十五夜、月見の晩。
子供の頃、晩ごはんは毎年ぼた餅だった。
本来は秋のお彼岸の頃のそれは、
おはぎと呼ぶのが正しい。
だが、甘党の母は普段からしょっちゅう作っては
食べていた。
なので、我が家では季節感のある食べ物ではなく
年中、ぼた餅呼ばわりしていたのだ。
なので今日も懐かしい思い出に倣って、
そう呼びたいと思う。
我が家のぼた餅は、つぶあんときなこ。
もち米は半分潰して少し原型を保つ程度に
蒸し上げる。
それを、あんもしくはきなこで覆い尽くす。
中には何も入れない。
ぼた餅を作るのが一段落する夕暮れ、
堤防に行ってススキを取りにいく。
秋風にそよぐ銀色の穂の、十分に長く伸び
しかしまだ閉じているものがよいのだが、
子供の私はついふわふわと開いたものを選んで
しまう。
母や、休みの日なら一緒の父にもたしなめられ、
厳選した数本を折らないように持ち帰る。
夜、月が出る。
花瓶に生けたススキと、大皿に盛り付けられたぼた餅を、月と一緒に家族みんなでいただく。
父は甘い物がとても苦手だったけれど、
文句を言ったりしていた記憶はない。
いつも一緒だった。
大人になり、有名なお店のおはぎを色々たくさん
食べてきた。
それはどれももちろん美味しかったけれど、
やはり私は十五夜にはぼた餅を食べたい。