音楽映画を2本まとめて。

 

「ボブ・マーリー one love」

ボブ・マーリーの伝記映画。遺族公認の作品とあって、とても見やすい作りになっている。
中心になって描かれるのは最後の3年間だが、途中途中で過去のシーンが挟みこまれているので、彼の生涯は一通り理解できる。ボブ・マーリーのことを、あまり詳しく知らないという人にもわかりやすく楽しめるだろう。
曲が出来る瞬間を描くなど、興味深いシーンもありなかなか興味深かった。
しかし何か、するするっと見られすぎて、稀代のアーティストの魂に深く切り込むというには、物足りない気がしたのも確か。
信仰するラスタファリのこともだが、祖国の政情に対しての思いや、曲作りの苦悩など、あまり深くは追及されていなかったような。エンタメ映画としては楽しめるかもしれないが。
マーリーを演じたキングスリー・ベン=アディルは、現代風のあかぬけた容貌でいささか格好よすぎるのだが、なりきり度としてはかなり高いだろう。
それにしても、36年の短い生涯で子ども10人(妻との間の子は4人)とは、驚いた。孫は何十人もいるそうだ。まあ、彼の奥さんのリタもなかなかすごい人だったようだが。

 

 

 

 

「シド・バレット 独りぼっちの狂気」

こちらはドキュメンタリーでエンタメ作品ではないので、ピンク・フロイドやシド・バレット好きのための映画。
ピンク・フロイドのデビュー当時、リーダー的な存在だったシド。売れ始めてやっと軌道にのってきた頃、薬物中毒と精神疾患のためバンドを去る。ソロアルバムも出したが、病は重くなりわずか数年で表舞台から消えてしまう。活動していたのは67年〜72年ごろまでと短い。
時代的なこともあり、ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズと重なるイメージがあるが、シドは病を抱えながらも60歳まで生きた。田舎の実家で完全に隠遁生活だったようだが。
映画は彼の周辺にいた人たちから(もちろんピンク・フロイドのメンバーも)のインタビューが中心。興味深い内容もあったが、これでシドが考えていたことがわかったか、と言われるとまだよくわからない部分も多い。
ピンク・フロイドのアルバム「炎」のレコーディング時に、突如としてスタジオに現れたというシド。これは割と有名なエピソードだが、個人的にその時のことはもっと詳しく知りたかったのだが、特に言及されなくて残念。シドの風貌が変わりすぎていて誰だかわからなかった、という以外に語ることはなかったのかもしれないけど。
映画に登場し証言した人の中で、もう何人もが亡くなっていた。時代の流れを感じさせる。シド・バレットも生きていれば78歳…