「ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ」

だれでも一度は見たことがある猫のイラスト。ただ可愛いだけでなく、擬人化して皮肉っぽかったり風刺がきいていたり、と。その猫を描いたのがルイス・ウェイン。
当時は(19世紀末)ペットとしては犬を飼うのが一般的だったが、彼のイラストは猫の地位向上に役だった、かも…
ルイス・ウェインの半生を描いた本作は、可愛い猫たちと妻との愛情物語と思いきや、意外にもダークだった。
良家に生まれながら若くして父親を亡くし、5人の妹と母親の生活を支えるためイラストレーターになったルイス。

妹の家庭教師との恋愛結婚は身分違いということで(その上妻の方がかなり年上)反対されるも、愛にあふれていた。
しかし愛する妻との穏やかな生活は、妻が病に倒れたことで長く続かなかった。少しでも妻の慰めになればと、飼い始めたのが猫。
妻を失ってからも描き続けた猫の絵が評判をよび、たちまち売れっ子のイラストレーターに。
もともと「変わり者」だったルイスだが、次第に統合失調症の症状が出始める。妹のひとりはかなり若い時期に、家庭では手に追えなくなり入院させたほど。
彼にも自覚はあったかもしれないが、とにかく絵を描くことがすべて。さまざまな苦難に直面するものの、生涯描くことをやめなかった。
これはもう、ベネディクト・カンバーバッチのひとり舞台といってもいい。エキセントリックだがピュアなルイスの、20代から80代までを演じきった。さすがです。
本物の猫の出番は意外に少なくて、その点、猫好きとしてはちょっと物足りなかったかな…