オシリス、イシス、ホルスの物語
エジプトでは神話上の過去を起点とする最も重要なエピソードの中に創造神話があります。
その中で神々は原始の混沌から宇宙を造形していきました。
地上における太陽神ラーの統治の物語や、破壊の神セトに対抗すオシリス、イシス、ホルスといった神々の闘争を中心に
オシリスとイシスの伝説が描かれています。
神話と見なされるかもしれない現在時間からの出来事としては、神が統治した地上の世界とそれに対応する
異世界ドゥアトを通るラーの日々の旅が含まれています。
古代エジプト神話のエピソードで繰り返し出てくるテーマには、
秩序の女神マアトを受け入れる精神と、秩序を嫌い無秩序を求める精神との対立です。
こころの秩序＝マアトを維持する象徴としてファラオは重要な存在でした。
エジプトでは絶えることなく続く死と再生の摂理を神話の中に織り込んでいます。
エジプト神話は主に隠喩的なもので、神々の本質や行動を人間が理解できる言葉に変えて伝えています。
神話のそれぞれの異形は、神々や世界について人々の理解を豊かにしてくれる象徴的な見解の相違を表すものです。
原初の水の具現体であるヌンが、創造の瞬間に太陽神ラーの船を空に持ち上げる
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=17699180による
＜オシリスとイシスの神話＞
エジプトの創造神話天空神ゲブとヌトから、地球の女神オシリス、イシス、セット、ネフティスの4人の子供が生まれました。
オシリスは最年長でエジプトの王となり、妹のイシスと結婚しました。オシリスは良い王であり、地球に住むすべての人とそこに住む神々の尊敬を集めていました。
・オシリスの死
しかし、オシリスの弟セトは常にオシリスに嫉妬していました。
ある日、セトは自分を凶悪なモンスターに変身させ、オシリスを襲います。
モンスターから逃げようとしてホルスは棺桶の中に身を隠します。
セトとその仲間はオシリスを棺桶に閉じ込め鉛で封鎖し、彼を亡き者としました。
セトはオシリスの体をバラバラに刻み、エジプト全土にばらまきました。
彼の妻イシスはセトの目を盗みながら、亡き夫オシリスの遺体を収集します。
セトはイシスの行動に目を光らせていたので、彼女が集めたオシリスの亡骸をさらに細かく切り刻んでしまいます。
デンデラの寺院の装飾。兄弟のオシリスの死体を見守る女神イシスとネフティス
By Francesco Gasparetti
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=10473542
・オシリスの再生と冥界下り
オシリスを亡き者にしたのち、セトは妹のネフティスを妻としてエジプトの王となります。
しかし、ネフティスは亡くなった夫オシリスを失い、失意のどん底にある姉イシスを気の毒に思いました。
イシスは彼女の魔力と他の神々の助けをもとに、再び夫オシリスの亡骸をを見つけて、オシリスを再生させようと立ち上がります。
妹ネフティスと一緒に、イシスは彼女の夫の体の断片を集め、国を歩き回りましたそしてそれらを再組み立てします。
イシスがこの仕事を完了すると、彼女はオシリスの体に命の息吹を吹き込みましたそして彼を復活させました。彼らは再び一緒になり、イシスはすぐに妊娠しましたが、オシリスは冥界領域の支配者になったため、地上には残るとこができず冥界へ帰っていきました。
オシリスとイシスが乳児ホルスを看護している彫像
By Andrew Bossi
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6213915
・ハヤブサの神ホルス
イシスとオシリスの間に生まれた子供は、ハヤブサの神ホルスと名付けられました。
ホルスが大人になったとき、エジプトの正当な王位継承者はセトではなく自分(ホルス）だと神の法廷で主張します。
ホルスとセトの王位継承者問題は長期間議論が続きます。
セトは自分こそエジプトの王であることをアピールするため、ホルスに様々な競技で挑戦しました。
セトとホルスの競合は勝者は全エジプトの支配者になる。というものでした。
ホルス、ルーブル、シェンリングが握りしめている
By Rama,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=80863600
・王位をめぐる争い
セトは公平に勝負をせずにホルスを騙したり、欺いたり、罠や裏工作や妨害工作を繰り広げました。
ホルスはセトに騙され負けてしまいます。
そのため、ホルス母のイシスは息彼を助け、セットの罠を仕掛けることにしました。
イシスは卑怯な手段を使うセトを罵倒しますが、兄であるセトが反省したそぶりを見せると（演技）すっかり騙されて許してしまいました。
母親のイシスが敵であるセトを許して逃がしたことを知ったとき、ホルスは腹を立てます。
ホルスは母親であるイシスに激怒して首をはねてしまいました、
この出来事には他の神々もホルスの行為に軽蔑の念を抱きました。
・セトとホルスの最終決戦
エジプトの神々は王位継承を決めるための最終競技を提案します。
セトは協議の内容を彼に優位な種目に選択できました。
セトは、協議の最終ラウンドはボートレースになることを決定しました。
セトは彼とホルスが石で作られたボートでレースすることに決定しました。
ホルスは石のように見える石灰岩の石膏で覆われた木製のボートを作りました。
神々がレースの審判のために集まりました。
セットは彼のボートとして山の頂上を切り取り、それを水上に浮かべます。
しかし、セト彼のボートはすぐに沈み、他のすべての神々は彼を笑いました。嘲笑されたセトは怒りをあらわにします。
彼は凶暴なカバに姿を変えると、ホルスのボートを攻撃します。
ホルスはカバに姿を変えたセットと戦いました。
神々はホルスがセトを殺す前にホルスを止めます。
神々は、試合は引き分けであると判断しました。
多くの神々はホルスに同情しましたが、彼の母親に対する怒りを覚えていました。
・オシリスが指名した後継者
セトとホルスの戦いは引き分けに終わりましたが。
しかし、セトがこのまま王権を所持し続けることを望まなかった神々は法廷を開きます。
神々は議論の末オシリスに手紙を書いて彼の助言を求めることに決めました。
神々の手紙に対するオシリスからの返答は
”息子ホルスはエジプトの正当な王であり、王位に就くべきである”
という明確な答えを返しました。
オシリスは、セトのように目的のために手段を選ばず、殺人行為を行う者がエジプトの王位に就くべきではないと述べました。
セトはオシリスを騙し殺しましたが、ホルスは誰も殺すことはありませんでした。
この事からホルスが王位継承者であると述べました。
それでも、セトをエジプトの王位につかせるのであれば、
オシリスの味方である太陽と星々が冥界に降り立ち、世界を暗闇にするとも継げていました。
神々はホルスこそがジプトの王としてふさわしいと言う意見でまとまりました。
その後、上エジプトをハルスが下エジプトをセトが分割統治することで
全エジプトはふたたびまとまりを取り戻し平和が訪れました。
ホルストセト、上下エジプトの統一のためのセマタウのシンボルでパピルスと葦の植物でエジプトを結ぶ
By Hedwig Storch
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5873007
別のバージョン
By Soutekh67
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=34992568