめな地震がきましてね。。。たたりじゃぁぁぁ、OO神社のたたりじゃぁぁぁあ。。。なんて言って逃げたことがあります
ボクもあのときは純粋なまでに残虐で、しかもいいことをしていると思ってたんですよ
最初のうちはね。。。
題:蟲 作:めけめけ
第3章 扉の向こう側の世界
盗み出したガムテープをなにに使うか?
そもそもガムテープが必要な小学生はいない
セロテープならいろいろと使い勝手はあるし、当時発売されて話題になった貼ると透明なセロテープであれば尚のことだ。。。この商品は表面につや消しの加工がなされており、紙に貼るとテカテカですぐに見分けられるセロハン製のテープとちがい、張ったときに見えにくい
しかも盗んだガムテープであればなおさらである。。。持って帰って親に見つかれば、悪事の全てがばれてしまう。。。下手をすれば学校を挙げた問題にもなりかねないし、あの老夫婦にもわかってしまう。。。あの店で買い物ができなくなる
みんなから忌み嫌われている毛虫を退治するのにガムテープは実に有効的な手段に思えた
毛はテープに張り付いて飛ばないし、小枝に引っ掛けて使えば、距離を置いての「攻撃」が可能である
しかもつぶしてしまったときのあの体液。。。おぞましい液体を見ないですむ
ボクらはやっきになって毛虫を探し出し、次々に攻撃をした
やつら、植物の葉っぱを食べる悪いやつらだ、みんなから忌み嫌われてる。。。ボクらはいいことをしているんだ、そう、学校のみんなのために。。。だから、このガムテープはすごく、みんなの役に立つんだ。。。きっとあの老夫婦も毛虫を退治するために「持ち出した」というなら、許してはくれないまでも、少しはわかってくれる。。。そう、きっとわかってくれる
ゲームは始まった
やつらはのろまで間抜けだ。。。用は触らなければいいのだ。。。弾薬はたっぷりある
ボクら3人力をあわせれば、こんなヤツらいちころだ
もし、毛虫がつぶれて屍骸になる様をみていたら、ここまでのことはできなかたに違いない
ガムテープに貼り付けて毛虫を見えないようにして、落ち葉の中に埋めて捨てる。。。毛虫の死の瞬間はみないですむ。。。そのことが、ボクらが大量殺戮をしているという事実から目を背けさせることになり、1時間もしないうちに30匹以上の毛虫を退治した
毛虫は黒いもさもさの大きなヤツと長さ2センチから3センチくらいの毛が少ないが地肌がグロテスクな模様をしているもの。。。あまり毛虫に詳しくはないが、これがチャドクガという種類で、この毛虫の毒がかなりやっかいなものだと、大人になってから知ることになる
大きいヤツはだいたい単独で行動しているようで、それほど数は見つからなかったが、チャドクガは一つの樹木に大量に発生していることがある。。。大量の毛虫の群がる姿はなんとおぞましく、まがまがしいことか。。。ボクらは自分たちの正義を疑う余地はまったくなかった
これだけやれば、もういいだろう
Sはすっかり英雄気取り。。。Uはこのゲームに飽きたらしく、いつもの公園に行こうと言い出した
かくして毛虫狩りは終わった
ボクらは入念に犯行現場をかくし、いらなくなったテープを焼却炉に放り込んだ。。。これですべて終わり。。。なにもなかった。。。これはプラスマイナスゼロになる行為だ
まだ、家路につくには早い時間、いつもの公園に行こう
ボクも含めて他の3人も後ろめたい気持ちは微塵もなかった。。。校門を出るまでは
公園に行くには、校門を出て左に曲がり学校の敷地をぐるっと外回りして高台に上らなければならない。。。当然に桜堂の前を通らないとならない。。。誰も口には出さなかったけど、心のどこかで、後悔のようなものが、ざわざわとこみ上げてくる
そんなはずはないのだ、そんなはずは。。。だってボクらは「悪いことをしたわけじゃない」いや、すごい悪いことを、こんなに後ろめたい思いをするような、そんなことはしていない、そう思っていたのに。
きっと、これから学校に通うたびに、こんなにこころの奥で何がが騒ぐようになるのか
そのざわざわとするものに耳をかたむければ、ボクは聴きたくない声を聴くような気がして、だから、ボクは、そしてきっとボクらは、その声を無視するしかなかった
桜堂の前を頭を下げてボクらは小走りで公園へと急いだ。。。横目で店内を覗くと、そこにはいつもと変わらない店のたたずまいの中に、なにか文房具を買っている女子が、ちょうど店の人におつりをもらうところのようだった。髪の毛はほとんど真っ白で、黒目や白目がほとんどわからないような細く垂れ下がった目は、いつもニコニコと笑っているように見える。。。ここの店主はいったい、何人の生徒を知っているんだろうか?100年を越す、歴史を持った小学校の横で、どれだけの生徒とこのようなやり取りをしてきたのか。。。そのシワシワの顔はすべて笑顔によってできたシワであることは、小学生にも用意に想像ができた。。。でも、ボクにはその細い目が、ボクらいは違う表情に。。。どこか疲れて、物悲しい表情に見えていた
ボクはボクの世界が変わってしまたことに気づいてしまった
ボクは、ボクらは扉の向こう側の世界に足を踏み入れてしまったのだった
つづく
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第4章