「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」

全寮制の学校で、クリスマス休暇に家に帰れず居残り組の生徒と、監督の教師、食堂の料理人が繰り広げるドラマ。
1970年という時代設定なのに、まったく古さを感じさせない。スクールカーストでいじめられがちなアンガスは、一見ひょうひょうとしているが実は傷つきやすい。複雑な家庭環境のため、クリスマスも居残りだ。他の居残り組がスキーに出かけた時も、ひとりだけ両親と連絡が取れず寮に置いてけぼり、という運の悪さ。
監督として居残った教師のポールは、生徒から嫌われている変わり者で独身の中年。
料理人のメアリーはベトナム戦争で息子を亡くしている。
そんな孤独な3人がたまたまいっしょにクリスマスを過ごすことに。2週間の休暇の間に反発しながらも、次第に心を通わせるようになっていく…
人物描写がとても丁寧で細かい。アンガスは悪い子ではないのに友だちが少ない。複雑な性格だから他人、特に同世代からは理解されにくいのだ。こういう子は苦労するな、と彼と似たような気質を持つ人間にはよくわかるのだが。
偏屈な教師も、ポール・ジアマッティの渋い演技が炸裂し味わいを見せる。ただの頑固おやじではなくちゃんと解っている人なのだ。特にアンガスの実の父親とのエピソードでは泣かせる。
そして何といっても今回デビューのアンガス役、ドミニク・セッサ(オーディション時には高校生だったそうだ)が将来楽しみな存在感を見せた。クセの強い難しい役どころにもかかわらず、どこか放っておけない繊細なキャラを見事に演じた。
全体に重くなりがちなテーマに軽みを持たせ、ユーモアのセンスも盛り込んで、いい意味での70年代テイストが彩りを与えていた。ほっこりするけど、ちょっとほろ苦い、個人的にはとても好きな作品だ。