「ノーヴィス」

大学の女子ボート部が舞台なのだが、並のスポ根ものとはまったくテイストが異なる。とにかくダークで重い。
「ブラック・スワン」がよく引き合いに出されるが、わからないことはないけれど、こちらののヒロイン、アレックスの方が本質的にずっとヤバい。
大学の専攻を、わざわざ苦手な科目の学部を選んだり、数学のテストの時にもう解けているのに時間いっぱいまで3回もやり直すとか、とにかく病的な完璧主義というか、自分を追い込むのが好きなのだ。
ボート部の練習はハードだし、メンバーに選ばれるのも戦いだ。ライバルの中には、奨学金がもらえるかどうかがかかっている必死な学生もいる。
キャンパス・ライフを楽しむなんて関心ないし、楽なことには興味がないアレックス。
スポーツ物にありがちなコーチのしごきやパワハラとかはあまり出てこないし、部員間のしのぎ合いやいざこざも、それほど極端ではない。
確かに練習はハードなことこの上ないが、何が普通でないかといえば、アレックスが自分自身に負担をかけ陶酔していく様だ。ほとんど自傷行為ともいえるような追い込み方だ。もう勝利へのこだわりとか、どうでもよくなっているのではないか。
一体何のためにボートに乗っているの?という問いに、彼女は自分に勝つため、とか言いそうだ。
「闘志と狂気のスパイラル」という監督の言葉も納得できる。
それにしてもアレックス役のイザベル・ファーマンが、すさまじい演技を見せてくれた。
子役で演じた「エスター」の時からただ者ではないと感じていたが、10年以上経過しすっかり大人になってから、「エスター ファースト・キル」で子役時と同じ10歳のエスターを(ごく自然に)演じた時も驚かされた。
時おり見せるアレックスの無表情な顔が、決して心の内を見せないエスターを思わせた。微妙な感情表現がうまい。
また、まだ薄暗い明け方の雨や霧がたちこめる水面を、ボートが滑るように移動していく俯瞰の撮影も見事だった。